東京観光財団(TCVB)は、東京都立大学と協力し、株式会社ブログウォッチャーが提供する人流データを活用した観光動態分析ツール「おでかけウォッチャー」を用いた都内訪問者の行動傾向の分析レポート第3弾を公表した。
TCVBは、都内訪問者(国内在住者)の動向を把握するため、2022年度から「おでかけウォッチャー」を導入している。現在、主要な観光スポットを含む約1900カ所をモニタリング地点として登録し、都内観光スポットへの訪問者傾向の把握に努めている。
今回のレポートでは、「おでかけウォッチャー」から取得したデータを基に、2024年に都内5地域(中央区、港区、台東区、墨田区、八王子市)で開催された様々な規模のイベントを対象に、その効果を試行的に分析した。対象としたイベントには、伝統的な祭りから花火大会まで多岐にわたる15の催しが含まれている。

レポートでは、イベントの定量的効果を測るために4つの視点を設定した。まず、日別来訪者数分布・ランキングを用いて、イベント開催日に来訪者数が他の日と比べてどれだけ多いかを把握した。
次に、来訪者の居住地からの距離帯別に分析し、近隣からの来訪者が多いか、遠方からの来訪者が多いかを検証した。また、イベントが周辺スポットに及ぼす影響を分析し、イベント開催日の周辺スポットへの来訪者増加を把握した。
さらに、イベントの時間帯別来訪者数ピークを分析し、イベント内容が時間帯ごとの来訪者分布に与える影響を確認した。
各イベントをこれらの視点で分析した結果、地域の伝統的な祭りや地元密着型のイベントは「近隣集客型」となる傾向が強く、全国的な知名度が高いイベントや季節的な催しは「中長距離集客型」と分類された。
例えば、中央区の「つきじ獅子祭」は、40km未満からの来訪者が大半を占める「近隣集客型」であった一方、台東区の「隅田川花火大会」や墨田区の「墨堤さくらまつり」は、40km以上からの来訪者が多い「中長距離集客型」となった。
また、港区の「麻布十番納涼祭」も「近隣集客型」の例として挙げられる。麻布十番商店街を中心に開催されるこのイベントは、40km未満の近隣地域からの来訪者が多く、地元住民を含む近隣エリアからの集客が中心となっている。
一方、「中長距離集客型」の例としては、八王子市の「高尾山もみじまつり」がある。紅葉シーズンにあたる11月下旬には、40km以上離れた地域からも多くの訪問者が集まり、特に11月24日は若葉まつり期間中の最多来訪者数を大きく上回った。遠方からの来訪者が多いことから「中長距離集客型」と判断されている。
分析結果を活かし、TCVBは地域ごとのイベント活用法を提言している。伝統的な祭りが近隣集客型であることを踏まえ、インバウンド誘客の可能性を探るべきとし、周辺スポットへの波及効果をさらに正確に測るためには、モニタリング地点を見直す必要があると指摘している。
また、遠方からの来訪者が増えるイベントについては、地域への波及効果が大きいと考えられるため、知名度が高いイベントを積極的に活用すべきだとしている。