HISが6月14日発表した2023年10月期第2四半期(2022年11月1日~2023年4月30日)の連結業績は、主力の海外旅行需要の回復によって、赤字額は大幅に改善したものの、売上高は1029億円(前年50%増)、営業損益34億円(前年281億円)、経常損益36億円(前年281億円)、純損益48億円(前年269億円)と営業利益、経常利益、純利益はいずれも赤字であった。
旅行事業とホテル事業が大きな牽引車、「ホテルは100軒まで伸ばしたい」と沢田最高顧問
旅行事業は、売上高797億円(同240%増)営業損益35億円(全より113億円の改善)となり、売上高の約8割を占める海外旅行事業は売上高698億円と好調に推移しているとともに国内旅行事業も全国旅行支援などの影響もあり、全体を押し上げた。一方、テーマパーク事業は、ハウステンボスの売却によって、大幅な減少となり、売上高12億円、営業損益が2億円の赤字となった。
次に、取締役最高顧問である沢田秀雄氏が「45軒まで拡大したホテルの数も将来100軒程度まで伸ばし、さらなる黒字額の拡大を生み出してくれるであろう」と語ったホテル事業は、売上高82億円(同130%増)、2019年の実績を超え黒字化された。また、九州産交グループは、売上高107億円(同25%増)営業利益1億円と、こちらも黒字化されている。しかし、エネルギー事業を中心とするその他旅行外事業は、売上高39億円と前年を大きく下回る結果となった。
「銀行からのコミットラインは未使用、資金繰り心配ない」と織田専務
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借入金が上昇傾向にあり自己資本比率が9.8%となった。資金繰りが危惧される中、「銀行からの支援であるコミットメントライン330億円については、未使用であり、今後も使用予定はなく、心配ない」と織田正幸専務取締役から強い言葉もあった。
決算発表を行った代表取締役社長の矢田素史氏によると「夏のピークである7~9月の予約状況は、コロナ禍前2019年の7割前後で推移しており、さらなる販売拡大施策を展開し、売り上げの維持拡大を目指していきたい」と発言する一方、コロナ禍において、人員削減してきた従業員不足に対しては、オペレーションへの対応を派遣や再雇用によって対応していきたいと語った。
「2023年通期黒字化を目指し、今後の取り組みを進め、2025年に過去水準に回復へ」と矢田社長
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海外旅行は、パスポート取得費用の無料化や早期の夏商戦の展開、キャンセルポリシーの短期化、ハワイへの送客拡大に注力していく。国内旅行は、かぞく旅行を強化、沖縄・北海道の集客強化に努め、売上高の拡大を目指す。今後、伸長していくであろう訪日旅行は、自治体との連携を強化するとともにFIT層の獲得を拡大する。また、法人営業も強化し、BPO事業や社員旅行の新たな取り組み、提案営業を推進する。
好調なホテル事業は、差別化コンテンツ(美容ブランド「ReFa」ルームなど)の全国横断展開による客室単価向上や海外エージェントや予約サイトへの営業強化によるインバウンド客の取り込みに注力し、さらなる売上高拡大を目指す。九州産交グループも、空港リムジンバスの充実によるバス事業のさらなる積み上げとサービスエリアや熊本空港などの商業施設への集客強化を進める。
以上のような施策を推進し、2025年には2019年の利益水準に戻し、経営の拡大・安定化を推進していく。なお、さまざまな外的環境の変化により、現時点での通期業績の見通しは、未定とした。