イタリアに拠点を置く国際認証団体Vireo Srl(ヴィレオ)が日本市場へ本格参入を果たした「Vireo Japanオープニングイベント」(令和7年12月5日、ホテル椿山荘東京にて開催)。この場に、東京山側DMC代表取締役である宮入正陽氏が出席しました。
宮入氏がこのイベントに参加した背景には、日本の観光が抱える深刻な課題意識があります。それは、国際的な持続可能な観光認証であるGSTC(世界持続可能な観光協議会)の認知と価値の浸透の遅れが、今後、インバウンド客との間に「持続可能ではない関係」を生み出しかねないという危機感です。
観光地側(地域や事業者)がサステナブルな取り組みを徹底し、国際的な基準に適合しなければ、訪れる人々も「疲弊させる消費」、すなわち地域資源や住民に過度な負担をかける消費形態に陥りやすくなります。東京山側DMCが目指すのは「インバウンド復興」ではなく、インバウンドの方々が敬意を持って日本の観光、風土を楽しめるような、お互いに良い持続可能な関係を築くための「布石」として、GSTC認証の普及を捉えています。将来的には、この基準が日本観光のスタンダードとなることを目指しているのです。
地域と事業者が結ぶ「車の両輪」の連携
イベントでは、Vireo SrlのCEOであるルイージ・マッツァーリア氏や、Vireo Japan(運営会社:株式会社サステナ認証センター)の役員らが登壇しました。VireoがGSTC認証機関として世界で唯一、事業者を対象とした認証と、地域(デスティネーション)を対象とした認証、その双方に対応する点が強く強調されました。

この「両輪」対応の重要性について、北海道大学 観光学高等研究センターの客員教授である小林秀俊氏が熱弁を振るいました。小林氏は、以前の日本では、環境と観光を包括的に捉え、地域やホテル、旅行業を一括して評価できる認証組織が存在しなかった点を指摘しています。

持続可能な観光の推進には、地域(自治体)だけが頑張っても、また観光産業(企業)だけが頑張っても不十分であり、両方(地域と事業者)がうまく進んでいることで初めて地域が観光的に確立すると強調されています。GSTC認証は、まさにこの連携を促し、日本全体を質の高い持続可能な観光地へと導く「車の両輪」としての機能が期待されます。
国際基準が導く観光の「質の向上」
東京山側DMCは、GSTCスタンダードのような国際基準を導入することが、日本の観光が世界と対等な立場で、かつ高い「質」でサステナビリティを実現するための鍵だと見ています。
GSTC認証を取得することは、国際的な第三者認証機関による「お墨付き」を得ることを意味し、サステナビリティに対する信頼性を向上させます。これは、国内外の消費者が、どのラベルを信用してよいか選べないという「共通の信用できるラベル」に対するニーズ(約7割弱)に応えるものです。
さらに、GSTCスタンダードに照らし合わせるプロセスは、地域や事業者にとって非常に価値ある「自己分析ツール」となります。
- 国際基準で見たときに、自分たちが今まで当たり前だと思っていた取り組みが、実は世界基準で見ると強みであったと客観的に知ることができる。
- 逆に、国際基準で見たときに、全く盲点となっていた弱みを知ることができた。
この自己分析の結果、行政、事業者、住民の間で協力し合い、一つのゴールに向かって進めるための連携構築のきっかけとなります。
宮入氏の出席は、日本の観光が「なんとなく環境に良い」というレベルから脱却し、国際的な標準を採用することで、インバウンドと地域住民、そして環境が「サステナブルな関係」を築くための不可欠な一歩が始まった瞬間を捉えるものとなりました。この制度をプロモーションし、その価値を利用者に理解してもらうことこそが、今後の日本の観光のスタンダード化を決定づける鍵となるでしょう。
※GSTCとは
持続可能な観光の推進と持続可能な観光の国際基準を作ることを目的に、国連財団、国連環境計画、国連世界観光機関、レインフォレスト・アライアンスを主とした32のパートナー団体からなる連合体として、2007年に結成した国際非営利団体(登録国:米国)。
持続可能な観光に関する国際的な基準(GSTCスタンダード)の設定・管理と、認証機関に対する国際的な認定の提供、および持続可能な観光に取り組む人材の育成などを行っている。
Vireo Japan(運営会社:株式会社サステナ認証センター)
〈所在地〉北海道札幌市
〈代表者〉代表取締役 堀川貴之
〈設立〉2025年10月
〈事業内容〉GSTC認証およびサステナブル認証の申請受付・監査/認証後の継続監査に関する運用調整/GSTC認証およびサステナブル認証の普及🔻問い合わせ
株式会社サステナ認証センター
メール:japan@vireocert.com