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俯瞰するニッポン(その16) 北の都がキラキラと~札幌市藻岩山・大倉山~

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 大都市近郊に山が迫り、その山頂から俯瞰する景色は、素晴らしい観光コンテンツとなります。そして、数多くの人々が集まるところとなります。ここ札幌には、たくさんの俯瞰する景色が存在します。

 昨今、ナイトタイムエコノミーという言葉が、新たなコンテンツ作りの後押しとなっています。そのキラキラとする都市空間の光は、誰もが魅力的に感じるものです。

 札幌市は、(一社)夜景観光コンベンションビューローが認定する日本新三大夜景の一つです。北九州市、長崎市とともに、その夜景の姿は群を抜いた素晴らしさと言えます。

(日本新三大夜景) https://jptop3.yakeikentei.jp/

藻岩山~街の灯りが手に取るように・・・

 その代表的な認定地が、藻岩山(もいわやま)です。

 藻岩山は、札幌市中心部から南西約5kmに位置する標高531mの山です。山頂には、「もいわ山ロープウェイ」と「もーりすカー」で登ることができます。また、車では「藻岩山観光自動車道」(冬季休業)で中腹まで登り、「もーりすカー」に乗り換えます。

 アイヌ語で「インカルシペ」(いつも登って見張りをするところ)という意味。まさしく、アイヌにとっての聖地であり、尊い神の山です。

札幌市街地の夜景~藻岩山より~
札幌市街地の夜景~北側・藻岩山より~

 山頂展望台からは、石狩平野や石狩湾までを一望することができます。夜になると札幌市街の夜景が眼前に迫ってきます。函館市の函館山、小樽市の天狗山と並ぶ素晴らしい景観を見せます。

 「日本夜景遺産」「日本百名月」にも認定されています。そして、札幌市は2015年より「日本新三大夜景都市」に認定されています。

早々と観光地化、広域連携の象徴に

 1958年に自動車道とロープウェイは、同時に開業しました。2011年に山全体の観光施設リニューアルに伴い、現在の「ロープウェイ」「もーりすカー」が運行することになりました。

 また、山開き(6月1日)前日の5月31日が、その標高に符合します。それ故、近年は毎年5月31日を「もいわ山の日」として、数日間、イベントも催されています。

 同時に、桂由美さんが主催する「恋人の聖地」プロジェクトのサテライト認定を受けた場所でもあります。恋人の聖地は、138か所サテライト83か所が認定されている観光広域連携のひとつの形と言えます。

恋人の聖地~南京錠の後ろにキラキラと~
恋人の聖地~南京錠の後ろにキラキラと~

 展望台に南京錠をつなぐことができるスペースがあり、それぞれの想いを記した鍵が数多く並んでいるのが、ほのぼのとして、素敵です。

(恋人の聖地) https://www.seichi.net/

 単独観光地の誘客には、限界があります。「日本夜景遺産」や「恋人の聖地」など、日本全国の同一趣向の観光地が、同じベクトルで広域連携を推進する。これは、将来における地域振興のお手本になると思います。

大倉山~名もなき山が脚光を浴びる

 一方、大倉山(おおくらやま)は、札幌市中央区にあるスキージャンプ競技場です。宮の森ジャンプ競技場とともにナショナルトレーニングセンターになっています。大倉山はラージヒル、宮の森はノーマルヒルです。

 その歴史は、1928年に秩父宮雍仁親王が、建設を提唱したことに始まります。将来の冬季五輪開催を見据え、札幌に国際級大型ジャンプ台が必要とされました。そして、大倉喜七郎が私財を投じます。3年後、大倉土木(現・大成建設)が、ジャンプ台を完成させます。完成後、大倉喜七郎はジャンプ台を札幌市に寄贈します。

 その厚意に報いて「大倉シャンツェ」と命名されました。「シャンツェ」とはドイツ語で「ジャンプ台」という意味です。名前もなかった山は、「大倉山」と名づけられたのです。

レガシー拠点として・・・

 大倉山の設備は、サマージャンプやナイターも可能となっています。そのため、数多くの国内大会や国際大会が開催されています。また、札幌オリンピックのレガシー拠点として、ジャンプ台とその周辺は観光地になっています。

 そして、標高307mの展望ラウンジにリフトで上がると、札幌市街地や石狩平野、石狩湾を一望できます。また、ジャンプ台の下には、札幌オリンピックミュージアム、大倉山クリスタルハウスもあります。

 時折、オリンピックに出場した選手が練習している姿に遭遇することもあります。

大倉山ジャンプ台~その先には大通公園も見える~
大倉山ジャンプ台~その先には大通公園も見える~

 展望台からは、眼下に円山公園、そして、大通公園を正面に見ることができます。まるで、飛び立った後は、そのまま、大通公園まで飛行していきそうな錯覚に陥ります。

地域振興を成功させるのは・・・

 さて、藻岩山も大倉山も、その観光施設に携わる方々の地域愛を感じます。それは、観光のお客さまがやってくると積極的に会話を持ちます。そして、自分たちの宝物を説明してくれます。

 地域行政が努力すればよいという考え方ではなく、地域行政と住民が一緒になって、観光誘客を推進する。このことが、一番大切なことだと考えます。

 昨今、地方都市においては、地域全体が協働して町興しをしている事例が増えています。しかし、大都市圏においては、無関心であることが少なくありません。地域住民が積極的に関与することこそ、より良い地域に成長させる原動力ではないでしょうか。

満月が札幌市街地を照らす~藻岩山山頂にて~
満月が札幌市街地を照らす~藻岩山山頂にて~

寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨/代表

(これまでの寄稿は、こちらから)https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=181

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