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静岡・熱海で来訪者が約2倍に、じゃらんがAIエージェントで観光DXを実証

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リクルートの観光調査・研究機関「じゃらんリサーチセンター(JRC)」は2月26日、静岡県熱海市をフィールドに、生成AIを活用した「AIエージェント」の実装実証を行い、成果を発表した。インバウンド来訪者数が前年比約2倍に増加する成果を得た。観光庁の「観光DX推進による地域活性化モデル実証事業」として、熱海市役所、熱海観光局と協業で実施し、分析・検知・情報⽣成・共有を AI で連鎖させる仕組みを検証。市・DMO、旅⾏者、観光事業者の 3 者が有機的に連動する循環サイクルの構築を⽬指す。

背景:国内好調も、インバウンドは全体の約5%

平日需要創出と消費単価向上が課題に

年間約300万人が宿泊する国内有数の観光地・熱海市。国内旅行者数は順調に推移する一方で、インバウンド延べ宿泊客数は全体の約5%にとどまり、特に平日を中心とした需要創出や消費額向上が課題となっていた。しかし、観光データの収集範囲が限定的で体系的に整理・活用しきれていないこと、さらに分析や施策検討、振り返りに十分な人的リソースを割けないという構造的な問題があった。

AIで「分析・検知・生成・共有」を連鎖

市・DMO・事業者・旅行者をつなぐ循環モデル

本実証の特徴は、単なる業務効率化ではなく、「市・DMO」「旅行者」「観光事業者」の3者をAIで有機的に連動させる循環サイクルを構築した点にある。観光統計データ、Web行動データ、口コミ、問い合わせ情報などを横断的に統合し、以下4つを連携させた(サムネイル参照)。

  • 重要指標を可視化する「AIダッシュボード」
  • 変化の兆しを自動通知する「AI検知アラート」
  • 多言語情報を自動生成する「AI多言語ツール」
  • 現場活用型の「AIレポート作成ツール」

これにより、膨大なデータを常時確認しなくても、優先課題や次の打ち手が自動的に“気づき”として届く運営体制を実現した。

市・DMO:分析工数を最大90分の1に削減

AIダッシュボードと検知アラートの導入により、従来人手で行っていたデータ抽出・整理・分析作業の工数を大幅に削減。最大で90分の1にまで圧縮された。その結果、担当者は「分析作業」から解放され、施策実行や事業者との対話、戦略検討に時間を振り向けられるようになった。

旅行者:検索表示15.3倍、来訪者は約2倍に

旅行者向けには、単なる日本語コンテンツの翻訳ではなく、国・地域別の関心や行動特性を踏まえた多言語コンテンツを生成・発信。その結果、Google検索表示回数は15.3倍に増加し、平均掲載順位も大幅に向上20260226_7Tsuez_01。さらに、インバウンド強化対象国であるアメリカおよび台湾からの来訪者数は、前年比でおおむね約2倍に増加した。また、観光案内所や宿泊施設でQRコードリストを活用し、旅ナカの情報接触も強化。認知から現地体験まで一貫した情報接点を構築した。

観光事業者:レポート作成30分の1、接客工数約3割削減

観光案内所の来訪者データや問い合わせ内容、現場スタッフの気づきを統合し、AIが自動で要点整理する「AIレポート作成ツール」を導入。これにより、レポート作成時間は従来の約30分の1に短縮。さらにQRコード活用により、観光案内所での接客工数は約3割削減された。生成されたレポートは地域内の“共通言語”として機能し、宿泊・交通・観光関連事業者間の連携強化にも寄与した。

「AI導入」よりも重要だったこと

JRC研究員は、「AIを導入したこと自体よりも、限られた人材でもPDCAが回る状態を先につくれたことが重要」とコメント。業務プロセスを整理し、小規模な検証を重ねながら段階的にAIを組み込むことで、現場に無理なく定着。業務効率化とインバウンド来訪者増加を両立するモデルを提示した。

人手不足時代の「観光AI実装モデル」

インバウンド強化や人手不足は、多くの観光地が直面する共通課題だ。本実証は、AIを単なるツールではなく、地域経営の循環を支える“エージェント”として位置付けた点に意義がある。分析・検知・生成・共有を連鎖させる仕組みは、他地域でも応用可能な実装モデルとして示唆を与える。詳細は3月下旬、観光庁サイトで動画と成果報告書として公開予定だ。

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