宿泊業界の深刻な人手不足を背景に、国土交通省と防衛省は6月6日、退職予定の自衛官と宿泊事業者とのマッチングを強化するため、「宿泊業及び自衛隊における人材確保の取組に係る申合せ」を締結した。
申し合わせには、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会、日本旅館協会、全日本ホテル連盟、日本ホテル協会の4団体が参加し、官民が連携して宿泊業への人材確保と予備自衛官制度の活用に取り組む方針が確認された。
この取り組みは、2023年12月に開かれた関係閣僚会議で、自衛官の処遇や勤務環境の改善、新たな生涯設計の確立を目指す基本方針が決定されたことを受けて具体化されたもの。自衛官の中でも退職後に民間での再就職を希望する人材に対し、宿泊業界が受け入れ先となることで、双方の課題解決につなげる狙いがある。
国交省と防衛省は今年3月には、JR7社と鉄道事業者団体との間で、「鉄道事業等および自衛隊における人材確保の取組に係る申合せ」を締結し、退職自衛官の再就職先の一つとして、人手不足に直面している鉄道業界への再就職の促進に取り組んでいる。
防衛省によると、令和5年度に若年定年制自衛官(55~58歳)および任期制自衛官(60歳)として退職した人員は約7,600人。若年定年制自衛官は約4,200人、任期満了による退職者は約3,400人で、こうした退職自衛官に対しては、再就職に役立つ資格取得支援や職業訓練が実施されている。
今後、国交省と防衛省の地方組織である自衛隊地方協力本部などを通じて、宿泊業界における採用広報を積極的に展開するほか、業種別の説明会やインターンシップの機会を提供。
加えて、職業訓練の充実も図ることで、退職予定自衛官の円滑な就職支援を目指す。また、予備自衛官等制度への理解促進や活用についても協力を深める。
観光需要の回復とともに人材不足が深刻化する中で、規律や体力、チームワークなど自衛官としての経験を宿泊業で生かす、新たな雇用モデルにできるか注目される。