【新年度へ寄稿者を募集中】 学び・つながる観光産業メディア

伊豆に学ぶ地域創生最前線 循環する自然資源と感謝のDX【現地レポート後編】

コメント

前編で追った「循環する自然資源」の実践から一歩進み、後編では「感謝のDX」を切り口に、地域創生の最前線のもう一つの姿を追う。新しく流通し始めた地域トークン「IZU POINT」だ。これまで評価されにくかった地域での小さな実践やお手伝いの「ありがとう」が見える価値となるとき、現場では何が生まれているのか。その答えを丁寧に探っていった。

「ありがとう」を可視化する。アナログな会話を生み出すDAOの未来

視察の後半、私たちを待っていたのは案内人の 近藤ナオ氏による、社会実験とも言える取り組みだ。 近藤氏はこれまで、山梨の限界集落でのNPO活動やシブヤ大学など、常に現場で人と向き合うアナログなコミュニティづくりに奔走してきた。そんな彼が「これからのローカルのかたち」としてたどり着いたのが、DAO(自律分散型組織)Web3技術を活用した地域トークン「IZU POINT(イズポイント)」である。

この仕組みにおいて近藤氏たちが最もこだわり、大切にしている哲学がある。
それは「お金ではない」こと、そして「これまでお金に換えられなかった価値を交換する」ということだ。

草刈りを手伝う、余った食材をシェアする。そんな日常に埋もれていた小さなお手伝いや「ありがとう」をポイントとして可視化し、金銭では買えない特別な体験と交換する。 例えば、地域のお手伝いで貯めた1,000ポイントを使って、本来市場に出ない魚を300ポイントで譲り受け、夕食の食卓に並べる――。
金銭的な損得勘定ではなく、感謝の総量を交換し合う。それがIZU POINTの本質なのだ。

一見、ブロックチェーンという難解な技術と、地域の伝統的な営みは対極にあるように思える。しかし、現場ではその融合こそが「人手不足の解消」や「関係人口の創出」という地域課題への軽やかな解決策となっていた。

DAO(自律分散型組織)とIZU POINT(イズポイント)の近藤氏から説明を受け、さらに理解を深める参加者達。

ソトの人とナカの人が混ざり合う

その実例を見せてくれたのが、温泉宿泊施設「蒼海の宿 ならいの風」のオーナー・藤井氏だ。 地域の伝統行事である「どんど焼き」の人手不足の声が耳に入り、IZU POINTを通じて協力を依頼。すると、下田でイベントをやりたくてやってきた二拠点居住者、いわゆるソトの人を繋いだのだという。

多様な人たちを繋ぐ仕掛けとして、IZU POINTを使えるのが面白いと感じ、自らも施設紹介の動画制作にIZU POINTを設定したり、閑散期の宿泊プランを提供したりと、この仕組みを楽しみながら活用している様子だ。

部屋から望む外浦海岸。閑散期に生まれるスタッフ稼働と空き部屋のロスを、IZU POINTでの宿泊提供に振り替えているそうだ。

「ポイント流通額を大きくして、面白いことをどんどん仕掛けたい」

高いポイント数で活用している理由を明かした。つまり、流通額が増えるとIZU POINTのみで様々なプロジェクトを始めることも可能になっていく。たくさんの可能性を秘めたIZU POINTに期待を寄せる藤井氏の輝く眼差しが何よりも印象的だった――。

かつて、日本に息づいていた手間返しの文化は、デジタル技術によって現代に新しい蘇り方をした。IZU POINTが目指すのは、単なる効率化などではなく、テクノロジーを介して、心の通ったコミュニケーションを取り戻す試みなのだった。

ならいの風にて、実際に活用されている藤井氏の話を伺った。参加者からは質問が活発に飛び交う。

結びに:ヒーローではなく、チームで創る未来

今回の視察を通じて一本の線として繋がったのは、「便利な時代だからこそ、対話と信頼がすべて」だということだ。
IZUとDAOを始める前、近藤氏はシステム実装前に、地域のプレイヤーと一人ひとり膝を突き合わせ、徹底的に対話を重ねたという。その泥臭いプロセスがあったからこそ、デジタルな仕組みが地域に血の通ったインフラとして定着しはじめているのだ。
「一人のヒーローではなく、チームで風土を作っているのが素晴らしい」 視察に参加したメンバーの一人が漏らした言葉だ。ここにあるのは、誰か一人のカリスマ性ではなく、信頼で結ばれた面としての強さである。
「地域の声に耳を傾け、信じて、任せる」 伊豆で出会ったリーダーたちの姿は、地域創生の本質が、システムやハコモノではなく、結局のところ「人の心」にあることを、私たちに示してくれた。
本質的な地域創生の解を求める読者は、この伊豆の地からの発信を引き続き注視してほしい。

寄稿者:熊谷綾(くまがい あや)・小谷沙智(おだに さち)東京山側DMC_AI*地域創生プロデューサー資格養成講座

視察後の懇親会では、IZU POINTでミニ漬け丼をいただいた。400~500ポイントを各自ポイントを決めて、店主へ送った。


/
/

会員登録をして記事にコメントをしてみましょう

おすすめ記事

/
/
/
/
/