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観光地域づくり法人(DMO)と天王洲アイル#12 ~天王洲アイルの観光資源の見直しとコラボレーション~

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 一般社団法人天王洲・キャナルサイド活性化協会は、観光地域づくり法人(DMO)として、天王洲アイルの観光促進に取り組んでいます。前回は、天王洲アイルを観光地として確立するために地域や、日本各地の観光地との連携について述べました。今回は、天王洲アイルにおける観光資源の見直しについて考察し、着地型観光地の確立に向けた施策をさらに深掘りしていきます。特に10年前から実施しているプロジェクションマッピングを取り上げます。

天王洲運河のプロジェクションマッピング(2016年)
天王洲運河のプロジェクションマッピング(2016年)

天王洲運河のプロジェクションマッピング

 天王洲運河は、東京都から運河ルネッサンス推進地区に指定されている天王洲アイルを囲む長さ約1km、幅100m程の運河です。天王洲水門と目黒川水門が設置され、水面が安定し親水性の高いボードウォークも整備された美しい景観です。 

 2016年春、パナソニックグループの協力を得て実施されたプロジェクションマッピングは、対岸100メートル先の建物に映像を投影する実証実験として行われました。オフホワイト色の壁面は、黄金比(5:8)に近い比率で、窓が少なく、スクリーンとしては好条件の環境。最新鋭のプロジェクターを使って投影された映像は、対岸の巨大な壁面を鮮やかに彩り、その映像が水面に反射することで、さらに美しい水辺の景観を作り出しました。この投影を見守る観客から大きな歓声と拍手を受け、実証実験は成功を収めました。

 またその夏には、水辺空間の魅力を発信する「天王洲キャナルフェス夏 2016」を開催。天王洲運河のプロジェクションマッピングが初めて来場者に向けて披露されました。 

 当時、プロジェクションマッピングはまだ一般的ではなく、観客は巨大な映像に圧倒されました。以来、天王洲のプロジェクションマッピングは、年4回開催される天王洲キャナルフェスの定番イベントとなり、映画上映を中心に、天王洲の水辺を季節ごとに彩る風物詩となっています。

天王洲・キャナルアートモーメント2019 (台船ライブと3面プロジェクションマッピング)
天王洲・キャナルアートモーメント2019 (台船ライブと3面プロジェクションマッピング)

プロジェクションマッピングによるライブ演出の実現 

 2019年には、内閣官房(東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局)の委託で、天王洲運河を舞台に「天王洲・キャナルアートモーメント2019」を開催。天王洲運河上に係留された台船の舞台を囲み、ボードウォーク・係留台船・屋形船に観覧席が設けられました。

 和太鼓・ダンスパフォーマンス・音楽ライブとシンクロナイズされたプロジェクションマッピングの演出は、天王洲運河を熱気と迫力に満ちた空間へと変貌させました。大型3面スクリーンに投影された映像は、迫力あるパノラマ演出だけでなく、ライブパフォーマンスを引き立て、観客に大きな感動を与えることに。これにより、東京オリンピック・パラリンピックに来場する国内外の観覧客に向けて、東京の水辺の魅力を発信するだけでなく、「日本文化とアートの発信と体験」を醸成することができました。

天王洲運河 縦列3面プロジェクションマッピング(2025年)。
対岸建物壁(左)、水上施設帆 (中)、背面建物壁面
天王洲運河 縦列3面プロジェクションマッピング(2025年)。
対岸建物壁(左)、水上施設帆 (中)、背面建物壁面

天王洲運河のプロジェクションマッピングを再認識 

 2025年2月には、天王洲アイルの屋内イベントスペースで開催された「動き出す浮世絵展 TOKYO」とのコラボレーション企画で、天王洲運河両岸や水上施設の帆に、葛飾北斎の浮世絵をモチーフにしたデジタルアニメーション映像が投影されるスピンオフイベントを行いました。このプロジェクションマッピングは、浮世絵の名作をテーマにした3面の縦列に映像を投影することで、観覧者に没入型の体験を提供する新たな取り組みとなりました。さらに、水上施設の船上では、最先端の技術を駆使した高速追従マッピングや透明スクリーンによる和太鼓演奏が行われ、プロジェクションマッピング技術の先進性も披露されました。

天王洲運河のマッピングとライトアップ (左)、目黒川冬のさくらクルーズ
天王洲運河のマッピングとライトアップ (左)、目黒川冬のさくらクルーズ

観光資源の連携によるスケールメリット

 天王洲運河では、過去10年間にわたり定期的にプロジェクションマッピングが投影され、住民やオフィスワーカーにとって身近な存在となっています。天王洲運河のプロジェクションマッピングで映画を見ることは、イベントとして広く認識されていますが、観光コンテンツとしての認識はありませんでした。

 静かで光の少ない天王洲運河でのプロジェクションマッピングは、まちの中にありながら、美しい映像を実現できる特別な場所となっています。「ここでしかできない体験」が観光の醍醐味であるならば、天王洲運河のプロジェクションマッピングは、他の場所では実現できない素晴らしい映像体験を提供する観光スポットとなります。 

 例えば、天王洲運河を河口とする目黒川では、春にお花見が楽しめ、冬には桜のイルミネーションが施され、幻想的な空間が広がります。天王洲運河のプロジェクションマッピングと目黒川の冬のさくらを連携させることで、大きな観光資源となり、より多くの観光客に楽しんでもらえる観光地とすることもできます。

 当協会は、天王洲アイルの観光資源の見直しと磨き上げに取り組むだけでなく、近隣の観光資源とコラボレーションする仕掛けを担う観光地域づくり法人(DMO)としての使命を果たしていきたいと考えています。

※アイキャッチは、「水辺とアートの街」 天王洲運河

寄稿者 三宅康之(みやけ・やすゆき) (一社)天王洲・キャナルサイド活性化協会 / 会長

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