旅行アプリ「NEWT」で海外パッケージツアーの販売を中心に展開する令和トラベルはこのほど、「U29の海外旅行に対する意向調査」を実施し、メディア向けの説明会を開催した。調査は全国の18歳から29歳の男女4127人を対象にインターネットで調査したもの。
海外旅行、4割弱が「行きたくない」
調査の結果によれば、海外旅行に「行きたいと思う」が29.9%、「どちらかというと行きたいと思う」が20.8%と回答。一方「行きたいとは思えない」が28.5%、「どちらかというと行きたいと思わない」が8.8%となった。
渡航状況については、5年以内に1回以上海外旅行をした人は22.3%、それ以前に行っていた人は10.2%、一度も行ったことがない人が67.5%となった。
この調査に基づき、令和トラベルでは「海外旅行に行きたい人」550名、「海外旅行に行きたくない人」550名を抽出し、計1100名に詳細な調査を実施。ヒアリングも行った。

可処分所得に大きな差、「行きたくない」は「1万円未満」が4割超に
調査によれば、海外旅行に「行きたい」層の毎月の可処分所得は「1万~2.5万円」が33.5%で最多となり、「2.5万~5万円」が30.4%、「1万円未満」は14.4%、「5万~7.5万円」は10.5%となった。
一方で「行きたくない」層は、「1万円未満」と回答した人が40.7%と最多に。次いで「1万〜2.5万円」が24.2%、「2.5万〜5万円」が19.5%で、「5万〜7.5万円」はわずか6.9%にとどまった。
「行きたくない」層の方が可処分所得が低い傾向にあることから、令和トラベルはU29の旅行離れの一因として、可処分所得の低さから海外旅行にかかる費用が大きなハードルになっていると指摘。一因として、勤続年数の増加に伴う給与の上昇率の低下などを挙げている。

金銭的余裕があっても7割は「海外に興味なし」、行かない理由は「特にない」が4割
「行きたくない層」に仮に金銭的余裕が十分あった場合、海外旅行に使いたいかをを聞いたところ、69.5%は「余裕があっても海外に興味がない」と回答。「海外に使いたい」と回答した人は7.1%にとどまった。

海外旅行に行かない理由を聞いた質問では「特に理由はないが、あまり興味がわかない」が40.0%を占めた。次いで「治安や病気、トラブルが心配」が34.0%、「海外旅行は高額で手が出ない」が28.2%となった。
令和トラベル執行役員の大木優紀氏は、「これが若者の特徴。娯楽が多いので海外旅行の優先順位が下がっているのでは」とコメント。さらに「インタビューからは海外旅行をいかない層は国内旅行も行かない」と語り、可処分所得も低いなか、「他者に対する無関心に加え、日常のなかでの閉塞感に対する『諦め』」のようなものもあるのではと指摘した。

一方で「行きたい」層に海外旅行でハードルと感じることを聞いた質問(※複数回答可)では、海外旅行経験者・未経験者で回答が分かれた。経験者の理由は「費用が高くて行けない」が30.7%、次いで「治安やトラブルが心配」(23.3%)、「言語が通じるか不安」(18.8%)となった。一方で未経験者は「為替(円安)や物価上昇が気になる」が98.3%、「治安やトラブルが心配」が90.1%、「費用が高くて行けない」が86.0%となり、全体的に%が高い結果となった。

「行きたい層」はSNSをフル活用、インフルエンサーの影響強く
SNSの利用状況でも「行きたい層」「行きたくない層」で顕著な変化があった。「行きたい」層は他者のSNSの投稿に対し「なんとなく羨ましい気持ちになる」が51.8%、「自分も行ってみたいと感じる」が42.9%となり、SNSから影響を受けている様子が分かる。海外旅行後のSNS投稿について投稿したいか聞いた質問でも「良い写真や動画が取れたら投稿したいと思う」が39.8%、「とてもそう思う(旅の楽しみの一部として、積極的に投稿したい)」が22.7%を占めた。

令和トラベルPR担当の鹿原美奈氏は「SNSが海外旅行に関するプロセスすべてに関与している」とコメント。旅マエにはインフルエンサーの投稿などから「ふわっとした受動的な内容で」行きたい気持ちが生まれ、能動的に旅行先の情報を収集し、旅ナカもSNSのリアルタイム検索などを利用してイベント情報などを収集。旅アトにSNSを通して情報を発信する傾向があるとした。
また、大木氏はSNSがガイドブック化していることも説明。「行きたいお店の投稿をInstagramで保存し、ガイドブックのように使う傾向がある」と話した。
一方で、「行きたくない」層にSNSを投稿の意欲を聞いたところ、「撮ることにも投稿にもあまり関心がない」との回答が20.2%、「SNSへの投稿自体に疲れてしまっている、面倒に感じている」と回答した人は10.9%だった。これを踏まえ、大木氏はSNS疲れの傾向があると説明。さらに「SNSがパーソナライズされているので、使っていても海外旅行関連の投稿が出てこないのでは」とも指摘した。

令和トラベルではこうした調査から「行きたい」「行きたくない」の2パターンのペルソナを設定。「行きたい」派については調査やインタビュー等も踏まえ「都会出身(実家暮らし)」「給与は自分に使える」、「行きたくない」派については「地方出身」「給与は生活費・奨学金へ回す」などの傾向があるという。

AI活用で安価なツアーを造成、デジタルネイティブに向けアプリ機能を充実
説明会では令和トラベルの各種サービスについても紹介された。予算不足で旅行を諦めている層に対しては、実店舗を置かずアプリ内で全て完結するサービスを提供することで、人的コストなどの間接費を削減。さらにツアーのタイトル付けやエアーとホテルの組み合わせなどにAIや自社で開発したシステムを活用して作業時間の短縮に努めており、現在のツアーの作成時間は1本3分程度まで短縮したという。
さらに若い世代はLCCに抵抗がないことを踏まえ、LCCの機内に宿泊するツアーも造成。利用者からは「ホテル代が浮く」などポジティブな意見が多いという。加えてインフルエンサーが旅した日程をパッケージツアーにして販売する、いわゆる「コピペ旅」のような共感型コンテンツも提供中だ。
令和トラベルの顧客の約半数はU29世代で、特に25~30歳の女性が多いほか、大学生の卒業旅行や、初めての海外旅行などにも活用されている。さらに40代以上の利用者も増え続けており、大木氏は「40代~50代に流行しているものが20代に広がることは少ないが、逆のベクトルはありうる」と期待を示した。
さらに大木氏は「スマホネイティブにターゲットを置き、アプリやSNSに注力している」と現状を説明。令和トラベルでは現在13アカウントのSNSを専用チームで展開している。アプリでもパスポートを簡単に読み取れる「パスポートスキャナー」、AIが旅行プランを自動生成する「トラベルプランナー」、予約時の姓名とパスポート姓名を比較する「ネームチェッカー」などの機能を充実させているという。
今後の展開については、航空券単体の取り扱いについても言及。さらにパッケージツアーの利用者が見込める韓国版も開発中だ。大木氏は「パッケージツアー文化の一般化を目指し、カルチャーの近い韓国や台湾、シンガポールなどを視野に入れて海外展開していきたい」と語った。
情報提供 トラベルビジョン(https://www.travelvision.jp/news/detail/news-117623?pg=3)