国土交通省関東運輸局は2月2日、宿場観光の「食」の開発から江戸料理の魅力を紹介する「千住宿江戸料理お披露目会」を東京都足立区の和食板垣で開いた。お披露目会は、江戸街道プロジェクトで初となる具体的なコンテンツ造成事業として、「江戸街道プロジェクト×江戸料理」の第1弾開発メニューとして、料理研究家で江戸料理研究家としても活躍する冬木れい氏(大きな竈主宰)が監修する「千住宿版江戸料理」を発表。江戸料理の活用による広域関東の宿場観光の魅力向上、地産地消の促進と言った地域振興を図る。
江戸街道プロジェクトは、広域関東(1都10県)の魅力を、日本橋を起点とする五街道と、その枝道として整備された水戸街道や成田街道等の脇往還を「江戸街道」という統一テーマでブランディングし、街道観光を推進することで地域を活性化する取り組み。関東運輸局が2022年度から推進している。「Tokyo & Around Tokyo」として展開している広域関東を「江戸街道」としてさらにブランディングすることで、効果的に国内外への発信、誘客を促進させ、地域が持続可能な観光で稼げる仕組み作りが行われている。
関東運輸局・岡村観光部長「江戸料理を通じて観光振興を」
お披露目会は、食や観光などの有識者を招きながら千住宿版江戸料理の開発メニューの紹介、意見交換を行う場として開催。日光街道の最初の宿場町である旧千住宿があった足立区をフィールドに、江戸料理研究家である冬木氏や、千住宿の地元料理店である和食板垣の協力のもと開発された千住宿版江戸料理が振る舞われた。会場となった板垣邸は、1938年(昭和13年)に建てられ、和風住宅の一部に洋風の応接間がついた、歴史を感じさせる住宅。板垣の前の道路は地元で「板垣道り」と呼ばれている。
冒頭、関東運輸局の岡村清二観光部長が「江戸料理は、江戸幕府が開府後に徳川家康公が町を作る中でファストフードとして成長させたもの。江戸料理自体の認知はまだ強くないが、江戸街道プロジェクトの事業を通じて宿場観光に欠かせない食を通じた観光振興にも取り組んでいく」とあいさつした。また、今後は江戸料理の認証制度の仕組みづくりを行っていく方針を示した。
料理を監修した冬木氏は「私は料理のベースを薬膳料理から始めた。江戸期には本草学が全盛期を迎え、効能やその本質を探る研究が行われていた。今でいう食の安心安全が本草学を通して江戸時代から普及されている。街道では、人の行き来や物流が流れて盛んになったが、その中で一つ一つの味が生まれている」と、江戸時代に発展した食文化を説明した。江戸料理については、「江戸料理は和食のルーツという言い方があるが、料理には江戸時代の産物や調味料が使われており大変面白い。作るのは意外に簡単で、大根や豆腐、卵、こんにゃく、ニンジンといった身近な食材で料理が仕立てられている。また、サービスのスタイルとして、食事を楽しむにあたり、体のコンディションを整えるものが1品目に置かれている」などと話した。今回の千住宿江戸料理については、千住宿らしさを盛り込みながら現代の人たちにも喜ばれる料理、構成を用意したことなどが紹介された。
お披露目会では、千住宿江戸料理をお品書きに沿って食材や料理への思いを紹介する動画の放映や、実食、意見交換などが行われた。参加者からは「参加前は、何かあっさりしたものかと想像していたが、思っていた以上に味がしっかりしていておいしかった。食は観光の柱になるもので、各街道で地域ならではの江戸料理が生まれれば地域のPR、起爆剤になる」「江戸の料理は、現在の京都の料理より歴史は深い。日本橋、銀座、築地、月島など各地で江戸を感じられる料理があるが、日本の食を再度世界にアピールするものとして江戸料理の活用は有効だ」「和食、江戸料理は日本ならではのコンテンツ。生の料理をさまざまな形で食べられるのは日本だけだ。インバウンドがおう盛になっているが、食が目的のリピーターは今後増えていくだろう」「江戸料理を新たなコンテンツとして活用できる可能性を大いに感じた。同事業のさらなるは発展を通じて、日本全国における食を使った観光振興の横展開につながることを期待している」「江戸料理は和食の基本のベースとなるものがいっぱい詰まっている。取り組みは、日本の食の底上げにもつながる」などの声が上がった。
「千住宿版江戸料理」メニュー(8品、提供順)
江戸街道プロジェクト 千住宿江戸料理お披露目会 出席者(敬称略)
中央区観光協会 事務局長 齊藤進氏▽鬼怒川グランドホテル夢の季 代表取締役社長 波木恵美氏▽クラブツーリズム 創造事業本部地域共創事業部長 樋山智彦氏▽PROPELLER PLANE 代表取締役社長 平澤和夫氏▽HitoBito Media(ジャパントラベル) メ―ガン・ヒ―ニー氏▽玉ひで 8代目店主 山田耕之亮氏▽関東運輸局 観光部長 岡村清二氏