観光・旅行に関連した話題は、日本全国、都市部から地方まで場所を問わずに熱を帯びている。その中でも盛り上がりがより感じられるエリアはどこだろうか。大阪・関西万博の開催が来年に迫った大阪、インバウンド需要が加熱する京都、首都であり話題に事欠かない東京とその周辺、震災復興と新幹線の延伸が話題の北陸などが思い浮かぶかもしれない。
こうしてみると、観光・旅行については西日本エリアでの話題が多い印象だ。しかし、観光・旅行の業界で仕事を探している人にとっては、東日本にも、特に北海道には大きなチャンスがある。シニアが仕事を探す場合はなおさらだ。
もちろん、インバウンドの話題でニセコがたびたび登場するように、外国人観光客にとって北海道が人気の観光エリアであることも、観光・旅行の仕事を探すシニアのチャンスの背景だが、それだけではない。
今回は、シニア専門の転職支援サービスを提供している私から、なぜ、シニアの観光・旅行産業への転職では東日本や北海道がチャンスなのか、また、具体的にどのような職種にチャンスがあるのかを紹介したい。
リゾート地や調理の求人が圧倒的に多い北海道
実際に、北海道のシニア向け求人では観光・旅行に関連した求人が圧倒的に多いといったデータが取れている。
私たちが運営するシニア専門求人サイト「シニアジョブ」に掲載された北海道の求人を調べたところ、「リゾート地」の求人が5.6%あり、これは全国の1.2%、東京都の0.1%と比べると圧倒的に高い割合だ。
また、求人件数が多い職種にも、もっとも多いものが25.8%の「調理」、5番目に4.6%の「ホールスタッフ」がランクインしており、これらも全国や東京都に比べて大幅に高い割合となっている。もちろん、これらの中には観光に関係のない求人も含まれているが、ホテル・旅館の求人がかなり多く含まれている。
この調査結果は、「北海道のシニア向け求人は、定年のない求人やリゾート地の求人が多い傾向」と題したプレスリリースで9月に公開したもので、北海道ではその他、60代以上を歓迎する求人や定年のない求人なども、全国や東京都に比べて多いことがわかっており、その意味でもシニアの転職・再就職にチャンスがある。
シニア向けの「リゾート地」の求人が他のエリアよりも北海道で多いことについては、8月に公開したプレスリリース「シニア向け「リゾート地」の求人、多いのは北海道・東北の観光業の正社員求人」でも触れており、この時は東北も加えた「北海道・東北」が28.7%と2番目に多い「東海」の19.9%を大きく引き離した。またやはり、「リゾート地」の求人で多い職種は「販売・飲食・接客・サービス」で、割合は69.4%とこれまた2番目の「警備・設備・清掃」の15.1%から差が開いた。
このほか、5月に公開した、シニア専門求人メディア「シニアジョブ」で観光・旅行関連の職種の内定を3月・4月に得たシニアの調査に関するプレスリリースでも、内定者は全員東日本在住だった結果が出ている。
万博の影響で若手が集まらずシニア求人が増えた?
観光地は全国各地にあり、冒頭のように京都や大阪、金沢など、人気・注目のエリアは西日本にも多くあるが、なぜ、シニア向けの観光・旅行関連の求人は、北海道でこれほど多く出ているのだろうか。
これについては私たちも確実な答えを持っていない。しかし、仮説としては「リゾート地」求人の調査リリースの考察で述べているものがある。大阪・関西万博によって、注目や予算が大阪・関西方面に集まったことで、観光・旅行業界の人材も若手を中心に大阪・関西に集中し、逆に北海道や東日本でのシニア人材への期待が高まったというものだ。
もちろん、この仮説を実証するデータはなく、特に若手人材の動向などは、私たちはシニア専門に支援を提供しているために手元では調べようがない。ただ、シニアに関しては、観光・旅行関連ほど顕著ではないが、建設業などでもわずかに類似した傾向が見られるため、まったくの当てずっぽうということではない。
ともあれ、北海道で観光・旅行関連のシニア向け求人が豊富であるのは事実である。調理の仕事は経験が重視されるが、調理だけでなくホールやフロアの求人も増えており、こちらは専門性が調理よりは求められにくい。
また、「リゾート地」の求人が多いためか、あるいは北海道の過酷な環境からか、調査結果として北海道では「寮・社宅あり」のシニア向け求人も11.8%と、全国や東京都に比べてかなり高い割合となっている。シニアは子どもが独立するなどして意外と身軽な人も多く、実際に単身赴任するシニアの例も多くある。調理の仕事の経験者や、観光・旅行関連の仕事を目指したいシニアは、北海道で働く選択肢を検討してみてもよいだろう。
観光・旅行関連の仕事以外でも、北海道のシニア向け求人には、全国的に求人数の多い介護や清掃の仕事だけでなく、栄養士、マンション管理、営業などの求人が全国よりも大幅に高い割合で掲載されている特色がある。
求人は採用が決まってしまうと無くなることが多いので、観光・旅行関連に限らずすべての職種でタイミングが重要となる。今回の北海道で観光・旅行のシニア向け求人が多い事実のように、意外なトレンドもあるため、シニアの仕事探しでは幅広い視点や条件を心掛けたい。
寄稿者 中島康恵(なかじま・やすよし)㈱シニアジョブ代表取締役