沖縄や西日本などを襲った台風7号は、空の便の欠航や新幹線の運休、遅延など大きな混乱をもたらした。各地の空港やJRの駅には多くの人があふれ、途方に暮れる姿が映し出された。仕事に間に合わないサラリーマン、泣きべそ顔の子供に言い聞かせている家族連れなど気の毒な光景だった。
そして、気になったのが外国人旅行者たちだった。自然災害だから止むを得ないとはいえ、災害状況や欠航、遅延などに関する情報がきちんと伝わったのか、彼らの心細さ、困惑を思うと胸が痛む。
自分が海外旅行中、非常事態に巻き込まれたら
彼らの中には、日本での観光を終え、成田空港や関西空港から帰国予定がある人たちもいたことだろう。空港までたどり着けないと、国際線の変更などの手続きが面倒なことは推してしるべしだ。
もし、自分が海外旅行をしていて、このような災害、あるいはテロによる交通閉鎖などに巻き込まれたらと思うとぞっとする。
思い返すと、2018年9月、台風21号が猛威を奮い、関西国際空港の連絡橋が通行止めになり、数千人が孤立した。空港ビルで不安そうな面持ちで座り込む多数の人のなかに、外国人の姿も数多く見られた。
まだ少ない多言語の災害情報
通勤途上で、電車の遅延などの場合、日本語での駅や車内の放送はある。「前を走る電車が遅れているため、運転時間の調整をする」だとか、「踏切に人が立ち入ったため、安全点検を行っており、終わり次第、発車する」といったたぐいのことだ。
しかし、次は〇〇駅に停車するという程度のアナウンスは英語で行われても、前述した簡単な遅延などアナウンスとなると、日本語のみのケースが多い。何が起きたのかと回りを見回す外国人に対し、筆者は説明したいが、少し複雑な内容となるとお手上げだ。
例えば、「電気系統に異常があったので、確認している。運転再開の見込みがないから、振替輸送を実施している」という説明、振替輸送とは何というのか。そこで話しかけるのをためらってしまう。
インバウンド復活、彼らの不安をなくす方策を
コロナ禍で中断していた訪日外国人観光客(インバウンド)が戻ってきている。日本政府観光局によると、今年7月はコロナ前の8割に迫る水準である約232万人に達したという。中国人の日本への団体旅行規制も解除され、日本国内では中国語があふれることだろう。
地方の観光地への回遊や富裕層対策など様々なインバウンド対策が打ち出されているが、災害などの危機対応時の外国人対応を忘れてはならない。