㈱リクルートの飲食に関する調査・研究機関である『ホットペッパーグルメ外食総研』では、2026年1月に物価高で高まる消費者の節約志向の実態や外食や旅行に関する影響について、消費者アンケートを実施しました。今回は、その結果と観光業への影響を考察します。
物価高で節約志向が高まった人は50.2%と過半数。前年比では1.1ポイント増加、2年連続での増加
3圏域(首都圏・関西圏・東海圏)の消費者に、このところの物価高で節約意識の変化を尋ねたところ、「物価高の前から意識し、今はもっと意識している」「物価高の前は意識していないが、今は意識している」のいずれかを選択した「物価高により節約志向が高まった人」は計50.2%で、前年同月調査(以下、前年比)の49.1%より1.1ポイント増加。2年連続で増加して過半数となりました。「物価高により節約志向が高まった人」を性年代別に見ると、女性の全年代と60代男性で半数を超えています。また、どの年代でも、女性は男性より「物価高により節約志向が高まった人」が多い結果でした。
現在、特に節約を意識している出費の1位は「内食の費用」(自炊の食材等の費用)で43.8%、2位は「光熱・水道費」で35.6%、3位は「外食の費用」で35.5%と3年連続で同じ順位でした。「外食」「中食」「内食」のいずれかの出費を挙げた人を集計した「食費・計」は63.6%で、食費を中心とした節約志向が見られました。一方で、「旅行費用」については、「被服費」(25.9%)より低く、「美容費」(14.8%)とほぼ同等の14.7%の回答で、前年の同15.9%に比べ節約志向がやや緩みました。「旅行費用」について節約意向の回答割合が多かったのは60代男性(17.7%)や40代女性・50代男性(ともに15.8%)、逆に節約意向の回答割合が少なかったのは、20代男性(12.4%)、30代男性(13.4%)と若年男性でした。
「日常モード」と「非日常モード」。節約志向が高まるほど、“たまの贅沢”が商機となる
全体として消費者の節約志向は高まっていると言えますが、これは「外食」や「観光」にとっては、一概に悲観する状況ではありません。図は「たまに贅沢(ぜいたく)をする際の出費」を尋ねた結果ですが、トップは「外食」が圧倒的で53.4%、次いで「旅行費用」が23.7%となっています。「外食」は前年比では微減していますが、「旅行費用」は逆に微増しています。
消費モードには「日常モード」と「非日常モード」があり、同じ一人の消費者が両モードを行き来するのが普通です。「日常モード」で節約志向が強まるほど、「節約疲れ」から、「非日常モード」である「たまの贅沢」へのニーズが高まると考えられます。そのため、節約志向の高まりは、「外食」「観光」の分野では必ずしも悪者ではなく、商機を与えてくれる側面があることにも注目すべきでしょう。「たまの贅沢」である旅行中では、消費者は「非日常モード」にあるため、節約志向の高まりに応じた商品やサービスが必ずしもニーズに合っているとは言えません。
一例をあげると、「じゃらん観光国内宿泊旅行調査2025」において、国内宿泊旅行中の「昼食を食べる」費用の平均額は2,180円となっています。一方でホットペッパーグルメ外食総研による「有職者のランチ実態調査」では、同じ2025年調査で、「外食店内の食事」の場合、平均1,250円と、旅行中のほうが1.7倍以上の消費額となっています。「じゃらん観光国内宿泊旅行調査」は全国が対象で、有職者には限らないこと、「有職者のランチ実態調査」は対象が3圏域で有職者のみを集計していること、という違いはありますが、この差額や倍率等をいったんの「日常モード」と「非日常モード」の違いの根拠・目安と見ることもできるのではないかと思います。
筆者が温泉旅行をした時に都度都度残念に思うことは、湯上りに自動販売機で冷たい飲み物を購入しようとした際にナショナルブランドのドリンクしか品揃えがない旅館が多いことです。150円のナショナルブランドのお茶と300円の地産の高級茶や炭酸飲料があったら、「非日常モード」の消費者はどちらを選ぶでしょうか? これはビールであってもまったく同じことです。
節約志向が高まっている今だからこそ、観光業は「非日常」な体験を高付加価値・高単価で提供し、「たまの贅沢」のニーズを満たすことが、結果として消費者とのWIN-WINにつながるのではないでしょうか。
■調査概要と調査結果の詳細はこちら
・物価高で高まる節約志向の実態と外食での節約行動を調査(2026年1月実施)
https://www.hotpepper.jp/ggs/research/article/column/20260227
・じゃらん観光国内宿泊旅行調査
https://jrc.jalan.net/wp-content/uploads/2025/07/Jalasyuku2025Market_Trends.pdf
※旅行中の「昼食を食べる」費用について、直接の言及はございません。
・有職者のランチ実態調査
https://www.hotpepper.jp/ggs/research/article/column/20250418
寄稿者 稲垣昌宏(いながき・まさひろ)㈱リクルート じゃらんリサーチセンター研究員 兼 ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員