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「昭和喪失」 ~あと数年も経つと「遺産」となる~ そのような時代を迎える前に 第1章 東京都港区・浜松町~世界貿易センタービルディング~

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はじめに

  完成した、新・南館とモノレール駅

 2023年、今年は関東大震災から100年目を迎える。百年も経つと建物や自然、すべてのものが「遺産」と言われてもおかしくない。その当時、生きていた人々も、ほとんどが居なくなってしまう。

 また、2022年、昨年は終戦から77年目、終戦から77年前は明治維新、歴史の教科書に出てくる昔の話である。もう少しすると、昭和の時代も「遺産」と呼ばれるようになるだろう。

 最近、その昭和を代表するモノ・コトが消滅し始めている。記録・記憶が薄れる前に、画像に残しておきたいと感じるようになった。名付けて「昭和喪失」、共有すべき時間がやってきた。

 東京は、観光の最先端を進むべき場所である。「昭和喪失」というテーマは、その東京を彩ってきた、さまざまな産業遺産などを紹介していくものである。

 喪失する前に、「語り繋いで」いくために……

第1章 東京都港区・浜松町~世界貿易センタービルディング~

 1964年、前回の東京オリンピックが開催された年に東京商工会議所が中心となって、世界に広がる貿易立国を目指すために世界貿易センタービルディングと名付けられ、1970年に竣工した。京王プラザホテルが完成するまでの約1年間は、日本一の高さを誇っていた。

 数多くの貿易に関わる企業・団体が集まったこのビルは、地下3階地上40階建ての本館と地上5階建ての別館、その二つを囲むようにモノレールの浜松町駅が作られていた。最上階には展望台、その下にレストランと宴会場を有し、地下には中長距離バスのターミナルが設置される商業・交通・観光の要となっていた。

   かまぼこ型の屋根が東横線・旧渋谷駅を彷彿させる

 2013年に決定された再開発によって、コロナ禍の2021年に解体工事が始まり、コロナ禍が鎮静しつつある2023年、丸裸になった跡地に鉄塔だけで建っているモノレール駅の姿が見えるようになり、一つの時代が終わったと報道された。

 東京モノレールは、東京駅方面への延伸計画があった。ビルが顕在であった頃は、どうやって東京方面に延伸工事をするのであろうか、と思われていたが、今の姿を見ると、JR線の鉄路上にモノレールを延伸させることもたやすいと感じる。

周辺地域と一体となった一大ターミナルへ

 浜松町は、地下鉄大江戸線の開通によって、大門地区と浜松町駅が一体となり、古き飲食店も新しい建物に変化した。そして、竹芝地区の再開発に伴い、ペレストリアンデッキも出来上がり、最終的に駅に隣接する新しいビルの完成を待つだけとなった。既に新しい南館は竣工しており、2027年には、本館が完成予定である。大門から竹芝まで一体化された新・浜松町駅は、東京と品川の中間の一大ターミナルとなることであろう。

 路地裏の小さな間口のカウンターだけの居酒屋が立ち並ぶ風景から、路面店は無くなりビルテナントとして飲食店が入る。

 これもひとつの「昭和喪失」である。

(つづく)

寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨(かんこうじょうほうそうごうけんきゅうじょ むう) 代表

撮影・取材 2023年5月31日

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