長崎県平戸市（黒田成彦市長）とガイア（宮城県白石市、相澤国弘社長）は10月29日、「アルベルゴ・ディフーゾ」理念に基づく地域連携協定を東京都内で締結した。両者はイタリアの国際機関から、それぞれ「アルベルゴ・ディフーゾ・タウン」「オスピタリタ・ディフーザ」として認証された日本初の地域で、今後は情報共有や誘客促進、防災協力などで連携を進める。
協定式には、平戸市の黒田市長とガイアの相澤社長が出席。まず、アルベルゴ・ディフーゾ・インターナショナル会長であるジャンカルロ・ダラーラ氏が今年５月に日本を訪れ、両地域を正式に認証した経緯が紹介された。同認証は、地域全体を「分散型ホテル」と見立て、空き家や歴史的建造物を宿泊・交流拠点として再生する取り組みを評価するもの。イタリアで生まれた地域再生モデルとして、ヨーロッパを中心に注目されている。
黒田市長は「海と島の美しさを生かした平戸と、山岳高原の自然に囲まれた蔵王。異なる地域が手を取り合うことで、日本の多様な風景を体感できる新たな旅の流れを生み出したい」と語った。
平戸市では、城下町エリアを中心に文化財建築や古民家を改修した分散型宿泊施設の整備が進んでいる。宿泊施設として平戸城のふもとには海を望む「平戸海上ホテル」や武家屋敷を活用した「甚兵衛邸」などがあるほか、ナイトミュージアムや街灯演出による夜の観光づくりも展開している。協定内容には、国内外の旅行商談会への共同出展、宿泊予約サイトの共有、そして災害時の相互支援体制の検討などが盛り込まれている。
相澤社長は、自社が蔵王で展開する「蔵王福祉の森構想」を紹介。空き家を宿泊施設や福祉施設として再生し、高齢者や障害者が地域の担い手となる仕組みを説明した。現在、蔵王エリアでは年間約８万人の宿泊者を迎え、その６割が欧州からの訪日客という。「社会課題の解決を成長の原動力に変える」という理念のもと、今回の連携でアジア圏からの誘客も視野に入れる。
このほか、黒田市長は、「今後は離島・大島村でもアルベルゴ・ディフーゾの展開を検討しており、街全体でＷⅰ―Ｆⅰを整備しデジタルノマドの誘致にも取り組む」と語った。平戸市とガイアの連携は、「山のガイア」「海の平戸」という象徴的な組み合わせとして注目を集めている。地域文化と暮らしを丸ごと体験する新たな旅の形が、ここから全国へと広がりそうだ。
取材 ツーリズムメディアサービス編集部
