日本の近現代化を推進してきた「黒いダイヤモンド」石炭産業は、『炭坑節』の歌詞にも、その栄華が詠まれている。特に2番の歌詞「一山二山三山越え」とは、田川市を代表する香春岳(かわらだけ)を表している。田川市は、炭坑節の故郷だ。
(冒頭の写真は、田川伊田駅から望む、市のシンボル石炭記念公園内の「二本煙突」)
前回は、筑豊の現状をレポートするとともに、教育旅行の体験プログラムの構築について述べた。詳しくは、再度お読みいただきたい。
筑豊で「黒いダイヤモンド」を探せ!(https://tms-media.jp/posts/47345/)

網の目状の鉄道路線
田川は、直方、飯塚とならぶ筑豊三都の一つだ。その筑豊地帯は、かつて石炭輸送のために鉄道網が張り巡らされてきた。そのため、筑豊本線を直方駅から分かれた伊田線は石炭輸送の大動脈であり、現在の田川伊田駅を結んでいる。そして、全線複線で長蛇の貨物列車が停まるために長いホームを保有している。一方、途中の福智町金田駅で糸田線が分かれ、田川後藤寺駅へ鉄路は延びる。この二つの終着駅が田川市の玄関口だ。

現在は、平成筑豊鉄道が国鉄から経営を引き継ぎ、鉄路を守り続けている。しかし、鉄道からクルマ社会への変貌によって、その経営は厳しい状況、廃止の議論が続いている。
炭坑閉山からの変革
さて、戦中1943年に後藤寺町と伊田町は合併する。1949年に昭和天皇の巡幸があり、筑豊最大の炭都には活気が戻ると期待された。しかし、1964年、三井田川鉱業所が閉山。それに伴い、市内に残っていた小規模炭鉱も閉山を強いられた。そして、1971年に田川市内の炭鉱は全て閉山する。多くの炭坑従事者が町を後にした。
この人口減少を打破するために産業構造の転換や住宅団地の開発などが進められる。北九州工業地帯に近いことを活かして、市内の白鳥工業団地や望岳台団地などが整備造成された。その結果、石炭産業からの脱却を図り、製造業や流通業の進出が進んだ。また、近隣へのバイパス道路網整備も展開され、クルマ社会への対応も可能となった。加えて、医療・福祉環境も整備される。1992年に医療・福祉の人材の育成を目指し、伊田地区に福岡県立大学が設立された。
クルマ社会がもたらした町の減退
このように、主要道路の郊外化によって、鉄道駅周辺の商店街は衰退していく。そのため、田川市は中心市街地の衰退に歯止めをかける施策を展開する。まずは、2014年度に「田川伊田駅周辺地区都市再生整備事業」を開始。この事業は、JR田川伊田駅のリニューアルや駅前広場の整備、市道鉄砲町後藤寺線の拡幅などである。また、JR田川後藤寺駅周辺においても再開発計画が進んでいる。こちらは、2028年度末に向けて、駅前広場や憩いスペースの設置、バスロータリーの設置が検討されている。


福岡県は西鉄バスを中心とした路線バス王国でもある。そのため、田川から福岡市内や北九市内への直行路線バス網もしっかりと整備されている。結果として、乗換を強いられる鉄道利用客は、増える兆しが見えない。
平日の昼間、田川伊田駅と後藤寺駅の駅前商店街に足を踏み入れると、買い物客はほとんど存在しない。また、アーケード内の店舗も閉まったままである。交通弱者と呼ばれる高校生や高齢者が、時折その中を歩いている姿を目にする。
駅前商店街変革のヒント

一方、このアーケード街にも生活の匂いは存在する。それは、アーケード内に住み、福岡や北九州の大都市に通勤・通学に出る人々のものである。彼らは、この場所での商売をやめ、住む場所として営みを続けているのだ。
昨今、シャッター商店街を一つの町に見立てて、宿泊業を経営する取り組みが進んでいる。特に東大阪市の布施商店街(セカイホテル大阪布施)は、その成功事例と言われ、国内外のお客様がやってきている。
しかし、この取り組みを田川の駅前商店街に移殖したとしても、なかなか成功するものではない。大阪と田川では、そもそも観光客数が違うからである。
地域振興が鮮やかな彩りを取り戻す
全国の行政機関が推し進める地域振興は、町の隠れた素材を磨き上げ、観光コンテンツに育て上げることである。そのためには、地域住民の協力は必須である。より多くの人々が参画することによって、その地域の良さは、訪れる人々に伝わっていく。
筑豊の町は、日本の近現代史を作り上げてきた場所である。特に石炭産業は、後世に語り継ぐ大切のものだ。既に消滅したモノ・コトも数多く、昔語りも難しいと言われている。今に残る『炭坑節』を最大限活用し、地域全体でインフラツーリズム、教育旅行における体験学習プログラムの構築に挑戦することが重要なことと感じる。
どれだけの時間がかかるかわからない。しかし、鮮やかな彩りを取り戻す第一歩になると確信する。
(つづく)
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(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8
取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長