今回は、映像撮影のロケによる経済効果についてご説明したいと思います。さまざまな効果が見込めるロケですが、実際にロケを受け入れると「どの位の経済効果があるのか」関西大学大学院会計研究科・宮本勝浩教授の『大阪における映画のロケーションの経済効果』(2012年5月・大阪観光局提出資料)を基にご説明をしたいと思います。
まず、直接的経済効果【撮影隊の宿泊費・食事代・交通費・備品購入費等】と間接的経済効果【ロケの広告宣伝費用・宣伝効果による観光客誘致(含む消費)】の2種類に大別します。すると、2011年の大阪府における経済波及効果での直接的経済効果は158億4,932万円。間接的経済効果は28億6,100万円となります。また、雇用創出人員は2,170人という試算でした。
以上は、大阪府への年間効果ですが、2012年大阪フィルム・カウンシルが手掛けていたロケ誘致作品で『黄金を抱いて翔べ・FLY WITH THE GOLD』( 監督:井筒和幸)があり、この作品では大阪拠点での撮影協力をいたしました。その作品での経済効果について引用したいと思います。
「大阪におけるロケーション誘致戦略調査」(2012年3月・58ページより引用)
【撮影規模】
ロケ日数:35日、ロケ人員(スタッフ):60人、ロケ人員(キャスト):30人
宿泊経費:900万円、食事経費:530万円、移動経費:100万円
制作関連経費・地元大阪の制作者(社)への委託費:3,000万円、地元大阪の機材利用費:1,000万円
という報告があります。総額では5,530万円ですので、直接効果だけでもやはり高額になっていることがうかがえます。このような映画をはじめとした映像コンテンツには地域に大きな経済効果をもたらします。同時に「映画撮影場所めぐりツアー」や観光スポットとして、撮影後の経済効果を考えるとロケ誘致の重要性がとても高いものとなります。また、誘致に際しては、専門知識・部署も必要とされることがお分かりいただけると思います。
色々な理由でロケ地誘致が失敗した事例を
他方、大阪以外でもロケ誘致を難しくする要素として、地域の理解不足・行政の協力・助成金不足などがありました。残念な事例ですが、実際にロケ誘致を逃した例も2つ挙げます。
① 『ミッションインポッシブル/デッドレコニング』(主演:トム・クルーズ)
当初、日本での撮影を検討されていました。しかし、助成金と撮影許可不足により、舞台を日本からヴェネツィアに変更して撮影。
②『沈黙・サイレンス』(主演:イッセイ尾形、原作:遠藤周作)
小説での原作の舞台は長崎でした。しかし、インセンティブ(助成金)の提供を国を挙げて全面的に支援してきた台湾にて全編を撮影。
このように、さまざまな理由でロケ誘致ができなかった事象を受け、内閣府でも誘致に向けての調査・内閣府「大型映像作品ロケーション誘致の効果検証調査」事業における効果報告を基に検討が重ねられました。
その後、特定非営利活動法人・映像産業振興機構やJLOX+(クリエイター・事業者海外展開促進)などの機関が撮影補助や助成金の拠出をできる役割を担っています。そして、映画の撮影ロケーションでの便宜については、独立行政法人国立美術館が運営する全国ロケーションデータベースが役割を担っています。
【ロケ地 検索】全国ロケーションデータベース【ロケ地 検索】全国ロケーションデータベース
「民」「学」の取り組み事例を
また、地域だけでなく、最近は、さまざまな分野の企業も映像コンテンツの経済効果・地域イメージ向上効果があると認識して積極的な取り組みをしているケースもあります。直近事例として、2025年4月25日全国ロードショーされた『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』( 主演:萩原 利久・河合 優実、原作:ジャルジャル/福徳秀介)を最後にご紹介します。
この映画では、関西大学が中心に撮影されていて学生もエキストラとして出演し「今日空×関西大学ロケ地MAP」も作成され関西大学が全面協力しています。

次回は、海外作品としてハリウッドに並ぶインド映画の誘致事情についてご説明したいと思います。
これまでの寄稿は、こちらから(https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=4866)
寄稿者 梅阪雅雄 合同会社GO-ON 代表