親子向け「気仙沼シャークアドベンチャー」第1弾を開催
宮城県気仙沼市で10月2日から4日までの2泊3日、親子向けの体験型ツアー「気仙沼シャークアドベンチャー」第1弾が開催された。
関東、北海道から4歳から9歳の子どもを含む6組の親子が参加。水揚げ量日本一を誇る気仙沼の「サメ」を入り口に、水産業の仕事や地域の暮らし、東日本大震災の伝承など、「海とともに生きるまち・気仙沼」を体験するプログラムとなった。
本ツアーは、5月に自らも探究学習やツアーガイドの実績をもち、地域創生を行う東京山側DMC、師岡龍也氏が気仙沼を訪れ、気仙沼DMCとともに地域を巡りながら造成、師岡氏が外部からの視点と経験を持ち込み、地域とともにプログラムを形にした。

水揚げから解体、加工まで 「サメ」を通して水産業を知る
ツアーは早朝の水揚げ見学からスタート。普段はなかなか入ることのできないサメの解体現場を訪れ、実際の仕事に触れた。水産業は、魚を獲る漁師や加工する事業者だけで成り立っているわけではない。加工した魚を運ぶための氷や発泡スチロールなど、さまざまな仕事や事業者が関わることで、一つの産業が成り立っている。子どもたちは、普段食卓で見る「魚」の裏側にある仕事や人の存在を、現場で体感した。
さらに、見るだけの見学で終わらせないのが今回のツアーの特徴だ。実際にサメの皮を剥ぎ、剥製づくりにも挑戦。東京ではなかなかできない体験に、子どもたちは真剣な表情で取り組んだ。
「答えを教えない」ことで、子どもたちの言葉が変わっていく
今回、ツアーを通して大人が徹底したのは、大人が先に答えを教えるのではなく、子どもたち自身が考え、自分の言葉で話す。そして、その言葉を大人が本気で受け止める。ツアーが進むにつれて子どもたちの表情や発言は少しずつ変化していった。「なぜだろう」「どうしてこうなっているんだろう」現場で実物を見て、触れて、人から話を聞くことで、子どもたちの中に新しい問いが生まれていく。
ツアーを運営する側にとっても、こうした子どもたちの変化そのものが、今回のプログラムの大きな成果となった。

海の楽しさだけではない 震災の記憶にも触れる
「気仙沼シャークアドベンチャー」で伝えたのは、海の楽しさや水産業だけではない。東日本大震災が発生した2011年には、今回参加した子どもたちはまだ生まれていなかった。だからこそ、震災を「過去の出来事」として知識だけで伝えるのではなく、気仙沼で実際に暮らす人たちの経験や、東日本大遺構・伝承館を通して、地震や津波の怖さ、震災からの復興について学ぶ時間を設けた。
海は、楽しさや美味しい食を与えてくれる一方で、ときに大きな災害をもたらす。その両面を知ることもまた、「海とともに生きる」ということを考える上で重要な体験となった。
地域だけではなく、外からの視点を掛け合わせる
人口減少が進む地方では、地域単独でできることには限りがある。一方で、地域には、その土地で暮らしているからこそ見える魅力や、外から見ると価値のある資源が数多く存在する。
今回のツアーでは、気仙沼DMCが持つ地域とのつながりや現場の知識に、東京山側DMCの師岡氏が外部からの視点を掛け合わせた。地域の人だけでは気づきにくい価値を外から見つけ、地域側が持つ人や場所、仕事、文化と組み合わせる。その積み重ねによって、新しい観光コンテンツが生まれていく。
第1弾には6組の親子が参加し、参加者にとっては、気仙沼の「サメ」をきっかけに、水産業、食、震災、そして地域で働く人々の姿に触れる2泊3日の旅となった。同ツアーの第2弾は10月9日から開催予定で、すでに満員となっている。
「サメ」という地域資源を入口に、子どもたちの探究心を育てながら、地域の仕事や暮らし、震災の記憶まで伝えていく。観光と教育、地域と外部人材を掛け合わせた「気仙沼シャークアドベンチャー」の今後の展開が注目される。
寄稿者 熊谷綾(くまがい・あや)気仙沼DMC KNEWS