旅行業公正取引協議会(小谷野悦光会長=日本旅行、正会員273社)は6月24日、第24回通常総会を東京都千代田区のKKRホテル東京で開いた。2024年度事業・収支決算を承認するほか、設立40周年を迎える25年度事業計画案・収支予算案、ステルスマーケティング(ステマ)の禁止の規定を追加する公正競争規約(表示)一部変更を決議。任期満了に伴う改選も行い、小谷野悦光会長が再任された。
同総会では冒頭、小谷野会長がコロナ禍を経て国内旅行、インバウンドともコロナ禍前と同等以上となる一方、海外旅行が半数程度までしか回復していないという旅行業界の現状を紹介。今後に向けては、「若者の海外離れが課題だが、諸外国の週間文化に触れることは国際交流、相互理解につながる。インバウンドもオーバーツーリズムに伴うごみ・渋滞問題があるが、旅行会社にとっては新たなビジネスチャンスでもある。隠れた観光資源を旅行商品に入れることは、存在意義を示すことにもつながる」と話した。
40周年を迎えたことについては、「この機会を捉えて協議会マークの周知を図るとともに、会員に対する公正競争規約の周知徹底、規約違反の未然防止のためのWeb広告表示審査会を重点施策とする。50周年に向けて、消費者の適正な商品選択に資する事業を展開していきたい」と述べた。

来賓あいさつでは、消費者庁表示対策課の藤平章課長補佐が、ステルスマーケティング告示を規約に盛り込むことにも触れながら、原稿規約を遵守するとともに、表示規制等の動きに常にアンテナを張り、規約の見直しに取り組んでいることに謝意を示した。

公正取引委員会事務総局経済取引局取引部取引企画課の松本博明課長は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の改正を紹介。「事業者が適正に価格転嫁する取引の適正化が必要。発注者が一方的に適正でない価格で取り引き金額を決めることが禁止されることとなった」と説明した。下請法は、名称が来年1月1日から「中小受託取引適正化法」(取適法)へと変わる。

24年度の事業報告では、旅行広告の適正化推進および関係法令の普及として規約説明会、出前講座、消費者懇談会を開いたことや、公正競争規約遵守状況の調査および指導としてWeb広告表示審査会を4回開いたことなどが報告された。
25年度の事業計画については、公正競争規約の見直し、周知徹底など旅行広告の適正化推進および関係法令の普及を継続して行うほか、広報活動として広報誌「Fair Wind」が25年度発行分からDX化推進で紙媒体からホームページによる閲覧に移行すること、設立40周年に当たり年間を通じた広報活動キャンペーンなどを行うことを発表した。
また、公正競争規約(表示)の一部変更についても説明。消費者庁が23年3月に事業者の表示でありながら、第三者の表示であるかのように誤認される、ステルスマーケティングについて、景品表示法第5条第3号の規定に基づき指定(ステマ告示)を行い、同年10月1日から施行されたことを受け、旅行業界でも規制が必要だと判断した。同規定の追加は、他産業と比べても公正競争規約への対応は早く、承認後は早ければ秋ごろには説明会で具体例を示しながら周知を図っていく予定。
役員改選では、小谷野会長、橋本肇副会長(エヌオーイー)が再任されるほか、新たな理事に酒井淳氏(阪急交通社社長)、堤辰佳氏(読売旅行)、美甘小竹氏(フィンコーポレーション)が就任した。
取材 ツーリズムメディアサービス(TMS)編集部