柴(薪)、米、油、塩、味噌、酢、茶は食を重視する中国人の暮らしの中で欠かせない7つであり、とりわけお茶は大切でかつ身近な存在だ。日本語には「日常茶飯事」という言い回しがあるが、中国語には「日常发生」という表現があり、異曲同工の趣がある。
故郷には茶にまつわる蘇東坡の茶詩も伝わる
筆者は茶と縁があり、故郷の四川省眉山市彭山区の江口古鎮は世界で最初のお茶の販売市場であり、故郷の文豪、蘇東坡も「古来佳銘は佳人の如く」、「火をつけ、新たなお茶を煎れるとしましょう」などの人に知られた茶詩を残している。故郷から仕事先の日本に帰るたびに、故郷のお茶を持ってきて、異国の地で故郷のお茶を淹れて飲むお茶は格別の味がする。日本はお茶の生産、消費大国で、2001年に初めて日本に来た時に人生で初めてウーロン茶を飲んだことを覚えている。
それまで、ずっと内陸の四川に暮らしていた。もちろん四川にも銘茶があり、蒙山茶や、峨眉山の竹葉青など四川の銘茶は中国の別の土地ではなかなか飲めない貴重なものであった。
そんなお茶にこだわりを持つ筆者にとって、静岡県が外国人記者を招いてくれたのは喜びだった。茶の都を訪れて、世界お茶まつり(2016年)を取材し、日本茶の栽培やお茶に関する静岡の人々の思いなど、日本の茶文化を肌で感じた。
遣唐使が禅とともに伝えたお茶
愛飲されている飲み物は、中国最南部、雲南省の山奥に発祥している。約2000年前の中国の文献にお茶に関する記載がある。四川から長江沿いに中国南方、中原地方に広がる中華文明の影響を受けた日本は、平安時代から唐に留学した僧永忠、最澄、空海などがお茶を飲む風習を日本に持ち帰った。
宋の時代になると、日本はまた新しいお茶を飲む文化を迎えた。宋から帰国した栄西は禅宗を日本に伝えるとともに、お茶を飲む習慣が禅宗の普及とともに各地の寺院に広まってい。栄西著『叡茶養生記』にはお茶の製法や薬用効果が記載されている。鎌倉将軍をはじめとする武士層ではお茶を飲む文化が流行していた。
茶室に腰をかがめて入る意味を知り、お茶文化を体感
現在では、日本の茶道、抹茶は中国で高い知名度を有し、茶道や書道、生け花、香道などとともに日本の伝統文化の代表となっている。今回はお茶まつりの会場、静岡県島田市のお茶の郷博物館(現在は「ふじのくに茶の都ミュージアム」に改称)の茶室で、外国特派員たちが日本の茶道文化を体験した。
茶室は狭く、入室は腰をかがめて頭を下げることが作法だ。入室者が分け隔てないことを意味し、平等、謙遜、調和のとれたお茶の雰囲気を醸し出しすものという。武士は、茶室に入る前に刀は茶室の外に置き、お互いに率直に接していることを表し、茶室内から窓の外の日本庭園を眺め、お茶を飲みながら園の風景を見て、庭の前に木が枯れ、道が起伏して人生を悟るといった具合だ。お茶と禅意は、互いによく合い、人と自然、調和が一体となっている。
第6回世界お茶まつりは有名な日本茶の都静岡で開催され、茶文化を伝承し、五感でお茶を味わい、茶の文化を世界に伝えることを目的としている。この博物館では日本茶だけでなく、世界の茶文化を体験し、お茶を通じて知識を知ることができる。今回の 大会にはホスト日本のほか、中国、トルコ、モンゴル、ブラジル、インドなどの関係者が参加し、茶を媒介として、各国の人々の相互理解と交流を促進した。