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東京再発見 第46章 下町の活気ある商店街には~墨田区京島・下町人情キラキラ橘商店街~

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 昨今、大地震や洪水などの天災地変に際して、大きな被害を受ける可能性がある場所が特定されている。ここ墨田区京島は、木密地域であるため、火災の延焼で大きな被害を受けると言われている。

 すぐそこに東京スカイツリーが建った。そして、木造住宅との対比は、新旧のそろい踏みのように思われる。しかし、普段着の生活は、活気に満ちており、数少ない昔ながらの商店街に命を吹き込んでいる。

名前の謂れは、映画館

商店街の入り口、看板がキラキラ!
商店街の入り口、看板がキラキラ!

 ここ向島橘銀座商店街は、墨田区の京成電鉄曳舟駅から明治通りの南東約500mに位置する。そして、その長さは、南東に伸びる約450mの商店街だ。通称「キラキラ橘商店街」と呼ばれている。商店街のすべて電柱に「キラキラ橘」と表示された色鮮やかな看板が設えられている。まさしく「キラキラ」である。また、惣菜・乾物等の商店が多いのも特色だ。墨田区内42の商店街の中でもトップクラスに位置付けられる。

 商店街の名称は、1931年に映画館の橘館がこの通りにできたことに由来する。そのため、戦前から「橘館通り」として地域住民に親しまれてきた。しかし、戦時中は、物資の不足や戦災等で商業活動も中断した。

 一方、戦後になると周辺の人口の増加とともに、商店街も戦前をしのぐ勢いで復興・発展した。そして、1960年に「商業協同組合」を設立する。

乗り遅れた再開発からシフトチェンジ

 しかし、都市再開発計画によって、同じ墨田区の錦糸町や江東区亀戸が副都心として整備される。その結果、京島付近から大規模な人口流出が起こり、徐々に衰退していった。 そこで、組合は、商店街を地域の特性である「下町コミュニティ」の核として改めて位置づけた。そして、近代化を進めることによって再生を図るべく、新たな商店街への脱皮にチャレンジする。年号が「平成」に変わった1989年のことである。

古くからのスーパーマーケットは閉店
古くからのスーパーマーケットは閉店

 商店街の町並みは総じてレトロチックに構成し、戦前の町並みを彷彿とさせることとした。そのため、商店街内には、コンビニエンスストアは、設置されていない。

 残念ながら、古くからの地場のスーパーマーケットは廃業となった。しかし、大手のチェーンスーパーが2軒も進出している。そして、古くからの個人経営の店舗は、店主等の高齢化により、店を閉めるところが増えている。

 一方、他所から若者たちが集まってくるようになった。彼らが、レトロチックな店舗を生かしつつ、新たな商店街へと生まれ変わるように切磋琢磨しているのだ。

戦前の姿が残っていることを逆手にとって

 さて、前述のように、商店街の位置する京島地区は、木造建築の長屋が多い。そして、狭く入り組んだ路地が存在する「木密地域」だ。東京大空襲の被害を免れたため、現在も道が曲がりくねった場所が多い。

 また、商店街の新たなスタートは、商店街の道路のカラー舗装化であった。それは、「より地域の方に愛される商店街になる」ためであった。愛称を募集し、最終的に「下町人情キラキラ橘商店街」に決定するに至っている。

商店街は、町の人々を守るコミュニティ

細いメインストリートを若者と老人が交わる
細いメインストリートを若者と老人が交わる

 東京の下町は、町工場を多く保有し、その近くに商店街が形成された。職住接近のため、従業員の家族が利用する商店街は、いずこも活気があった。しかし、国際競争や工場拡大・郊外移転などの影響で、町工場は減少していく。そのため、さまざまな環境変化に伴い廃業に追い込まれる店舗も多く、商店街も減少の一途をたどった。

 以前は物を置けば売れた時代だった。しかし、今は、消費購入する場所だけでは、繁栄は訪れない。そのため、地域コミュニティの担い手としての機能を有するようになった。

 例えば、商店街は、通学路としても指定されている。そのため、店主たちは、子供たちと毎日挨拶を交わす。また、防災防犯訓練の一環として、イベントを開催する事例も出てきている。

 町の将来を似合う子供たちの安全・安心を商店街が作り出す。そのことによって、若年層の町への定着率を高めることができる。そして、町への愛着が生まれ、次世代の担い手になっていくのである。

観光との親和性、未来は明るい

 先日、墨田区観光協会の役員の方々と意見交換をする場を得た。

テレビドラマで利用された駄菓子屋さん
テレビドラマで利用された駄菓子屋さん

 フィルムコミッションを積極的に活用して、映画やドラマのロケ地を新たに創り上げる。そのことによって、これまで訪れたことのないお客様を呼び寄せる取り組みを進めている。ここキラキラ橘商店街も現役の駄菓子屋を利用した事例が、人気を博しているようだ。

 地域密着の商店街を、ただ単に消費する場所に終わらせずに、楽しく訪れてもらう場所に育てていくことこそ、これからの町づくりには、大切なことではないだろうか。そう考えると、観光との親和性は、深堀できるとても魅力のあるものだ。

 新たな仕掛けに町を活用できる、と思った瞬間であった。

商店街の日常生活を・・・

布団屋さんもある
布団屋さんもある!その隣は、テレビのロケで使われたお店だ
和菓子屋さんも本屋さんもある
和菓子屋さんも本屋さんもある
総菜屋さんが、とても多い
総菜屋さんが、とても多い
手作り感満載のパン屋さん
手作り感満載のパン屋さん
町中のアンティークな喫茶店
町中のアンティークな喫茶店

(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8

取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長

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