東京都は11月7日、障害者等向けの自然体験型観光プログラムの運営ノウハウを提供する「トレッキング運営体験ワークショップ」を東京・新宿の新宿スポーツ公園・戸山公園で行った。東京都内の旅行業者、体験型観光提供事業者など観光関係者13人が参加。障害者や高齢者等が、東京の自然を安心して楽しめる観光を推進する。
障害者が健常者と同じように自然を体験を
ワークショップは、令和6年度誰もが楽しめる自然体験型観光推進事業の一環として、2部制で開かれた。冒頭、東京都観光部受入環境課の山本貴志統括課長代理が「障害者が健常者と同じように自然を体験できる取り組みを推進していく」とあいさつした。
第1部では、講師にプランニングネットワークユニバーサルツーリズムアドバイザーでオフィス・フチの渕山知弘代表を迎えて座学セミナーを実施。「先進的なアクセシブル・ツーリズムの取り組み紹介」をテーマに、肢体不自由や視覚障害、聴覚障害を持った障害者や高齢者が旅を楽しめることを目指すアクセシブル・ツーリズムについてや、アクセシブル・ツーリズムの先進事例を紹介した。
渕山氏は、アクセシブルツーリズムについて、障害者や高齢者など、移動やコミュニケーションにおける困難さに直面する人々のニーズに応えながら、誰もが旅を楽しめることを目指すものであると解説。先進事例として、高知県で行われている体験プランを披露した。「イルカと泳ごう」「ヨットに乗ろう」「グラスボートで海中散歩in柏島」「カツオ藁焼き体験in黒潮一番館」「クリスタルカヤック体験」「海上筏釣りにチャレンジ」といった事例を動画を交えて解説した。また、課題解決の手法として、階段を使わないアプローチや施設の活用方針の変更などの案を示した。渕山氏は障害者における旅の可能性について、「旅をあきらめてはならない。『行きたい』を『行ける』に、『やりたい』を『できる』に変えられる」と強調した。
第2部は、実体験セミナーを実施。車いすの操作方法を教えるほか、アイマスクを使った視覚障害者手引き体験、JINRIKIの使い方のレクチャーなどを行った。参加者からは、「目が見えないことの怖さは想像以上だった」「人と人の信頼関係が大事」「車いすの使い方が分かるだけで、移動できる場所は大きく変わる」といった声が上がった。
このほか、東京都が今年9月19、20日に新島で車いす使用者を招いて実施したバリアフリービーチでの体験会の様子を紹介。体験会で行われた湘南バリアフリーツアーセンターの榊原正博代表による座学セミナーや、ビーチチェア、車いすけん引装置「JINRIKI」でのサポート方法などの体験研修、障害当事者とのバリアフリービーチ体験の成果を報告した。「サポートする側も一緒に楽しむ、楽しめることがポイントとなる」と渕山氏。
今後、11月22日には払沢の滝・東京都檜原都民の森でモニターツアーが行われる予定。
このはか、東京都では、障害者や高齢者などが、東京の自然を安心して楽しめる観光プログラムを提供する事業者などに対して、プログラムの実施に必要となる備品などの導入経費の一部を補助する補助金(補助率5分の4、補助限度額200万円)を用意している。
取材 ツーリズムメディアサービス編集部