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東京魅力倍増計画 台東区・上 観光の持続的発展を目指して

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 観光が産業として欠かせない存在となっている。コロナ禍がほぼ収束してから“リベンジ消費”の様相を見せ、有名な観光地は賑わっている一方、オーバーツーリズムや宿泊施設・交通機関の人手不足などの問題も山積している。これからの観光の在り方について、魅力的で多彩な観光コンテンツを抱える東京23区の観光戦略・戦術を第一線で活躍する担当者に聞いた。スタートは浅草や上野など人気の観光名所がある台東区を2回に分けてお届けする。文化産業観光部・観光課長の横倉亨さんと同課観光担当係長の江畑州恒さんが語った。

観光課長の横倉亨さん(右)と同課観光担当係長の江畑州恒さんが熱く語った

観光のプラス面を伸ばし、マイナス面を減ずるのが行政の使命


――国、地方とも観光を地域発展の重要な要素と位置付けています。台東区としての取り組みについてお聞かせください。

 コロナ禍以前の平成28年に台東区観光振興計画を策定しました。その後、感染が拡大し、計画に連続性はなくなりましたが、現在でも理念と目標は変わっていません。観光の持続的発展です。そして「本物に会えるまち」ということをずっと掲げてきています。

 オーバーツーリズムがこれだけ話題になる以前から、観光にはプラスとマイナスの両面があると、言われてきていると思います。台東区としては、マイナス面を減ずるよう努力をするとともに、プラス面を伸ばすような取り組みを続けています。

ナイトタイムエコノミーの新たな試み、浅草花街を知ってもらう

――具体的にはどのような施策ですか。

 訪れる方たちの分散化、回遊化です。エリア分散、時間分散です。前者は都市間連携もありうると考えています。後者は、日中だけではなく、朝であったりとか、夜であったりという時間分散もやってきています。台東区は早めに分散化に取り組んでいました。

新たな試みが、昨年12月に行った花街のマナーやルールを学ぶ講習です。観音様の裏にある浅草花街の料亭の協力を得て、観光の水先案内人である通訳案内士を対象に実施しました。まさにナイトタイムエコノミー、時間の分散化を図るのが狙いです。外国人の富裕層に対し、日本文化を伝えたいと考えたからです。芸者さんのパフォーマンスも見ていただいたり、料亭を視察していただいたりしました。受講者アンケートで、満足度は100%に達しました。

――とても興味深い企画ですね。私たち日本人も知らない世界です。そのほかにも教えていただけますか。

 民謡酒場をご紹介します。元々、民謡酒場は、その昔、集団就職で上京した人たち、東北などの地方出身の方がふるさとの民謡を聴けたり、歌えたりとかするお店で、当時はたくさんあったらしいのです。現在は、都内に3軒しかないうちの2軒が浅草にあります。ここがインバウンドに人気なのです。外国の方が来ると、その国の国歌などを津軽三味線で弾いてくれます。もちろん日本人でも楽しい時間を過ごせるので、そういった民謡酒場を紹介することで、台東区の夜も楽しんでいただきたいのです。

リニューアルした「TAITOおでかけナビ」

区民が満足できる観光政策を愚直に取り組む

――エリアと時間の分散化によってオーバーツーリズムは減らすことは可能でしょうか。

 区としても特定のエリア、特定の時間帯、季節への観光客の集中は避けたい考えていますが、、やれる手法は限られています。行政としては、情報発信に力を入れ、魅力的なコンテンツを散らしていく、マナー啓発を強化していく。こうしたことを愚直に続けていくしかない。これまでも実施したきましたが、今後もそういった政策を組み合わせながら対処していかざるを得ないだろうと考えます。区民と調和のとれた観光行政のために、課題を整理しています。

 住んでる方が満足して初めて観光っていうふうな形だと思ってます。具体的には、地域の人たちといろいろやり取りしています。「今年は人手がすごかったけど、どのような課題ありましたか」とうかがって、行政ができるところは可能な限り対策を講じます。また、国にもお伝えしながら、政策を進めていく形になればと思います。(下に続く) 浅草の画像は台東区提供

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