翌朝は8時過ぎにチェックアウトして、歩いて15分ほどの了仙寺に向かった。了仙寺の黒船ミュージアムで下田の開国の歴史を学ぼうと思う。展示のほか、シアターで数本の動画を上映しているそうで、こちらも楽しみ。博物館の短編動画はだいたい面白い。下田駅発で、水仙まつりが開かれている爪木崎行きの初便は10時10分発だから、開館時間の8時半に入館すれば、1時間半くらいはいられる。
本堂でお参りをしてから敷地内の博物館に行くと、水曜日で休館だった。なんでだろう、昨日が水曜日だと思っていて、時間に余裕があったのに、博物館をスキップして昭和湯に浸かってしまった。
残念な気持ちを抱えたまま、開いている喫茶店もなく下田駅まで来てしまったら、マクドナルドがあった。下田にマックがあるんだ。1時間ほどコーヒーを飲んで過ごした。
バスは本数が少ないけど、水仙まつりの期間は臨時便が出ている。ぎりぎりに乗り込むと、席はほとんど埋まっていた。このバスも年配客ばかりで老人会のバスのようだった。外国人もいなかった。
こんなにいいのに、どうして勧めないんだろう
終点の爪木崎までは20分くらい。だけど、今日は終点までは乗らない。手前の須崎海岸で降りて、爪木崎までハイキングする。せっかくの下田だ。昨日も今日も海づくしで、歩いて過ごす。
爪木崎までは3キロほど。標識に従って歩き始めて5分くらいで、唯一、迷った場所に出た。正面に山に入る坂道がって、右には10艘ほどの漁船が陸に上がっている港がある。ここは港に沿って駐車場のように見えるところを通って行くのが正しかった。
通りかかった地元の人に道を聞くと、山の道でも爪木崎には行ける。海沿いの遊歩道なら港を抜けて行けばいい。山の道もいいよ、海沿いだと津波が来たら逃げられないからと笑顔。能登半島地震があったばかりで、海の近くに住んでいる人は、家族や近所の人と津波の話をしているだろう。
港を過ぎて遊歩道の始まりには小さな橋が架かっていて、わくわくした。予報が外れて風が強かったけど、海沿いの道、岬を巻く山の道、森の中のまったく風が当たらない道、遊歩道は変化に富んでいて飽きない。道はよく整備されていて、分岐には標識があって迷う心配はなかった。
案内板に「細間の段」とあって、海に舞台のように平な場所が突き出ていた。15世紀に太田道灌が江戸城建築のために石を切り出した場所なんだそう。海は荒れていて、よくぞ、こんな場所からと思う。細間の段を過ぎると、海を挟んで爪木崎の白い灯台が見えた。
遊歩道の終点にはフェンスの間にチェーンのかかったゲートがあって、ちょっと驚いた。チェーンを外して入ると植物園のようなところで、水仙の群生地はすぐ近くだった。
本当によく整備された遊歩道なのに、観光案内所の人は勧めなかった。すごい坂で、山で、2時間半くらいかかるから、バスで爪木崎に行って、1時間ほど散策することを勧めた。実際には写真を撮ったり、森の中にたくさん小鳥がいるところで、鳴き声を聞いたりしながら、ゆっくり歩いて1時間半ほどだった。下田市のウェブサイトにも「歩程2時間40分ほど」と書いてあるのはなぜだろう。
風が強いのに花の匂いがした、300万本の群生地
今年の水仙は成人式の頃がピークだったそうだけど、ピークを見ていない者には十分だった。水仙を見下ろす丘に立った観光客の多くが「キレイだね」と声にだして写真を撮っていた。群生を歩くと、風は強かったけど、思いがけずに花の匂いがして嬉しかった。
水仙まつりの期間だけ営業している駐車場の食堂に入った。床はなくて、囲いの下の隙間から、ときどき風が吹き込んだ。
お勧めはサンマ料理のようで、サンマの蒲焼重と漁師汁、それから熱燗で帰りのバスの時間まで過ごした。(つづく)
下田水仙まつりは1月31日まで。このあと南伊豆では2月1日から「みなみの桜と菜の花まつり」(南伊豆町)、「河津桜まつり」(河津町)が始まる。