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【レポート】東京都、「新島バリアフリービーチ運営体験ワークショップ」を開催

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 東京都はこのほど、「誰もが楽しめる自然体験型観光」を推進する一環として、新島(東京都新島村)で「新島バリアフリービーチ運営体験ワークショップ」を開催した。バリアフリービーチの設営と運営に取り組むNPO法人湘南バリアフリーツアーセンターの理事長・榊原正博氏を講師に迎え、2日間にわたって実際の設営と運営について研修を行った。

 ワークショップには東京都が募集した体験モニターツアーに応募した障害者3人とその介助者、旅行会社社員やインバウンドツアー関係者、また、都内で自然体験型学習を提供している事業者など、総勢15人が参加した。以下、ワークショップの様子を紹介する。

障害者が安心できる場所づくり

まず障害についてしることから

 会場は、東京から高速船で約2時間半の新島港船客待合所および黒根海岸。1日目は室内ホールでの座学に加え、草地で車椅子体験などを行い、2日目には黒根海岸でバリアフリービーチの設営と体験会が実施された。

 初日の座学では、まず東京都産業労働局観光部の早川貴之課長がワークショップの趣旨を説明した。「障害者も健常者と共に東京の自然を楽しんでほしい。自然そのものはバリアフリー化できないが、専用の器具や適切なサポートがあれば多くの障害者に自然を楽しんでもらえる。今回のワークショップが新しい受け入れプログラムや旅行商品の開発につながることを期待している。都では今年度から『誰もが楽しめる自然体験型観光推進事業補助金』制度を設けたので、ぜひ活用してほしい」と呼びかけた。

 この補助制度は、自然体験型観光を提供する事業者や観光協会などを対象に、障害者向け備品の購入費や既存備品の改造費用を最大200万円まで補助するもの。

 続いて、榊原氏が「障害について知る」をテーマに講演し、「海は眺めるものではなく、入って遊ぶもの。バリアフリービーチを一緒に体験しましょう」と参加者に呼び掛けた。榊原氏は障害の種類や接し方、障害者とバリアの関係について説明し、「バリアフリーの本質は、障害のある人が安心できる場所を提供すること」と語った。

 医療機器のエンジニアだった榊原氏は研修で訪れたスウェーデンで、障害者がビーチでリラックスして過ごす姿を目にし、バリアフリービーチを日本でも実現しようと決意。モビマットという不整地対応のマットを導入し、神奈川県鎌倉市材木座での活動を皮切りに、全国50カ所以上でバリアフリービーチを運営している。

参加者は交互に車椅子などを体験した

 座学ではさらに、海水浴の介助ポイントや、駐車場から海岸への移動、シャワー・更衣室・トイレの合理的配慮の重要性について解説が行われ、実際に使用する水陸両用車椅子「モビチェア」や補助装置「JINRIKI」なども紹介された。参加者はその後、屋外での使用方法を体験した。

波打ち際までモビマットを敷く

バリアフリービーチ体験

 2日目はバリアフリービーチの設営から始まった。設営では、ロール状のモビマットを護岸から波打ち際まで敷いて、車椅子が走行しやすい道を作成。準備が整ったら、参加者は介助者と共に自分の車椅子やモビチェアを使って波打ち際、さらには海に入る体験をした。潮流や波の状態を確認しつつ、障害者1人に対して3人以上のサポート体制で行われたこの体験会は約2時間続いた。

ファットタイヤで砂地でも走行性は高い

 参加者の中には海に入ることで笑顔を見せる人も多く、サポートにあたった介助者も笑顔を浮かべ、和やかな雰囲気が広がっていた。バリアフリービーチは、障害者だけでなくサポートをする人も笑顔にするビーチだと感じさせるひとときだった。

モビチェアでそのまま海中へ

 2日間のワークショップを終え、大手旅行会社の若手社員は「上司の勧めで参加したが、非常に勉強になった。具体的な商品化には至っていないが、こうしたプログラムがあれば障害者向けツアーにも組み込めると感じた」と話した。自然体験型学習の事業者は「川でのプログラムにも応用できないか関心がある」と述べ、またインバウンドツアーを企画する参加者も「障害を持つ訪日旅行者向けに提案できるのではと感じた」と、それぞれの立場から今回の取り組みに手応えを感じた様子だった。

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