JTBグループのジェイアイ傷害火災保険(東京都中央区)は7月15日、2024年度(2024年4月~2025年3月)の海外旅行保険事故データを公表した。海外旅行中に何らかの事故で保険を利用した人の割合は「21人に1人」に相当する4.7%で、前年度の5.3%(19人に1人)から低下した。新型コロナウイルスに起因する保険金支払いが減少したことが主な要因とみられる。
保険金の支払件数を補償内容別に見ると、最も多かったのはケガや病気の治療費、医療搬送費などを補償する「治療・救援費用」で全体の約6割を占めた。次いで、手荷物の盗難や破損を補償する「携行品損害」、欠航など予期せぬ出費に対応する「旅行事故緊急費用」が続いた。
地域別では、北米・アジア・オセアニアで「治療・救援費用」の割合が高く、ヨーロッパやアフリカでは「携行品損害」、グアムやサイパンでは「旅行事故緊急費用」の割合が目立った。
治療・救援費用において300万円以上の高額な保険金支払いが発生した事例も世界各地で報告された。中でも北米では件数が多く、最高額はハワイで発生した6,415万円に上った。このケースでは、心筋梗塞による緊急手術と10日以上の集中治療室(ICU)入院で、日本への医療搬送費も含まれている。
このほかにも以下のような高額事例が明らかになっている。

アメリカ・ロサンゼルスで70代の男性が転倒し大腿骨を骨折。現地での緊急手術とリハビリ、日本語医療通訳の手配、帰国のためのビジネスクラス手配などを含め、約3,500万円の保険金が支払われた。
カナダ・バンクーバーで60代女性が脳出血を起こして緊急入院。約2週間の入院後、医師と看護師が同行する医療搬送で日本に帰国。費用総額は約4,100万円に達した。
フランス・パリで20代女性が交通事故で重傷を負い、現地の救急搬送、複数回の手術、医療通訳、日本への搬送により約3,000万円を支払い。
タイ・バンコクで中年男性が感染症による急性肺炎で集中治療を受け、人工呼吸器管理が必要となり、現地入院・帰国支援を含めて約3,200万円を補償。
同社は、クレジットカード付帯の保険や無保険で海外渡航する人が一定数いることに触れ、「海外では保険による支払い保証がなければ治療を受けられないケースもある」として、無制限補償など充実した内容の保険加入を勧めている。
この事故データは毎年公表されており、海外旅行保険への理解と備えの促進を目的としている。