目黒川の両側は、細い路地が通る。夕暮れともなると赤い行灯が桜の桃色を照らす。そして、その儚さが美しく、今では都内を代表する桜の名所になっている。時期になると、最寄りの中目黒駅は、改札を出るのも一苦労するほど、花見客が桜花を目当てにやって来る。
今風のレストランが建ち並び、昼も夜もこの時期は人が多い。そのため、周辺住民は、車で外出できなくなるという。目黒川に架かるほとんどの橋は交通量が激しい。しかし、警備の人を配置しても、観光客はお構いなしに路上でカメラを構える。そして、夜になると、お酒も入って傍若無人な行動をとる。それほど、ここ目黒川の桜花は目線が近い。それ故、この素晴らしい景観を維持保全することは、大切なことだ。
目黒川の桜を安心して愛でるために

四半世紀前まで、目黒川は汚い川と言われていた。しかし、地域住民の方々の努力によって、きれいな川に生まれ変わった。その一方、「旅の恥は掻き捨て」というように、観光地のほとんどが「ごみ問題」に頭を悩ませている。
日本を代表する尾瀬湿原では、「ごみを持ち帰る」観光が作られている。長い時間がかかる取り組みであるが、訪れる人々は、地域の方々が作り上げた努力を守らねばならない。まさしく、住む人と訪れる人との認識が合わなければ、オーバーツーリズムを生む温床となる。それ故、お互いを理解すれば、いずこも素晴らしい観光地、コンテンツに成長していくものだ。
目黒川の桜は、本当に素晴らしい。しかし、それ以上に楽しい街に成長してしまった。そのため、観光対応が後手に回っていることも事実だ。経済効果のすそ野が広い観光関連業、我が国の明るい未来創造には、お互いを思いやる姿勢が必要だと感じる。
(2013.03.26.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長