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「危機遺産」

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UNESCOの勧告

 水の都として有名なイタリアの観光地ベネチア。今、旅行客の過度な増加や気候変動による問題が深刻化している。そのため、UNESCO(ユネスコ)が「危機遺産」の指定を勧告した。ベネチアでは2019年に高潮で歴史地区が浸水。今年に入って干ばつが悪化し運河が通行できなくなった。その結果、一部の水路で大型クルーズ船の乗り入れを禁止するなどの対策が講じられた。しかし、オーバーツーリズムの問題はずっと続いていたのだという。

本質的な問題は・・・

 日本国内でもコロナ前には急増するインバウンド。そのオーバーツーリズムが問題視されていた。マスコミは目に見えて<外国人>だらけに変わっていくKYOTOばかりを取り上げていた。だが、本質的な問題はそこではない。各地でインバウンドという特需により「観光事業者」「観光客」「地域(住民)」の<三方良し>のバランスが崩れたことだ。今回は、想定外の出来事により強制的にリセットされたが、基本的な解決策が見つかったわけではないだろう。

コントロール不能の状況に・・・

コロナ前の上野公園、桜の時期の様子
訪日外国人しか見受けられない

 今や、インバウンドはコロナ前を超える勢いだ。しかも、以前より圧倒的にFIT化(個人旅行)していて観光事業者(旅行会社)がコントロールするのは難しい。ベネチアで最初に危機遺産が勧告された時は住民の意思も働いたようだ。観光に面と向かってNOと言われるのは辛いが、住民のまちづくりへの参画意識が高いということには違いない。

 マスコミが「危機遺産」の話題に飛びつく前に、地域(住民)主導で地域を豊かにする観光の議論を深めていきたい。

(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=31

寄稿者 福井善朗(ふくい・よしろう) 山陰インバウンド機構 前 代表理事

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