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ボーダフル・ジャパン 第3部 第2話 白波を語る

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近年、宮崎の後塵を拝しているとはいえ、芋焼酎といえば、やはり鹿児島である。ビールを除けば、私の酒ライフは焼酎で鍛えられた。そう、鹿児島で酒と言えば焼酎のこと。

揃い踏み
揃い踏み、白波と霧島

友人の結婚式が城山観光ホテルであったが、徳利は燗酒(もちろん焼酎)。居酒屋には、一升瓶をさかさまにする酒燗器が置かれているが、もちろん出てくるのは焼酎だ。

みなさんは前割りという言葉を知っているだろうか?焼酎をあらかじめ好みの濃度に水で割り、少し時間を置いて寝かせる飲み方だが、味がマイルドになっておいしい。そしてそのまま燗につけるのだ(「き」のまま燗をつける都城とは違う)。

白波こそ・・・

当時はお湯割り焼酎はとても匂いがきつかった。九州北部や関西から来た同級生はお湯割りをのまなかった。だが鹿児島で日本酒といっても、そのころは「大関」とか「月桂冠」しかなく一杯300円、焼酎は80円だから、金がない私には当然、選択の余地はなかった。「おはら」、「さつま小鶴」などもたしなんだが、なんといっても枕崎にある薩摩酒造の「白波」こそが一番であった。

だがやがて焼酎の味が柔らかくなり、全国でたしなまれるようになる。鹿児島で飲む焼酎と県外では味が違う。私は明確にこれを意識していった。とくに印象に残っているのが、1993年の冬。山口女子大学(現山口県立大学)に就職した私は、のちに今の職場となる北海道大学スラブ研究センター(現スラブ・ユーラシア研究センター)に半年間、国内研修で滞在していた。

札幌で飲む焼酎は・・・

焼酎が飲みたい。札幌でも居酒屋やスーパーで手に入るようになった。大学に近い、行きつけの焼き鳥屋「おばちゃん」では人吉の球磨焼酎がキープできた。だがその名前をみて驚いた。球磨焼酎「くま」。。。そんな名前の焼酎を私は熊本でみたことがない(私の実家は熊本)。そしておいしくない。

スーパーに行く。「白波」の一升瓶があった。だがお湯割りで飲むとあまりに味が違う。これ本当に白波?

鹿児島の友人に訊いた。真偽はさだかではないが、鹿児島の焼酎はすべて「白波」として出しているという。当時、芋焼酎の全国ブランドは「白波」一色だったからだろう。想像だが、おそらく人吉の球磨焼酎もすべて「くま」として出していたのかもしれない。いずれにせよ、これは鹿児島や熊本の焼酎じゃあねえ。

半年の研修を終わって、山口(九州ではないのだが)で飲む焼酎は格別だった。

鹿児島の酒造り

本坊酒造のウイスキー「岩井」
本坊酒造のウイスキー「岩井」

その薩摩酒造、実は麦焼酎も出している。「神の河(かんのこ)」は全国で買えるが、鹿児島で麦焼酎?と最初はいぶかった。

ちなみにこれが枕崎だと知ったのは、姉妹提携にある稚内にいったとき飲まされたから。

それまではおいしい麦焼酎としか思っておらず、大分あたりと思い込んでいた。

鹿児島の酒造りをなめてはいけない。焼酎「桜島」で知られる本坊酒造。

本社は市内だが、加世田や知覧に蒸留所をもち、とてもおいしいウイスキーを造る。

バー池田に行こう
バー池田に行こう

なかでも、「岩井」「HHAE(はえ)」は絶品である。そのほか、本坊酒造に加え、日置の小正醸造などがクラフトジンを造っている。

ぜひ天文館にある南九州随一の「バー池田」を訪ねてほしい。これらがすべて堪能できる!

昭和のこれぞ芋焼酎

ところで、昭和の頃の、これぞ芋焼酎といった匂いと味わいのあった「白波」は飲めないのだろうか?

いや鹿児島なら飲める。薩摩酒造が鹿児島限定で出している「南之方(みなんかた)」がそれ。

南之方とお湯割りグラス(広島カープ!)
南之方とお湯割りグラス
(広島カープ!)

私は鹿児島に行くたびにこれを買う。空港でも新幹線の駅でも売っている。鹿児島にはいろいろな焼酎がある。薩摩酒造も10種類を超える「白波」を売っている。

売り上げでは宮崎に負けていても、そのディープさと多様さでは圧倒している。

さすが芋焼酎のふるさと、かごんま。

(つづく)

(これまでの寄稿は、こちらから)

https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=20

寄稿者 岩下明裕(いわした・あきひろ)

北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授 兼 長崎大学グローバルリスク研究センター長

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