元来コンピュータが得意としているのは、論理的な条件判断や計算で答えが定まる問題を大量かつ高速に行うことでした。人間にとって簡単な写真や画像に写っているものを識別する作業は、その識別方法を論理的に条件化するのが難しいために、コンピュータには難しい作業でした。ディープラーニングの登場によって、ビッグデータを学習することで画像認識は精度よく行えるようになりました。
昨年11月末にOpenAI社からリリースされたChatGPTは、チャット形式でユーザと対話を行える大規模言語モデルです。人間が使う自然言語には不規則さが含まれているため、自然な文章を作ること自体コンピュータにとっては容易ではありませんが、文脈に沿った自然な対話が可能です。
また、文章の要約、翻訳、プログラムコードの生成など専門家でないと難しいような作業も可能です。このような汎用的な能力が生活やビジネスのシーンを大きく変えるのではないかと注目を集めています。
「ChatGPT」がポータルになるかはプラグインの広がりがカギ
ChatGPTがリリースされて1月も経たない昨年12月21日にGoogleは「Code Red」を発し、危機感をあらわにしました。多くの人は、これから作業を始める際にまずGoogleなどの検索エンジンを立ち上げるのではないでしょうか? 最初にアクセスするいわゆるポータルがChatGPTに取って代わられる可能性をGoogleが感じたためと考えられます。ChatGPTがポータルになるかどうかは、プラグインのネットワークがどのくらい広がるかにかかっていると私は考えています。
ChatGPTのプラグインとは、ChatGPTから呼び出されるクラウドサービス側で用意するAPI(アプリケーションインターフェース)のことです。ChatGPTは学習したデータを基に、次の言葉として統計的に最も確からしいものを選択して文章を生成していますので、その内容の正しさは必ずしも保証されていません。また、学習は2021年9月までのインターネット上のデータなどで行われていますので、素のChatGPTでは最新の情報に関しては正しく回答できないという制限があります。ChatGPTのプラグインは、ユーザが入力したプロンプトに対して、外部のサービスから情報を付加するものです。
これにより学習データには含まれていなかった、最新のインターネット上の情報や社内固有の情報を加味した的確な回答が得られる可能性が高まります(最終的な内容の真偽は自身で確認する必要があることは変わりません)。
ChatGPTのプラグインは約700ほど公開
ChatGPTのプラグインは、有料サービスであるPlusユーザ($20/月)が使用できます。メニューの「Settings&Beta」から「Beta features」を選択し、「Plugins」を有効に設定します。「GPT-4」を選択し、プルダウンから「Plugins」をチェックすると、「Plugin store」からプラグインをインストールできます。2023年7月現在、プラグインは約700ほど公開されています。
寄稿者 前一樹(まえ・かずき)ジャパンマネジメントシステムズ㈱代表取締役社長