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観光とタクシーは「本来おもしろい組み合わせ」 地域交通の未来|全国タク連理事長・新田慎二氏

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配車アプリの普及やインバウンドの回復、ライドシェアをめぐる論議、そして自動運転。タクシー業界を取り巻く環境は大きく変化している。全国のハイヤー・タクシー事業者を束ねる全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)は、こうした変化のなかで、地域交通と観光をどのように結び付けようとしているのか。全タク連の新田慎二理事長に、地域の二次交通や観光商品との連携、担い手確保の取り組みまでを聞いた。(聞き手=ツーリズムメディアサービス特任記者 西川佳克)

タクシー業界における観光の重要性を再認識

――全タク連の組織概要と主な活動についてお聞かせください。

全国ハイヤー・タクシー連合会、通称「全タク連」は、全国の法人タクシー事業者が加盟する各都道府県の協会を束ねる全国団体です。経営や技術、地域活性化、地方交通などの課題を各委員会で検討し、全国の協会に活動方針を示したり、関係機関に要望する活動を行っています。

普段は、ドライバーの確保やDXによる生産性向上、自動運転など、タクシー事業の維持や地域交通に関わる幅広い課題に取り組んでいます。観光については、地域や事業者によって需要に大きな差がありますが、地方の新たな需要を生み出すという意味でも、今後さらに重要になる分野だと考えています。

供給力は回復、しかし都市と地方で大きな格差

――観光地の二次交通として、タクシーはどのような役割を担えるとお考えですか。

タクシーの運転者はコロナで2割ほど減りましたが、その後は運賃改定を繰り返してドライバーの賃金を上げることなどで急速に回復しています。ただ、供給力の回復状況は地域によってさまざまです。大阪や沖縄は100%超、東京もかなり良い一方、地方部では7割程度にとどまるところもあります。

その背景の一つが、配車アプリの普及状況です。スマホアプリに対応する車両の割合は全国で72%ですが、東京は97%、大阪は92%に達する一方、一桁台の地域もあります。インバウンドではアプリ配車の利用が多いため、対応を進めることが需要の取り込みにつながります。

また、インバウンド需要の比率も地域によって大きく異なります。京都や東京などの観光都市では営業収入に占める割合が3割程度、場所によっては5割近くに達するケースもある一方、地方では数%から1割程度にとどまる地域もあり、地域間の差は大きいです。

タクシー業界の現状を伝える新田慎二理事長
タクシー業界の現状を伝える新田慎二理事長

「商品づくりの最初から、タクシーを入れてほしい」

――地方のタクシー事業の維持と、観光需要の開拓に向けた取り組みについてお聞かせください。

連合会は、ドライバーのなり手を増やす一方で、運行管理や経理、労務管理、点呼といったバックオフィス業務の効率化にも力を入れています。遠隔点呼や自動点呼などを活用し、限られた人手を安全管理や収入向上につながる業務へ振り向けていくことが重要です。地方では、1台1日あたりの営業収入である日車営収が都市部の半分以下にとどまる地域もあり、まずは事業を持続できる体制をつくる必要があります。

そのうえで、観光需要は地方のタクシー事業にとって新たな需要になり得ます。これまでDMOやDMCとの連携は十分とはいえず、タクシー会社側から商品をつくって売り込む形が中心でした。今後は、地域の観光資源や移動ニーズを踏まえながら、観光事業者とより早い段階から連携し、地域内周遊や滞在中の移動需要を取り込んでいくことが大切だと考えています。

言葉の壁には翻訳機や認定制度で対応

――訪日外国人旅行者への対応状況と、今後の課題についてお聞かせください。

言葉の壁への対応では、ポケトークのような翻訳機の車載導入が徐々に進んでいます。東京タクシーセンターによる外国語対応タクシーの研修・認定があり、修了レベルに応じた表示のホスピタリティタクシーが増えています。京都でも「フォーリンフレンドリータクシー」の取り組みが行われています。

地域通訳案内士の資格を持つ観光タクシーもありますが、東京の乗務員4〜5万人に対して数百人程度と、数は多くありません。一方、キャッシュレス対応は全国的にかなり進み、クレジットカードや交通系、QR決済などの端末搭載率は92%と高い水準です。

外国人ドライバーも増えており、特定技能の対象にもなっています。タクシーは歩合制のため、努力が収入につながりやすい業態です。インバウンド利用は一人あたりの売上が高い傾向にあり、外国人ドライバーは日本人の乗客からも好評なケースが多いです。

プラットフォーム型ライドシェアには「明確に反対」

――地域の交通空白への対応として議論されるライドシェアについて、全タク連の立場をお聞かせください。

プラットフォーム型のライドシェアには多くの問題があり、明確に反対しています。日本のハイヤー・タクシーは雇用契約で、事故時の賠償責任は会社が負います。しかし業務委託契約のライドシェアでは、プラットフォーマーはつなぐだけで、賠償責任は運転者に及ぶ。責任体系が大きな問題です。車両整備や運行管理、健康状態の点呼なども運転者任せになりがちです。

ライドシェアが求められる背景には、海外でそうしたサービスの車に乗った人が「なぜ日本にないのか」と感じることがあります。しかし、日本のタクシーもアプリ配車、キャッシュレス、ユニバーサルデザイン車両等への対応を進めています。その点はご理解いただきたい。地方でタクシーが足りないと言われる部分は、子育て中の女性などにスポットで活躍してもらいながら、供給力の確保に努めています。

また、クルーズ船寄港時等の需要集中時にタクシー会社の管理の下で一般ドライバーが運転する日本版ライドシェア、タクシー会社のないエリアにおける自治体等の公共主体が運行主体となり地域住民のドライバーを募り、タクシー会社が運行管理に協力する公共ライドシェアも各地で広がり、地域の足・観光の足を補完しています。

プラットフォーム型ライドシェアには反対の姿勢を示す新田慎二理事長
プラットフォーム型ライドシェアには反対の姿勢を示す新田慎二理事長

DX・自動運転が地方の担い手不足を緩和

――タクシー業界におけるDXの推進と自動運転の導入について、どのようにお考えですか。

DXは特に地方のタクシー事業者にとって重要な課題です。日車営収は東京で1台1日6万円超、地方では2万6千円やそれ以下の地域もあるなど、開きが大きい。紙中心の会社も残っており、DXで効率化して、限られた人手を安全管理や収入向上の戦略に振り向けていくことが重要です。

自動運転では、海外でレベル4の限定エリアでの無人運転が始まり、日本でも海外企業とタクシー会社が連携する動きが出ています。一方、ドライバーの介入を前提としながら運転操作の負担を大きく軽減する「レベル2プラスプラス」の実用化も見込まれています。コストを抑えて導入できれば、担い手の裾野を広げることや、保険料などの負担軽減にもつながる可能性があります。

将来的には、有人タクシーと無人の自動運転車が併存する形になると考えています。既存のドライバーが有人タクシーで活躍する一方、自動運転車両の監視や整備など、新たな仕事も生まれてくるでしょう。

女性・高齢者など、多様な担い手の活躍に期待

――ドライバーの確保に向け、どのような人材に期待されていますか。

新卒や第二新卒の若者、子育て中の方を含む女性、そして労働市場の動向によっては定年後の高齢者も期待しています。また、特定技能の在留資格を取得した外国人の方々も同じように期待しています。女性ドライバー比率は5.9%と低く、一般の女性労働者比率の4割程度と比べて低水準にとどまっています。タクシードライバーはライフステージに寄り添った働き方ができ、性別に関わらない待遇や、地域から喜ばれるやりがいがあります。女性比率を5.9%から10%に上げるだけでも、相当な数になります。

全国のタクシー会社の求人情報を地図から探せる「全国タクシーJOBステーション」というサイトも作りました。こうした担い手確保の取り組みを、観光とうまくつなげたいと考えています。

観光とタクシーの可能性を共に広げる

――最後に、観光業界や旅行業界にメッセージをお願いします。

観光におけるドアツードアの移動は、インバウンド消費の拡大や、地方のまだ十分に知られていない観光地への誘客という面でも、タクシーには大きな可能性があります。

一方で、タクシー・ハイヤー事業者だけでは、インバウンドにどのようなサービスが受け入れられるのか、どう商品化すればよいのかといった部分は十分ではありません。旅行会社やDMO、DMCなど観光事業者の皆さんには、ぜひタクシーの可能性に目を向けていただき、商品開発の最初の段階からタクシー会社を入れて、一緒に商品をつくっていただきたいです。

私たちも、新卒や第二新卒、子育て中の女性、定年後の方など、多様な人材の確保に取り組んでいます。女性ドライバーは現在5.9%ですが、10%まで増えるだけでも相当な人数になります。こうした新しい担い手を観光とうまく結び付けていきたいと考えています。

地元をよく知り、観光の知識を持つ認定ドライバーもいますので、そうした人材を抱えるタクシー会社と旅行会社やDMOが連携し、企画の段階から一緒に商品をつくることができれば、お互いにメリットのある関係がつくれるはずです。

新田慎二(にった・しんじ)=(一社)全国ハイヤー・タクシー連合会理事長。国土交通省で自動車行政などに携わり、自動車局総務課長などを歴任した。2019年には第一管区海上保安本部長を務めた。その後、全国ハイヤー・タクシー連合会の常務理事を経て、現在は理事長として、タクシー業界の人材確保やDX、自動運転、地域交通など幅広い課題に取り組んでいる。

全タク連の新田慎二理事長
全タク連の新田慎二理事長
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