観光庁は1月21日、長官会見に続き、菅原晋也観光戦略課長が2025年の訪日外国人旅行消費動向について説明した。長官会見で示された「消費額9.5兆円」という過去最高水準の数字について、菅原課長は「中身を見ると、市場の多様化と宿泊費を中心とした構造変化がはっきり表れている」と述べた。
10~12月期、消費額は2.5兆円 中国は首位も構成比低下
2025年10~12月期の訪日外国人旅行消費額は2兆5,330億円と、前年同期比で10.3%増加した。国・地域別では中国が3,534億円で首位を維持したものの、構成比は14%まで低下。次いで米国が3,260億円(構成比12.9%)となり、欧米市場の存在感が高まっている。
中国については、10~12月期の消費額が前年同期比で17.9%減少した。菅原課長は「旅客数が前年同期比で5.3%減少したことに加え、1人当たり旅行支出も13%減少していることが重なった結果」と説明。特に、靴やバッグ、革製品などの高額商品の購入が減少し、買い物代の落ち込みにつながっているとした。
年間消費額は9兆4,559億円、コロナ前の約2倍
暦年ベースでは、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,559億円となり、前年から16.4%増加。2019年(約4.8兆円)と比べると、約2倍の規模に拡大した。
増加分約1.3兆円の内訳を見ると、中国が約2,700億円、米国が約2,200億円増加したほか、オーストラリアやドイツもそれぞれ600億円以上増加するなど、欧米豪市場の伸びが顕著だった。菅原課長は「この1年で欧米豪市場を中心にインバウンド消費が大きく伸び、市場の多様化が進んだと言える」と述べた。
1人当たり支出は22.9万円、宿泊費が押し上げ要因
2025年の訪日外国人1人当たり旅行支出は22万9,000円と、前年から0.9%増加した。菅原課長は「伸び率としては横ばいに近いが、内訳を見ると特徴がある」と指摘する。
平均泊数は前年から0.5泊増えて9.5泊となり、これに伴い宿泊費が1人当たりで約9.7%増加した。さらに、1人1泊当たりで見ても宿泊費は3.5%増えており、「安価な宿泊施設へのシフトだけで説明できる状況ではない」と説明した。結果として、宿泊費の増加が1人当たり支出全体を下支えした形だ。
一方、買い物代は中国市場の影響もあり、全国籍ベースではやや減少した。飲食費や娯楽等サービス費は大きな変動はなく、全体としては宿泊費主導の消費構造が鮮明になっている。
波及効果は約19兆円、「第2の輸出産業」としての存在感
菅原課長は、訪日外国人旅行消費の経済的意義についても言及。消費額9.5兆円は、過去の傾向から約2倍の経済波及効果が見込まれるとし、「約19兆円規模の波及効果が期待できる」との見方を示した。
「観光は自動車産業に次ぐ“第2の輸出産業”と言われてきたが、その位置づけがより確かな数字として表れてきた」とし、宿泊、飲食、交通にとどまらず、製造業や農林水産業を含む幅広い分野への波及効果を強調した。
地方分散とコト消費は今後の課題
質疑では、都市部と地方の消費動向や「コト消費」の広がりについて論点が及んだ。地域別データについては「今回は一次速報のため未公表」としつつ、「地方誘客と分散は引き続き大きなミッション。宿泊旅行統計など別のデータも用いながら分析を進め、今後公表していきたい」と語った。
また、体験型消費(コト消費)については、前年差では「ほぼ横ばい」と説明。「なお一層の努力が必要」とした上で、次期観光立国推進基本計画の中で、コト消費拡大につながる施策を盛り込んでいく考えを示した。
菅原課長は最後に、「人数の増加と消費額の拡大が同時に進む中で、その中身をどう高度化していくかが次の段階だ」と述べ、市場の多様化、宿泊・体験の質の向上、地方分散を軸にした政策展開の重要性を強調した。
取材 ツーリズムメディアサービス編集部