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主要ポイント
- 全国規模の研究の分析結果によると、補充栄養支援プログラム(Supplemental Nutrition Assistance Program、SNAP)への参加は、加齢に伴う認知機能の低下を防ぐ効果がある可能性が示唆されています。
- 非参加者と比較して、SNAP参加者は10年間の研究期間中、認知機能の低下速度が緩やかであり、平均で2~3年分の認知機能の健康を維持することができました。
- 食料不安は認知機能に悪影響を及ぼす可能性があり、SNAPへの参加は参加者の食事内容と栄養摂取を改善する可能性があります。
トロント、2025年7月31日 /PRNewswire/ -- 米国の補充栄養支援プログラム(Supplemental Nutrition Assistance Program、SNAP)に参加した人は、参加しなかった人よりも10年間で認知機能の低下速度が緩やかだったことが、本日トロントとオンラインで開催されている2025年アルツハイマー病協会国際会議®(Alzheimer's Association International Conference、AAIC®)で報告された新たな研究結果で示されました。
研究者らは、「この結果は食料支援プログラムが高齢者の認知機能の健康を支える可能性を示し、人種や民族グループ間で認知機能の老化における格差を縮小するためのさらなる取り組みが必要であることを示唆するものである」と指摘しています。また、低所得者やその家族が食料を購入するのを支援するSNAPのようなプログラムへの公平なアクセスを確保する公衆衛生政策の必要性についても強調しています。特に、参加に追加の障壁を抱える人口層に対しては、その重要性がさらに高まります。
全米を代表するHealth and Retirement Study(HRS)を用い、研究者はSNAP参加者と、同プログラムの資格がありながら参加しなかった人々を比較しました。研究者らは、SNAP参加者の認知機能の全体的な低下速度が0.10%遅く、10年間で2~3年分の認知機能の健康を維持できたことを明らかにしました。
「これまでの研究でも、食料不安は認知機能に悪影響を及ぼすことが示されてきましたが、今回の研究は、食料支援プログラムが認知機能にポジティブな影響を与える可能性を示した最初の長期研究の1つです」と、Alzheimer's Association首席科学責任者兼医療担当責任者のMaria C. Carrillo博士は述べています。「日常の簡単な行動が脳の健康に違いをもたらし、アルツハイマー病や認知症のリスクを低下させる可能性があるわけです。Alzheimer's Associationは、すべての人々がこの習慣を日常の生活に取り入れられるよう支援しています。これには、適切な食事(当協会の『脳のための10の健康習慣(10 Healthy Habits for Your Brain)』)も含まれます。」
研究者らは、人種的・民族的に代表的な50歳以上の対象者を分析し、2010年にSNAPに参加した1,131人(平均年齢約63歳)と、SNAPの資格がありながら参加しなかった1,216人(平均年齢約66歳)を比較しました。2010年から2020年の間に2年ごとに、電話またはウェブベースのインタビューを通じて、記憶力と実行機能(タスクを計画・遂行する能力)を評価しました。認知機能の初期評価スコアが27点中11点以下で、認知障害または認知症を示唆する対象者は今回の分析から除外しました。
年間認知機能の低下における0.10ポイントの差は一見わずかに思えるかもしれませんが、研究者らは、その長期的な影響は重大であると指摘しています。「認知機能のスコアが健康な状態から始まる人にとって、この緩やかな低下は、軽度認知障害の閾値に達するのをほぼ10年間遅らせる可能性があります」と、アセンズにあるUniversity of Georgiaの保健サービス研究の博士課程学生で、本研究の筆頭著者であるLinlin Da氏(MPH)は述べています。
「この結果は、SNAPまたは類似の栄養支援プログラムへの参加が、認知機能障害や認知症の発症を大幅に遅らせ、人々が薬の管理、財務管理、日常のタスクをこなす能力を長く維持できることを示唆しています」とDa氏。「これは最終的に、高齢期の自立性と生活の質向上を支えてくれるものです。」
「同時に、私たちはこの機能低下の抑制効果が全員に同じように現れるわけではないことを発見しました。非ヒスパニック系黒人およびヒスパニック系の高齢者の方の場合、非ヒスパニック系白人の参加者の方と比べて認知機能における恩恵は大きくありませんでした」とDa氏は付け加えました。
研究では、SNAPに参加した白人、黒人、ヒスパニックの参加者の認知機能の結果を、SNAPに参加しなかった同年代の参加者と比較した結果、3つのグループすべてが恩恵を受けたものの、白人のSNAP参加者はより強い恩恵を受け、認知機能の低下速度がより緩やかであることが観察されました。
「認知機能の低下を遅らせる可能性が、支援を必要とする患者に食料支援へのアクセスを確保するよう働きかける十分な理由となることを医療従事者が理解してくれることを私たちは願っています」と、当研究の責任著者であり、University of Georgia公衆衛生学部健康政策管理学科の助教であるSuhang Song博士は述べています。
アルツハイマー病協会国際会議®(Alzheimer's Association International Conference、AAIC®)について
アルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference、AAIC)は、アルツハイマー病やその他の認知症に焦点を当てた世界中の研究者が集まる世界最大の会議です。Alzheimer's Associationの研究プログラムの一環として、AAICは認知症に関する新たな知識を生み出し、活気に満ちた研究者コミュニティを育成する促進剤としての役割を果たしています。
AAIC 2025ホームページ: www.alz.org/aaic/
AAIC 2025ニュースルーム: www.alz.org/aaic/pressroom.asp
AAIC 2025ハッシュタグ:#AAIC25
Alzheimer's Association®について
Alzheimer's Associationは、アルツハイマー病のケア、支援、研究に取り組む世界的な任意団体です。同社の使命は、世界的な研究を加速させ、リスク軽減と早期発見を推進し、質の高いケアとサポートを最大化することで、アルツハイマー病をはじめとするすべての認知症を撲滅する道をリードすることです。同社のビジョンは、アルツハイマー病をはじめとするすべての認知症®のない世界を実現することです。ウェブサイトalz.orgをご覧いただくか、800.272.3900までお問い合わせください。
• Linlin Da(MPH)ほか。人種/民族グループ別における補充栄養支援プログラム(Supplemental Nutrition Assistance Program)への参加と認知機能低下との関連性:10年間の縦断的研究(The association between Supplemental Nutrition Assistance Program participation and cognitive decline by racial/ethnic groups: a 10-year longitudinal study)。(資金:National Center for Advancing Translational Sciences of the National Institutes of Health UL1TR002378)
ロゴ - https://mma.prnasia.com/media2/2689936/Alzheimers_Association_Logo.jpg?p=medium600