土木の視点で「人の流れ」を設計
2月20日舞台は 宮城県気仙沼市の港町だ。土木業を営む夫妻が運営する民間観光案内所「KNEWS(ニューズ)」が、現場主義に基づいた独自の地域振興策を展開している。半年間で集めた約1000件の「顧客の声」を分析し、デジタルでは補いきれない「情報の隙間」を埋めることで、観光客の回遊性と地域経済の活性化を狙う。
運営を担うのは、市内で「熊剛組」を営む熊谷圭悟さん、綾さん夫妻。10年以上にわたり地域のインフラ整備に従事してきた。夫妻は、観光客が情報過多の中で「今、ここからどう動けばいいか」という判断に迷っている現状に着目。物理的なインフラを整える土木業の知見を、観光客という「人の流れ」を整える仕組みに応用した。

「1000件の記録」から見えたアナログの価値
同案内所では、対面案内時に観光客が発した困りごとや目的を「お客様ノート」に克明に記録。その数は半年間で約1000件に達した。分析の結果、既存の旅行サイトやSNSでは解決できない「目的地への道順の不安」や「徒歩圏内の詳細情報不足」が浮き彫りになった。
これを受け、同所ではあえてアナログ媒体を活用した情報提供を強化。主要な国道や距離表示ではなく、「コンビニを左」といった視覚情報を優先した「目印だけの道案内図」や、徒歩10分圏内に特化した飲食・土産マップを作成した。情報を絞り込む設計が、滞在時間の延長や回遊性の向上に寄与している。
地域の「挑戦」を後押しするプラットフォーム

案内所の機能は情報提供に留まらない。店内には地域の若手事業者や新規参入者が開発した新商品の試飲・試食コーナーを設置。テストマーケティングの場として開放し、観光客の反応を直接事業者にフィードバックする体制を整えた。
また、地域住民と連携した「出船(いでふね)送り」の体験ツアーなど、伝統文化を再編集したコンテンツ開発にも取り組む。参加者からは「地域の魅力を再発見できた」との声が上がるなど、外からの観光客だけでなく、住民が地域資源を再認識する機会も創出している。
DMCとして「稼ぐ観光」への転換目指す
今後は、蓄積した一次情報を武器に、地域限定旅行業(DMC)としての活動を本格化させる。各エリアの観光コンテンツを統合し、プロモーションから販売までを一貫して担う計画だ。
熊谷夫妻は「被災地として支援される観光から、地域の価値を適切に編集して『稼ぐ観光』への転換を目指したい」と展望を語る。人口減少や観光消費の偏りといった地方都市共通の課題に対し、現場の一次情報を軸にした気仙沼モデルの構築が期待される。
寄稿者:熊谷綾(くまがい あや)東京山側DMC_AI*地域創生プロデューサー資格養成講座