JTBは 2015年1月16日、パートナーシップイベント「JTB Group New Year Partnership Meeting 2025」と東京・新宿の京王プラザホテルで開いた。宿泊施設や交通事業者、観光団体など同社グループがツーリズム業界をはじめとする事業パートナーなど約400人が参加。同社の山北栄二郎社長が登壇して同社のトピックスを話すほか、経済ジャーナリストで作家の渋谷和宏氏を招いた特別講演、パネルディスカッションなどが行われた。山北社長は、25年のテーマとして「人」を挙げ、全社方針として「未来から現在(いま)を創る~ビジネスモデル変革の加速~」を発表し、①実感価値創出企業になる②挑戦し変革し続ける企業文化にする③社会からリスペクトされる企業になる―の3つの方針を掲げた。
山北社長「交流がなくては人間は豊かな社会を送れない」
山北社長によるプレゼンテーションでは、JTBが旅行業から「交流創造事業」へと定義をしなおしたことを説明。「デジタル基盤で人の力を活かし、地域や組織の価値を共創し、人流や情報流、物流を生み出すことで、人と人、人と地域、人と組織の出会いと共感をサステナブルにつくり続ける」と強調した。また、目標として、①人を満たす②社会を発展させる③豊かさを守る―の3つを挙げた。
25年の経済の見通しについては、世界で政権交代や地政学リスクがあるなど、先行きの不透明感が拭えない中ではあるが、交流の未来に関する洞察として、①パーソナライズ②ウェルビーイング③小集団化④ボーダレスーの4つを生活者・消費者変容のキートレンドとして挙げた。
今後は、創客・誘客の取り組みへの重点地域として、国内旅行は25年度下期に沖縄、26年度上期は東北、下期は九州を挙げた。海外旅行に関しては、「READY! ヨーロッパキャンペーン」を推進するほか、25年内に東京・新宿東口に海外旅行専門店をオープンすることを紹介した。メジャーリーグベースボール(MLB)国際パートナーシップを生かした商品開発・販売も強化する。
CRM強化に向けたデジタルな顧客基盤の整備の現状についても説明。My JTB登録者数は累計1500万人を突破し、申し込み者に占める登録者率が87%であること、JTBアプリインストール数が累計250万回であることを明らかにした。
訪日旅行については、周遊・分散を促す新たな人流を創出すること、大阪・関西万博については、運営業務やチケット販売、万博を契機とした人流の創出に取り組む。
観光DXでつくる、旅の未来のカタチについては、AIビジネスとヒューマンならではの力を掛け合わせ、散在する旅の魅力や潜在的なニーズを魅力的なプランに瞬時にマッチングすることを目指す。
最後に、山北社長は「交流がなくては人間は豊かな社会を送れない。今後も交流を続け、地球を舞台に進めていく」と会場に宣言した。
地域の価値の競争に向けては、ツーリズム事業戦略・地域交流事業において、発地で誘客拡大のマーケティング、着地で地域の強みを生かした観光地経営など発着連動による交流人口の拡大、持続可能な地域づくりへの貢献を図る。エリアソリューション事業戦略では、地域・エリアを一つのテーマパークのようにつなげて価値を高めるなど、多様な事業者との共創でエリア・地域の持続的な発展を追求し続ける。
このほか、交流創造を浸透させるための企画として、「第1回JTB交流創造キャンバス」を実施し、364件の応募作品から2部門6点の受賞作品を決定したことの紹介などを行った。
消費や顧客生涯価値の最大化を
基調講演では、渋谷氏が「日本経済の行方 輝く地域・輝く人の条件とは」をテーマに日本経済の行方、地域輝く存在になるにはどうしたら良いかを語った。日本経済の行方のキーワードには、「セルフケア」「時間」を挙げ、増加傾向にある健康分野における消費や顧客生涯価値(ライフタームバリュー)の最大化を目指す必要性を説いた。
パネルディスカッションは、パネリストとしてJTBの森口浩紀常務・エリアソリューション事業部長、Near Meの井上太輝CMO、渋谷氏、モデレーターとしてJTBの風口悦子執行役員ブランlディング・マーケティング担当広報担当(CMO)が登壇。「ツーリズム産業において、持続的な成長を続けていくために、どのような魅力的な地域、人を作っていけば良いか」をテーマに、ライドシェアの可能性、AIマッチングサービスの活用、「20年先の小豆島を創るプロジェクト」といったJTBエリアソリューション事業の取り組みの紹介などが行われた。
ラーケーション推進への参画を
イベント終了後の懇親会では、JTBの髙橋広行会長が、今後進めるべき観光業の取り組みとして、学びを目的として休暇を楽しむ「ラーケーション」を挙げ、参加者にも参画を呼び掛けた。
取材 ツーリズムメディアサービス編集部