1月1日、標高1925mの車山山頂(長野県)。雲海が広がり、遠く富士山をも見渡す快晴の下、車山神社の「歳旦祭」並びに「雪中禊(せっちゅうみそぎ)」が執り行われました。
厳冬の自然環境と向き合い、地域の安寧を祈るこの神事は、単なる伝統行事の再現ではありません。そこには、風土と文化を次代へ継承するために汗をかき、極寒に耐える人々の「行動」がありました。本稿では、神事の模様とともに、地域固有の価値を守り抜くために不可欠な実践と、それを支える東京山側DMCの運営サポートについてレポートします。
地域の価値は「行動」の中にこそ宿る

地域創生の文脈において、その土地固有の精神性や風土(気候・地形)への注目が高まっています。しかし、これらは資料として保存するだけでは維持できません。実際に誰かが行動に移さなければ、その価値は急速に薄れ、やがて消滅してしまいます。

今年の雪中禊には、そのような危機感と好奇心を持った参加者が集いました。初参加のアスリート・新田平氏(29)は、氷点下の環境で水を浴びる過酷さを前に「これをやるということはどういうことなんだろう」という好奇心に突き動かされたと語ります。実際に禊を行った後には、「言葉にするのは難しいが、自然との一体感、協調性を感じる体験だった」と述べ、行動した者だけが得られる境地を吐露しました。
また、参加者の一人は「神様の偉大さ、自然の偉大さ、そして日本の素晴らしさを感じた」と語り、心の持ち方一つで過酷な寒さが幸福感に変わる体験を通じて、日本の精神文化の深さに触れています。これらはまさに、身体的実践を通じて地域の価値が「再生成」された瞬間と言えるでしょう。
運営サポートという「守り人」の役割
このような神聖かつ過酷な神事の継続には、強固な運営体制が不可欠です。本神事には、東京山側DMCが運営サポートとして深く携わっています。
運営側の中心人物であり、今回で3度目の参加となる東京山側DMCの西川氏は、自らも禊の先導役である「道彦(みちひこ)」を務めました。西川氏は、参加者が呼吸を合わせて禊を行う中で、寒さを超えたアドレナリンと集中状態、いわゆる「無我夢中」の時間を体験したと語ります。

西川氏は、「これを毎年続けていくこと、そして神男(禊参加者)が増えていくことが望ましい」と語り、継続することの重要性を強調しました。また、運営組織として「柔軟であり、強い組織を目指す」とし、時代の変化に対応しながらも、伝統行事のような通常の企業活動ではカバーしきれない領域を支えていく決意を示しています。
神事の運営をサポートすることは、単なるロジスティクスの提供ではありません。それは、地域が大切にしてきた「祈り」や「自然への畏敬」といった見えない資産を、現代的な組織力で下支えし、守り伝えていく文化的な営みそのものです。
結びに
2026年の車山神社歳旦祭は、晴天という天候の恵みもあり、多くの参拝客に見守られながら滞りなく終了しました。しかし、この神聖な風景は「当たり前」にあるものではありません。
風土に根差した文化は、実践する「人」と、それを支える「組織」の具体的な行動によってのみ、その命脈を保つことができます。東京山側DMCのような地域商社が、ビジネスの枠を超えて神事の当事者として関わる姿勢こそが、地域の深層的な価値を守り、地域創生の実を結ぶ鍵となるのではないでしょうか。
寄稿者:西川佳克(にしかわ・よしかつ)東京山側DMC 地域創生マチヅクリ事業部