国内ECでも越境ECでも、ECは視覚情報に頼るので、視覚から入る情報(商品説明、写真)をいかに丁寧に、かつ、分かりやすく見せるかということがとても重要になります。そこで、今回は第一印象を大きく左右させる「見た目」に関わる問題、すなわち「写真」について説明します。
第一印象はとても大事で、対人関係でも3秒で決まると言います。このたった3秒の第一印象で悪く受け取られると、それを払拭するのはとても大変です。ECでも同じです。パッと見の写真が暗かったり、解像度が低かったり、ボケていたり、何が写っているのかすぐに分からない場合、キレイに撮影されている商品ページの方に消費者は移ってしまいます。写真の提供を求めたときに、ガラケー(ガラパゴス携帯)で撮った写真で、しかも自分の影が映り込んでいるものを平気で渡す方がいますが、これは消費者には「やる気がない」と映ってしまい、まず相手にされないでしょう。
さらに、最近はウェブサイトのデザインは、予めプロのデザイナーが作ったデザインテンプレートを利用することが多いです。そのため、今日ではデザインテンプレートが指定する場所に写真をアップロードすれば良いだけとなっており、見た目のキレイなサイトを手に入れたければ、ウェブデザインについて学ぶよりも、写真の撮影テクニックを上げたほうが早道です。しかも、一眼レフなどの高価なカメラでなくても、今はスマホ(スマートフォン)のカメラで十分きれいな写真が撮影できます。
自社サイトと越境ECモールを利用する人は、ECモールの写真条件を優先する
越境ECを行う際には、自社越境ECサイトを保有して行う場合と、海外の越境ECモールに出品する場合と、この両方を併用する場合が考えられます。この詳細については、2023年8月(https://tms-media.jp/posts/8387/)、9月(https://tms-media.jp/posts/10839/)のコラムで説明していますので、ご参照下さい。
上述のように3パターンが考えられますが、越境ECモールを利用する場合は、写真については越境ECモールが求める条件に合わせて撮影、または加工することをお薦めします。なぜなら、自社越境ECサイトは御社の持ち物なので、どういう写真にしようと御社の自由ですが、越境ECモールの場合は、モール全体の統一感を重視しており、利用者に一定のルールを課しているからです。
ここでは、多くの事業者が利用していると思われる、以下の3つのモールのルールが記載されているページをリストアップします。
Amazon(アマゾン)
Amazonについては、アマゾンジャパンが日本語で資料を出していますので、こちらを参照することでも理解できます。
https://s3.amazonaws.com/JP_AM/su/12.pdf
Amazonは、ECモールの中では非常にルールが細かく厳しいので(商品がフレーム内に85%以上で写っていること、背景はRGB値が〈255, 255, 255〉の純白、タテかヨコのどちらか長辺が1001ピクセル以上など)、しっかり見ておく必要があります。
eBay(イーベイ)
https://www.ebay.com/help/policies/listing-policies/picture-policy?id=4370
eBayでは、撮影した写真に枠線を追加したり、購入を促進する文言(50%OFF!など)や透かしなど、あとから画像編集ソフトで手を加えることを禁止しています。また、画像の大きさはタテかヨコのどちらか長辺が500ピクセル以上あることが必要です。
Shopee(ショッピー)
https://seller.shopee.com.my/edu/article/370
Shopeeマレーシアのヘルプページですが、ここにあるルールで間違いないでしょう。最低500ピクセル以上、解像度は72dpi以上、フレームの70%を商品が占めること、正面と30度ずらした写真も入れることなど、ルールは細かいです。
これらのモールをすべて併用して行う場合は、Amazonのルールが一番厳しいので、Amazonルールに統一すると良いでしょう。Amazonを利用しない場合は、eBayルールのみに合わせる、Shopeeルールのみに合わせて問題ないと思います。
売るためのEC写真とは、目で訴える写真を撮ること
目は口ほどに物を言うという言葉があります。3秒で第一印象が決まるように、視覚情報は言葉を使わなくても雄弁に事実や真実を語ります。つまり、ただ単に商品を写したというものではなく、売れる写真というのは、写真が商品の特徴や物語を語りかけるような工夫がされたものと言えます。そこで、売れるサイトにするために最低限以下の5つは意識して撮影するようにしましょう。
1、特に重要な1枚目の写真は一貫したルールのもとで撮影する
繰り返しになりますが、1枚目の写真は商品の第一印象、並びにサイト全体の第一印象をも決めてしまうとても重要な写真になります。そのため、撮影者の気分次第で見た目がコロコロ変わってしまうのは、よくありません。そこで、御社なりの一貫した撮影ルールを決めておくと良いでしょう。そうすると、撮影者が変わっても企業イメージを維持できます。
例えば、
・常に同じ背景にする
・常に同じ角度から撮影する
・カメラの構え方を商品に応じてタテにしたりヨコにしたりせず、一定の方向にする
などです。こうすると、統一された写真でサイトが埋まることになり、パッと見で非常に見やすく、デザインも崩れないので、好印象を与えます。
2、商品のストーリーを伝える写真を撮る
これは、商品を売るための真髄といえます。写真で言葉以上を訴えます。今回は写真事例を説明していますので、商品詳細についてはいろいろなパターンが考えられます。例えば、以下の石鹸の写真ですが、こうしてレモンと一緒に撮影することで、
・レモンの香りがする石けん
・レモンの皮から抽出したアロマ成分配合
・レモンに含まれる美容成分配合
など、何かしらレモンと関係があることが伝えられます。このように言葉を使わなくても伝えられる方法があることを意識してください。
さらに、さまざまな角度からの写真もあると良いでしょう。海外では高級品や高級車でさえも、実物を確認しないで豊富な写真があれば買ってくれる消費者がいます。
また、消費者は商品の背景にある歴史や生産工程などのストーリーにも影響されますので、どこで作られているのか、誰が作っているのかが分かる写真があるのも良いでしょう。
どんなところで生産されているかを伝える写真も効果があります。
どんな人が作っているのかという光景もアップすると消費者は商品に親しみを覚えます。
3.利用シーンを撮影する
例えば、レトルト食品を販売するとします。
その時に、上記のようなレトルトパックのみを写した商品ページで果たして売れるでしょうか。商品タイトルや商品説明でいくら中身を説明してもイメージが湧きにくいです。
実際のテレビCMでも、レトルトの袋だけを15秒間映しているものなど見たことがありません。実際には、
調理風景や、
盛り付けた写真や
実際に食事をしている風景などを流して、見る人の食欲を誘うように作っています。ECでもこのように、商品パッケージの外観だけで済ませずに、実際に利用しているシーンをしっかりと撮って相手がイメージしやすいようにしましょう。
4.人を登場させる
ソーシャルメディアのプロフィール写真などで、海外では本人写真を使う人が多いのに対し、日本ではイラストのほか、ネットで拾ってきた好きなキャラクター画像、ペットの写真、風景写真を利用するなど、外見に自信がないという気持ちは(私もそうですので)分かりますが、やや自意識過剰な傾向があります(実際には、周りの人は本人が思っているほどそんなところは気にしていません)。したがって、この「人を登場させる」というのは、日本企業、及び日本人が一番苦手とする分野です。
しかし、この「人を登場させる」ことによって、コンバージョンレート(購買率)が上がることが証明されているとしたらどうしますか? それでも売り上げを犠牲にしますか?
実際に海外では商品やプロフィールなど、人の写っている写真とそうでないものとでA/Bテストした結果、95%も売上に差が出たことが証明されています。
(出典:Do Human Photos Increase Website Conversions?, by VWO Oct. 2023)
やはり、洋の東西を問わず、人間である以上、ヒューマンタッチ(人間味を感じさせる)のある方が好意的な判断に傾きやすいことを示しています。
そのため、できるだけ「人を登場させる写真」を入れることをおすすめします。ただし、私たちは芸能人やモデルではありませんから、カメラに向かってポースを決めたり笑顔を作ったりする必要はありません。「人間味を感じさせる」ことが目的ですから、人が写っていれさえすればいいのです。ですので、ハンドクリームなら人の手が写っているだけで十分ですし、アパレルを除く一般的な商品ならば、モデルとなる人の全身が写っていなくても良いということになります。海外では、商品にフォーカスした写真の奥の方に通行人がぼやけて写っているといった程度でも効果が違うと主張する人もいます。
笑顔である必要もなく、全身が写っていなくてもよく、少しボケていても構わないと言われます。
5.光を意識する
プロのフォトグラファーはカメラの性能よりも光の調節に気を使います。私たち人間は光そのものの色を意識することはありません(紫外線などは、人間の肉眼では見えません)。しかし、白熱灯から発される光、蛍光灯から発される光など、肉眼では分からなくてもデジタルカメラ(デジカメ)はしっかり捉えます。従って、光を意識することが重要です。
実際、肉眼では分かりませんが、白熱電球は写真を黄色く見せ、蛍光灯は写真を青く見せます。つまり黄色や青い色が光にはあります。写真を撮ると、写真が黄ばんでいたり、青っぽくなることがあります。これは肉眼では見えていない光の色がデジカメには見えていたということになります。そこで、デジカメにはオートホワイトバランス(AWB)と呼ばれる設定がありますので、これらの違いを補正して、ニュートラルな写真を撮りましょう。
伝統工芸品など、電気のない大昔からあるものは、太陽光のもとでよく見えるように作られていることが多いので、「昼間」の明かりがある内に撮るか、白熱灯と蛍光灯をミックスした環境で撮ると良いでしょう。これらの2つの光を合わせると、擬似的な太陽光が作れます。実際、伝統工芸に携わる人の中には、こうした擬似的太陽光を作って作成している人もいます。
また、商品に直接光を当てるとムラが出たり、影が強くなりすぎるので、間接照明を駆使するのが良いとされます。そこで間接照明でも非常にキレイに取れるように、以下のような光量の強い60ルーメン以上の電球などを白い壁に当てて部屋全体を明るくしてプロは撮影しています。
https://www.yodobashi.com/product/100000001003723931/
今回は、ECサイトや商品ページの第一印象を決める、商品写真について解説しました。次回は、売るための文章作成を、翻訳と説明内容の2回に分けて説明して参ります。
寄稿者 横川広幸(よこかわ・ひろゆき)ジェイグラブ㈱取締役