一般社団法人天王洲・キャナルサイド活性化協会は、観光地域づくり法人(DMO)として、天王洲アイルの観光振興と地域活性化を推進しています。当協会設立以来、行政・企業・大学・地域住民を結びつける「コーディネーター」として、まちの活性化を目指して活動しております。前回は、アートを軸とした魅力的な観光地への転換についてご紹介しました。今回は、イベントで集めた「人流」を、いかに地域全体の経済へと還元し、持続的な観光消費を拡大させる仕組みづくりについて述べたいと思います。

まちづくりコンセプトと地域連携
天王洲アイルは、倉庫、オフィス、ホテル、住居、商業施設、劇場、イベントスペース、アートギャラリーなど多様な施設が存在する都市です。天王洲DMOは、まちづくりのコンセプトを共有し、多様な関係者を連携させる使命を担っています。再開発当初からアイデンティティであった「水辺とアートの街」を確認し再定義しました。この結果、アート関連施設、運河の景観、水上交通、商業施設、オフィス、イベントスペースなど、個々の魅力を統合するキャッチフレーズとなりました。このキャッチフレーズを基軸に、イベント企画やプロモーションを行うことで、地域全体に高い統一感と訴求力が生まれました。

「天王洲キャナルフェス」のプラットフォーム
2016年から開催されている「天王洲キャナルフェス」は、季節ごとに年4回開催されていました。昨今では、気候の変化により、春と秋の年2回となっています。このイベントは、地域の魅力を体験、体感することをコンセプトにしています。
天王洲運河で行われる水辺のプロジェクションマッピングは、天王洲アイルの風物詩となりました。水上施設を舞台とした船上ライブや地域の企業・大学と連携した「こども大学」などの多彩なコンテンツは、楽しむ、学ぶだけでなく、まちの魅力を体感、体験する機会を創出しています。また、オフィスワーカーが少ない週末に開催することで、休日の地域の賑わいと来場者同士の交流が生まれ、結果として天王洲アイルのブランドイメージ向上にも寄与しています。

観光資源の創出と磨き上げ
天王洲DMOは大型壁面アートの制作や、公開空地への立体アートの設置を行うプロジェクト、を継続的に展開し、街を歩くだけで楽しめる「まち全体がミュージアムのような天王洲アイル」を推進しています。さらに、運河のライトアップや、舟運を利用した交通・周遊コンテンツの開発にも注力しており、交通手段や夜の景観を「天王洲ならではの体験コンテンツ」へと進化させています。
イベント来場者を「消費者」に変える戦略的回遊デザイン
イベントで来街した人流をいかに地域内の商業施設へと分散させ、滞在時間と消費額を最大化することが、DMOとして注力する「回遊デザイン」となります。
施策①:デジタルとクーポンによる「消費の分散」
イベント来場者が、会場周辺で完結せずに、まちのなかへ踏み込んでもらうための仕掛けづくりとして、イベントやアート施設などの来場者を中心に、天王洲や品川区のランドマークを巡るデジタルスタンプラリーを実施します。そのインセンティブとして、スタンプ獲得者には、地域の店舗で利用できる「地域限定デジタルクーポン」を還元することにより、消費行動を調査し、クーポン利用状況を分析することで「イベント来場者の消費行動パターン」を科学的に把握します。この分析により、エリアごとの消費特性と消費時間軸を突き止め、次期施策の改善に活かすだけでなく、「ついで消費」を意図的に発生させ、観光消費額のボトムアップを実現します。
施策②:オフピーク誘導のためのプロモーション戦略
イベント後の「人流の流出」を防ぎ、オフピークの消費額拡大を促すために、イベントチケット購入者に、商業施設や飲食店などで使える「ハッピーアワークーポン」を提供します。そうすることで域内の一人あたりの消費額を高め、ピークタイムの分散化や、お客さまの少ない時間への誘導による平準化をおこない、収益構造の変化を促します。
施策③:運河を活かした「アクティビティ・トランスポート」
天王洲DMOは、舟運の活性化を重要な観光消費コンテンツと位置づけています。湾岸エリアの主要拠点や品川区の観光エリアと天王洲アイルをつなぐシャトルボートを運航するだけではありません。舟運が単なる交通手段ではなく、「東京港の観光クルーズ」として、水上から東京のまちを俯瞰させ、東京の魅力を再認識させることや、天王洲アイルを目的地とし、下船後の回遊行動への動機付けにつなげます。

天王洲DMOが描く未来:都市と地方をつなぐゲートウェイ
天王洲DMOは、品川区エリアを中心とした地域の経済循環だけでなく、「都市と地方をつなぐゲートウェイ」という新たな使命も担っています。「天王洲キャナルフェス」などのイベントを通じて、全国各地のDMOや特産品を紹介するブースを積極的に誘致しています。都市型DMOとしての強みを活かし、東京の消費意欲を地方へと誘導し、地方創生へとつなげる広域的な観光連携モデルを提示しています。
このように、天王洲DMOは「水辺とアートの街」を基盤としながら、イベントを起点に地域経済と観光消費を結びつける、新しい都市観光のプラットフォームの創出を目指しています。
※アイキャッチは、「水辺とアートの街」 天王洲運河
寄稿者 三宅康之(みやけ・やすゆき) (一社)天王洲・キャナルサイド活性化協会 / 会長