6月9日から13日までフランス・ニースで開催された第3回国連海洋会議(UNOC3)で、観光分野が持続可能な海洋経済の構築に果たす重要な役割が改めて示された。
UN Tourism(国連世界観光機関、スペイン・マドリード)と国連環境計画(UNEP)が共催した関連行事では、関係国や国際機関、民間企業などが一堂に会し、気候変動や海洋汚染、生物多様性の損失といった課題への対応として「ブルーツーリズム(Blue Tourism)」の推進を提唱した。
「人と地球のための持続可能で強靭な海洋経済の推進」をテーマにした特別セッションで、各国の観光・環境・運輸担当大臣や国際金融機関、ホテル業界のリーダーなどが参加し、政策や資金面での協力について議論した。
議論では、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の導入が重要な柱として位置づけられた。これは観光の現場で、使い捨てをやめ、資源を繰り返し利用しながら廃棄物を減らす考え方で、海洋ごみ問題や環境負荷の軽減につながる。
また、エネルギーや食材、移動手段など観光に関わるあらゆる段階を見直し、環境と調和した仕組みに転換する観光バリューチェーンへの移行も課題とされた。
UN Tourismのゾリツァ・ウロセヴィッチ事務局長は「観光はブルーエコノミー(持続可能な海洋経済)の33%を占めており、海運(22%)や漁業(5%)を上回っている」と述べた。「ブルーエコノミー」とは、海の資源を持続可能に活用しながら経済成長や雇用を生み出す産業全体を指す。
観光分野が高い割合を占める背景には、クルーズ船や観光船、ビーチリゾート、ダイビングやサーフィンなどのマリンレジャーに加え、海沿いのホテルや飲食、交通インフラまで幅広い経済活動が含まれるためだ。こうした海に依存する観光業が、今後さらに環境に配慮した形へと転換していくことが求められている。
会議ではまた、観光産業におけるプラスチック削減を進める「グローバル・ツーリズム・プラスチック・イニシアチブ(GTPI)」の年次報告書が発表され、現場での取り組み事例や課題が共有された。
UNEPのホルヘ・ラグナ・セリス氏は「観光は多くの沿岸経済にとって重要だが、同時に海洋プラスチック汚染の一因でもある。廃棄物の発生を抑え、持続可能な地域経済を守る努力が必要だ」と述べた。
さらに、観光業など海洋に依存する産業の資金を持続可能な事業に振り向ける新たな資金調達の枠組み「ワン・オーシャン・ファイナンス・ファシリティ」が公表された。国連開発資金(UNCDF)などが主導し、次回の国連海洋会議(2028年)での本格始動を目指す。