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せっかく仕事で出かけるのだから、目的のない町に泊まってみたい!~新たな出張スタイル?~<ずらし泊>の楽しみ

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ずらし旅とは?

 コロナ禍に登場したJR東海さんの<ずらし旅>はご存じでしょうか?

 ずらし旅とは、<旅する時間や場所、行動をずらしてみる。すると、今まで知らなかったことに気づく「発見」のある楽しい旅を作ることができます。新しいやり方であなただけの旅をはじめませんか。>と表現されています。

 おそらく、当初は、「人との接触を避けながら旅をしよう」という提案だったのだと思うのです。しかし、感染も落ち着いた今では<往復新幹線・宿泊+選べる体験クーポンをセットにしたお得なダイナミックパッケージ>など、まさしく、「旅の形を少しずらすことでこんなにお得になります」という旅の商品として人気のようです。

 そして、私はずらし旅ならぬ、<ずらし泊>を楽しんでいます。

ずらし泊をする理由①  同じホテルに泊まりたくない

 私の場合、仕事先が全国の温泉地とあって、遠方への出張が少なくありません。そのため、通常は仕事先の旅館、ホテルにそのまま泊めていただくことになります。温泉と旅館料理を楽しめるなんとも贅沢な出張です。

 ところが、休館日や休業しての改装の際の打ち合わせ、また、新規施設の場合は宿泊するところがありません。その結果、近隣の宿を仕事先が準備してくださるのがほとんどです。しかし、この1年は<ずらし泊>を楽しませていただくこととなりました。

JR西日本の特急「くろしお」号
JR西日本の特急「くろしお」号

 その仕事先は、和歌山県の紀伊勝浦にあります。遠路時間をかけて、JR西日本「くろしお」号で新大阪ルートか、JR東海「南紀」号で名古屋ルートのどちらかで向かいます。ゆとりがあれば、紀伊勝浦まで行って「日本一の絶景露天風呂に浸かりマグロに舌鼓」と行きたいところです。しかし、なかなか仕事が追い付かず、また、決して近くはない紀伊勝浦が最終目的地となると前泊・後泊することがほとんどです。

 仕事柄、なるべく違う宿泊施設を体験するようにしているため、これまで、名古屋駅周辺ホテルのほとんどに宿泊してきました。男性と違い、朝は支度に時間もかかるため、かなりぎりぎりになります。そのため、名古屋市内で別の駅に移動して宿泊するというは考えません。こうなると、紀伊勝浦までの路線、「特急の停まるどこかの駅のホテルに泊まってみようかな」などと思うようになりました。

ずらし泊をする理由②  宿泊単価の高騰

 もうひとつの理由が、昨今の宿泊単価の高騰です。

 名古屋は、東京・大阪・京都・福岡などのビジネスホテルと比較すると一番お手頃ではあります。しかし、それでも驚くような宿泊単価となっています。滞在9時間のために10㎡の部屋に2万円弱も払う気にはなれません。

 先週は、スケジュールの関係でクロークの便利さなどから、やむなく、東京駅で宿泊しました。しかし、2名で1泊10万円、今回が3回目の宿泊先でしたが、以前の倍近くになっています。

 一方、高山市内のホテルでも、先月の週末はシングルユース18,000円が最安値でした。もうどこに泊まれば良いのだろうと頭を抱える方も多いのではないでしょうか。

 ところが、少し宿泊地をずらしてみると驚くほど宿泊単価が安くなります。

目的の無い町のファンになっていく

 さて、名古屋から紀伊勝浦に向かう特急が停まる駅といえば、桑名・四日市・津・松坂あたり。また、新大阪からであれば、和歌山・海南・紀伊田辺でしょうか。

 どの町もとても魅力的で、宿泊単価も驚くほど安い。

 到着して、1時間ほど夕食に出かけホテルで眠り、起床してまた30分程度朝食、というタイトな出張では「あたりはずれ」も当然あります。しかし、毎回トータルでは、その町の魅力に気づかされ、町のファンになっています。

ずらし泊の楽しみ・・・それは、自分だけの満足探し!

おにぎりはもちろんだが豚汁が美味しかった紀伊田辺の朝食
おにぎりはもちろんだが
豚汁が美味しかった紀伊田辺の朝食

 たとえば、紀伊田辺駅。ここで下車し、この町に泊まろうと決めたきっかけは、和歌山市に次いで2番目の繁華街という「味光路(あじこうじ)」に行ってみたかったからです。

 駅前の狭いエリアですが、居酒屋やバー、そして、ディープなスナックが密集しているスポットです。ぐるぐる歩いても、それほど広くはないエリアに、ほどよく寂れた魅力的な店がたくさん。

 ダメもとで人気の居酒屋に行ってみたら、表にいたおじいちゃんが話しかけてくれて仲良くなりました。そうしていたら、なんと、引退したご店主。

 予約なしで店内に入れていただいたけたのは、とても良い思い出です。

 そして、松阪駅。ビジネスホテルに泊まることに飽き、旅館を探しました。すると、築220年の老舗旅館が駅からの徒歩圏内にありました。バストイレが共同ではありますが、1泊2食で驚くような宿泊単価です。夕食でいただいた松阪牛のおいしかったこと、工夫された朝食、何より趣きのある建物にとても癒されました。

 桑名駅で「はまぐり」をいただき、岐阜駅で「たんめん」、津では「ぎょうざ」と、その土地の美味しいものを探すのも、また、楽しいもの。「歴史は?」「産業は?」とその町のことを一通り調べて向かうのは、電車移動中の楽しみのひとつです。

 知的好奇心も、おなかも満足する<ずらし泊>、しばらく続きそうです。

松坂の鯛屋旅館
松坂の鯛屋旅館

(寄稿者、住さんの運営する「すみやのHP」は、こちらです)

 https://www.sumiya-villa.com/

(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=25

寄稿者 住百合子(すみ・ゆりこ) AO STYLE インテリアデザイナー・コーディネーター

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