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二度三度来たくなる観光地作り~列車やバスの乗り方を動画で説明~

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 大分県の湯布院町湯平温泉にある小さな旅館「山城屋」が、コロナ禍を経験して見つけた大切な宝物。そして、これから益々グローバル化する観光業界の取り組むべき課題について回を分けてご紹介します。

公共交通機関の「利便性」

 前回では、「広域連携で魅力アップ」をテーマに、複数の観光施設間を周遊するモデルコースの動画についてご紹介しました。

地図を示して広域連携を図る
地図を示して広域連携を図る

 この動画の制作意図は、ひとつひとつの観光スポットを単独でPRするよりも、「点と点を線で結ぶ」ようにモデルコースを作り、広域的にPRをすることで地域全体の魅力度をよりアップさせようという考えです。

 しかしながら、実際に現地を訪れてみると、移動する列車や路線バスなどの公共交通機関の利用方法が日本人でも分かりづらいという課題がありました。

 考えてみれば、特定の観光地や施設のPR動画はYouTube(ユーチューブ)に山ほどアップされていますが、そこに至るまでの移動手段で公共交通機関の利用方法について詳しく説明されたものはなぜかあまり見当たりません。

 公共交通機関は、乗客である顧客の「安全・安心」を最優先に留意することは当然ですが、企業として今後の安定的な運営を目指す上では、顧客の(あえて乗客ではなく顧客と言います)「利便性」にも留意することが重要ではないかと思うのです。

 乗客も顧客です。一度「不便」と感じれば、その次はもう利用しないかも知れません。

 また、国内外の観光客が同じように「不便」と感じれば、二度目に行く旅行先の候補地に入る可能性は決して高くないでしょう。

 つまり、本連載のタイトル「二度三度来たくなる観光地作り」とは、程遠い結果となってしまうのです。

主要交通拠点から観光施設までの交通検証

 以前、ネット記事で拝見したのですが、北海道のあるバス会社では、利用者が減少して会社存続の危機に陥った際、バス沿線の各世帯へ「バスの乗り方マップ」を配布し、バス車内の案内放送も強化、高齢者の意見を取り入れて主なスーパーや病院をカバーする路線に切り替えるなどの努力をしたところ、40年ぶりに利用者が増加したという例があったそうです。

 つまり、顧客の「利便性」にしっかりと目を向けたからこそ、利用客が増加し、本業の健全化にも成功したといえるのです。

 そこで、今回の動画制作にあたり、この顧客の「利便性」の観点から、列車やバスなどの公共交通機関の利用方法について、より詳しくより具体的に解説することに取り組んでみました。

 その動画が、「別府駅や由布院駅等知名度の高い主要交通拠点から観光施設までアクセスできるルートを検証してビデオ撮影し、多言語で案内する。」というものです。

別府駅から城島高原まで

先ずご紹介する動画が、「城島高原アクセスガイド」です。

城島高原アクセスガイド
城島高原アクセスガイド

 「城島高原」は、湯布院、別府という大分でも指折りの観光地から車で約20分の場所にある、由布岳・鶴見岳を有する阿蘇くじゅう国立公園内のリゾート施設です。

 施設内には、パーク、ホテル、ゴルフクラブという3施設があり、小さなお子様連れのお客様、ゆっくり自然を楽しみたいグループの方、ゴルファーの方々と幅広い年齢層に人気の観光地です。

 この観光施設を訪れるための交通アクセスについて、主に路線バスを利用する場合のハウツー動画を日・英・中・韓の多言語で制作してみました。

 先ずは、別府駅前からのバスの乗車についてです。

別府駅からバス(乗り場)
別府駅からバス(乗り場)

 ご覧のように、バスの乗り場はもちろん、バスの番号や料金までご案内しています。

 また、路線バス特有のローカルルールである、「後ろから乗車、前から降車」といった乗車方法や、乗車する際には必ず入口で「整理券」を取らなければならないという、日本人でも他県の方にはわからないルールも具体的にご紹介しています。

バスの乗り方
バスの乗り方
整理券
整理券

 更に重要な点として、降りたい停留所で降車する際には、必ず座席横の壁にある「降車用ボタン」を押すことにも触れています。これを押し損ねると、うっかり通り過ぎてしまう可能性があるからです。

降車用ボタン
降車用ボタン

由布院駅から城島高原まで

 ここまで、別府駅から訪れる方法についてお伝えしましたが、もう一つの人気観光地「湯布院」の駅からの移動方法についてもご案内しています。

湯布院から城島高原
湯布院から城島高原

 こちらも、バスの番号や料金などを詳しくご紹介しており、大分県の二大観光地である別府湯布院の両方のエリアをカバーしています。

 こちらの動画は、施設を城島高原リゾートに限って制作してみましたが、同施設の公式ホームページにもリンクされている影響か、日本語版の動画は1,517回再生(2024年1月現在)と多くの観光客が参考にされていることがわかります。

 当初、外国人を対象に多言語版で制作したものが、結果的に日本国内からも多く観られていることがわかり、このようなアクセス情報の動画がどれだけ必要とされているかがあらためて浮き彫りとなりました。

YouTube おおいたの小さな旅 「城島高原アクセスガイド」

福岡県から大分県までのアクセス

 さて、大分県内の主要観光地からのアクセスはカバー出来たとして、顧客の市場を世界として捉えた場合、先ずは九州の玄関口である福岡県から大分県までのアクセス方法についてご案内する必要があります。

 これは、先ほどの動画の冒頭でも少し触れていますが、より詳しく、更に、大分県内の他の施設にも共通して利用できる動画が求められているからです。

 そこで次に制作した動画が、「福岡空港から大分へのアクセスガイド」です。

福岡から大分へ
福岡から大分へ

 福岡空港から大分までのアクセスは、大きく分けてバスと列車の二通りの方法があります。
 

福岡空港からバスを利用する場合

 先ず、バスを利用する場合ですが、こちらも別府・湯布院などの主要観光地へ空港から直通のバスを利用する場合と、その他の地域の場合、一旦博多駅まで地下鉄で移動し、その後高速バスへ乗り換える場合の二通りの方法があります。

福岡空港バスターミナル
福岡空港バスターミナル
博多駅行き地下鉄
博多駅行き地下鉄

 さらに、博多駅から博多バスターミナルへ移動する様子も動画で撮影し、乗り場を間違えることがないようにしました。

博多バスターミナル
博多バスターミナル
博多バスターミナル(乗り場)
博多バスターミナル(乗り場)

福岡空港から列車を利用する場合

 次に、福岡から大分へ特急列車を利用する場合は、海側を走るJR日豊本線と、内陸を走るJR久大本線の二通りの方法があります。

 目的地によってその選択は異なりますが、いずれのルートもご紹介しています。

JR日豊本線と久大本線
JR日豊本線と久大本線

 動画では、博多駅での特急列車の切符売り場や、乗り場までの道案内はもちろんですが、日豊本線特有の「スイッチバック」についても触れています。

スイッチバック
スイッチバック

 「スイッチバック」とは、路線の途中で列車の進行方向が変わることを言いますが、日豊本線では小倉駅で進行方向が変わります。

 このときに、乗客が自分で座席を反対方向へ回転させる必要があるのです。

 列車に乗り慣れている人ならともかく、初めてこの路線を体験する方は、よほど注意をしておかないと少し慌てることになります。

YouTube おおいたの小さな旅 「福岡空港から大分へのアクセスガイド」

顧客の立場に立った情報発信と受入れ環境の整備

 このような動画を制作してみてあらためて感じることは、日本人である私たちでさえ知らないことが多く、初めて日本を訪れる外国人からすれば、「乗り間違えないだろうか?」「予定時間に間に合うだろうか?」といった「不安の種」が山ほどあるのではないかということです。

 しかしながら、今回制作した動画のように詳しく具体的に説明することで、この「不安の種」を一つ一つ取り除くことができるとすれば、目的地に着くまでの「移動の時間」そのものも楽しめるのではないでしょうか。

 移動の「安心感」は旅の「満足感」に変わり、再び日本を訪れる際の「候補地」にもなりうるでしょう。

 逆に、「不安な思い」だけが印象に残れば、再び訪れる候補地とはなりえないでしょう。

 「二度三度来たくなる観光地作り」を目指そうと思えば、このような顧客の立場に立った情報発信と受入れ環境の課題がまだまだ山積していることを、私たちは今一度自覚する必要があるといえます。

寄稿者 二宮謙児(にのみや・けんじ)㈲山城屋代表 / (一社)インバウンド全国推進協議会会長

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