長門湯本温泉は約600年の歴史を誇る。山口県では最古の温泉地である。そして、その由来は大寧寺の「定庵禅師」が、住吉大明神からのお告げによって発見したと伝わる。しかし、昨今は、団体型から個人型へと旅行スタイルが変化している。その結果、宿泊者・温泉利用者も大きく減少した。既存の温泉旅館が消え去り、町全体の活気も乏しくなっていた。
この状況を打破するため、長門市は2017年に「長門湯本温泉観光まちづくり計画」を策定。民間・行政・専門家が力を合わせて、新たな温泉街の魅力創出に向けて動きを始める。外部資本の参入や立ち寄り湯「恩湯(おんとう)」の再建を進めた。そしてと温泉街は新たな姿を見せ始めるようになった。
大きな改革の一つは、温泉街全体を一つの空間とすることだった。音信川(おとずれがわ)沿いの魅力づくりその代表例だ。「外湯」「食べ歩き」「文化体験」「そぞろ歩き」「絵になる場所」「休む・佇む空間」が具現化する。「川に遊び恩湯に触れる」「川沿いに広がる床で食を楽しむ」「オソト天国と称する町歩き」という統一感のある町づくりである。
この長門湯本みらいプロジェクトは、観光まちづくりの先進事例として全国から注目されている。そして、新しい長門湯本温泉を作り出す原動力となっている。黄昏時に町を歩き、本来の温泉地での過ごし方を実践する。とても素敵な時間を共有できる未来につながる温泉地の取り組みといえよう。
(2024.01.19.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長