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ボーダーツーリズム(国境観光) 第23章 島は島なりに治めよ

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明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

対馬に学ぼう

さて、長崎県対馬市は何度かご紹介をしていますが、ボーダーツーリズムの魅力あふれる島です。

朝鮮半島と約50㎞で接するその位置は古代から現代に至るまで、さまざまな物語を残し、対馬は常に国境地域として「砦」の役割を求められてきました。さらには南から流れる対馬海流、日本海を南下してくるリマン海流の流れは、朝鮮半島ルートとは異なる交流の国際性と複雑さを加えています。

そのような地政学的特殊性の中で“しぶとく”生き抜いてきた対馬から、特に鎌倉時代から明治初期まで対馬を支配し続けた宗氏(そうし)が行った独特の統治方法からは今の日本、地方自治体は多くのことが学べるのではないか、と思います。

国書偽造事件

朝鮮通信使幕府接遇の地
朝鮮通信使幕府接遇の地

対馬藩主であり宗氏第19代当主、宗義智(そうよしとし)は、豊臣秀吉の朝鮮出兵で断絶した日本と朝鮮との関係修復を徳川家康から命じられました。朝鮮との貿易再開は対馬にとっても藩の財政基盤であり、生命線だったとは言え、朝鮮側の条件は家康による謝罪の意を込めた国書の提出。家康としては絶対に受入れられません。

考え抜いた宗義智は、独断で国書を「謝罪の意」を含んだ内容に偽造・改ざんし朝鮮側へ提出。朝鮮国王から家康への返書も“受け入れやすい”内容に改ざんし、結果として日朝の国交は回復し、朝鮮通信使の来日につながったのです。

しかしながら、国書偽造は今も昔も重罪。対馬藩内部でも長年にわたり極秘にされていました。

ところが1635年にお家騒動が起こり、宗氏の失脚を狙った藩の重鎮柳川調興(やながわしげおき)が国書偽造の事実を江戸幕府に訴え出ます。幕府にとっても一大外交問題であり、時の3代将軍家光が直接裁決に乗り出す事態となりました。

島は島なりに治めよ

その裁決は、当時の対馬藩主宗義成(そうよしなり)は“お咎めなし”、柳川調興は遠島(流罪)でした。採決の理由は、日朝国交継続の必要性と対馬藩の地理的・経済的な特殊性を江戸幕府が認めたからだと言われています。この綱渡りのような事件を起こした背景には何があったのか。それは、前述の宗氏第19代当主、宗義智が遺言として残した言葉が背景にあったと言われています。

宗義智は、朝鮮半島・中国大陸に近い対馬の地理的特殊性、米の生産(石高)よりも朝鮮との貿易や外交が対馬にとって重要なことを痛いほど理解しており、幕府の介入を最小限に抑え、朝鮮半島との交流・外交を優先することを藩の方針にするべきだとして次の言葉を残しました。

島は島なりに治めよ

この言葉が、対馬藩内部で脈々と引き継がれただけでなく、江戸幕府もそれを認め続けた史実には驚きます。

宗義智による国書偽造事件、「島は島なりに治めよ」を対馬藩の方針として守り続けた一連の物語は、今では『対馬物語』というミュージカルとして対馬市の市民劇団や関係者によって上演されています。地元の先人の功績を学ぶことができますが、島外での公演がないことが残念です。

諫鼓鳥

音読みをすれば「かんこどり」。一般的には不景気を意味する「閑古鳥」が知られています。

対馬 諫鼓
対馬 諫鼓

この「諫鼓」とは古代中国の聖王である堯(ぎょう)が王城の外に置いた太鼓で、民衆が政治に不満があるときは、叩いてその訴えを知らせることができたようです。しかしながら、堯の政治は優れていて一度も叩かれることなく苔がむし、太鼓の上で鳥が遊ぶようになったと伝えられています。善政の象徴です。

この諫鼓、宗氏の居城であった金石城(かねいしじょう)の正門にも置かれていたとの伝承が残っており、今は宗家代々の菩提寺である万松院(ばんしょういん)境内に石像として安置されています。

私は昨年秋、境界地域研究ネットワークJAPANの対馬セミナーに参加し、諫鼓の石像を見学しました。同行した何人かの国境地域の自治体の首長も説明文を読み、石像を撮影し、「諫鼓で鳥が鳴く町政、村政を目指したい」と語っていたのが印象的でした。

ボーダーツーリズム対馬検定

 「島は島なりに治めよ」

この言葉は、今でも地方分権、地方自治を象徴する大切な言葉ではないでしょうか。観光に限っても、どこかの成功例を転用するコンサルティング的な手法や戦略本よりも、地元の先人たちの取組に多くのヒントが隠されているように思います。

そして、ふるさと納税、関係人口の量的拡大・質的向上、ふるさと住民登録制度もまずはその自治体を知る事から始めよう、そんな思いも込めて、私たちはボーダーツーリズム検定をスタートさせています。現在は対馬検定、五島検定を実施中で、近日中に与那国検定、礼文検定をスタートします。

受験料は無料です。ぜひチャレンジしてみてください。ボーダーツーリズム推進協議会のホームページから検定試験サイトに進むことができます。

どうぞよろしくお願いいたします。

(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=17

寄稿者 伊豆芳人(いず・よしひと) ボーダーツーリズム推進協議会会長

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