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地中海の真珠、カプリ島(南イタリア) イタリア発、最高のサマーギフト、急増する青の洞窟観光

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 地中海地域に点在する海洋リゾートのうち、今や世界第一級のリゾートに発展した南イタリアのカプリ島。2000年以上も前の欧州、初代ローマ皇帝になるオクタヴィアヌスがエジプト遠征の帰路に立ち寄った際、いたくこの島に魅了され、自己所有のイスキア島(ナポリ近郊)と引き換えにカプリ島を得て、バカンス期に滞在を繰り返したと伝わる。

 第2代ローマ皇帝・ティベリウス帝は、島の東側に本離宮を建立し、首都ローマの祝典や戦地での支援活動などを除き、カプリ島の離宮に常時滞在し、ローマ帝国全体の指揮を執ったと言われる。皇帝が青の洞窟で湯浴みをして寛いだという記録は、いまだに残る。

スェーデン医師アクセル・ムンテの別荘から見晴るかすカプリ島。遠方左にティヴェリウス帝の離宮跡を望む

 長くローマ人に愛されたカプリ島が、世界に第一級海洋リゾートとして知られるようになったのは、1885年(19世紀)から、スウェーデンの医師アクセル・ムンテが頻繁にこの島を訪れ、ローマ皇帝の離宮に対抗するかのように、島中央のアナカプリ地区の高台に広大な別荘や礼拝堂を建設して余暇を楽しんだことや、ドイツの旅行家が島の北西端の「青の洞窟」に何度も忍び寄り、その美しさをエッチング描きの挿絵入り旅行記を出版して、欧州一円で話題となった。

ソフィア・ローレンら欧州の富裕層が別荘を設ける

 やがて、20世紀の大戦後、発展の著しい欧州の裕福な階層がこぞってカプリ島にバカンスの為の別荘作りがブームになった。女優のソフィア・ローレンの豪奢な別荘も島の南側の一等地に建って観光名所になっていた。セレブの集うウンベルト1世広場のカフェやブランドショップが居並ぶカメレーレ通りは、観光客が特に集中し、カプリ島は、高級海洋リゾートの座を確かなものとした。

 
多くの観光客が集い、会話の花が咲く、ウンベルト1世広場のカフェの賑わい

オーバーツーリズム、冬のヴェネツィア、夏のカプリ島

 ここまでくると、欧州人のオーバーツーリズムは、冬のヴェネツィア、夏のカプリ島と定評が立つほど、バカンス期には一気に「我も我も!」とカプリ島詣でが21世紀になって始まった。多くは、念願の魅惑の「青の洞窟」観光を果たし、次いでフニクラーレ(登山電車)でウンベルト1世広場に登り、セレブの集まるブランド街のカメレーレ通りに遊び、ウンベルト1世広場周辺のカフェで大いに寛いだのち、慌てて夕刻のフェリーに飛び乗って最寄りの避暑地に帰って行くという。カプリ島弾丸観光が、現代のカプリ島避暑観光の合言葉になっている。

 だが、待てよ!カプリ島は本当にセレブが独占する島であり続けるであろうか?

青い海が映えるソローラ山頂からの絶景

来島者数制限やマイカー上陸禁止などを講じ、「世界の来訪者を待つ」

 南イタリア行政府は、20年も前から押し寄せる日帰りオーバーツーリズムの対策を打ってきた。カプリ島(島の住民人口は、1万2千人)の島外来訪者数を2万人までとする上陸客数の制限、マイカーの上陸禁止、20人以上のツアー客の上陸禁止などの対策を図るうえ、島中央のアナカプリ地区に十分な収容力のある一般ホテル、ホステル、民泊を整備し、島内循環バスを走らせるなど一般避暑観光客の受け入れに努めている。「カプリ島は世界の来訪者を待つ」姿勢を少しも崩していない。むしろ、島内の通年宿泊者数は年々増加している。

ソレントで前泊・後泊、賢いカプリ島観光を

 青の洞窟観光、精緻でクリーンな海洋大自然、欧州セレブの残した瀟洒な離宮・別荘など、カプリ島の魅力は果てしない。さあ、欧州人とともに、低廉かつ質の高い滞在型の海洋避暑観光に出かけよう!

スウェーデンの医師の邸宅から見下ろす街並み

 日本発のカプリ島避暑観光となると、最大の課題は、目的地への遠距離感。上手に欧州乗り継ぎ便を見つけても、その先、イタリア高速鉄道(レンフェ)や南イタリア郊外鉄道、さらには島に上陸用のフェリーなど、乗り継ぐ手間に加え、現下の超円安による日本人旅行者の経済的負担増を考えると、カプリ島への夢は遠のきそうになりがちだ。

燦燦と降り注ぐ地中海の陽光を楽しむ人々

 カプリ島目前の避暑観光地ソレントに宿泊することをカウントするとよい。アマルフィ海岸、ポジターノ、ポンペイなど魅力溢れる南イタリアの弾丸避暑観光と引き換えに、ソレントを前泊・後泊の前進基地に使い、本命のカプリ島に数日滞在して、歴史に磨き上げられた高級感溢れるカプリ島でビーチ・アクティヴィティやタウン・アクティヴィティに参加し、心行くまでリッチなバカンス(7-8月)を楽しむ旅は、人生の貴重なハイライトの1つになるだろう。

(2010年、2013年及び2016年の現地取材及び2023年の現地情報に依る)

 寄稿者 旅行作家 山田恒一郎 (やまだ・こういちろう)

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