かしこい、おトク、旅⾏アプリ『NEWT(ニュート)』を運営する令和トラベルは、2025年夏休みの海外旅行予約データから、U29世代における最新旅行トレンドを発表した。これまでの「韓国一強」の状態から変化し、ハワイ・シンガポール・ベトナムなどの構成比が上昇するなど、旅先の選択肢が多様化する様子を紹介している。U29世代の夏休み旅行をテーマにトレンドや世代に向けた商品展開・サービス、今後の展望を大木優紀 執行役員(Communication本部担当)に聞いた。(取材日:2025年7月9日)
——2025年におけるU29世代の夏休み旅行トレンドの大きな特徴について
大きく多様化していることが、われわれの予約データからも見えている。NEWTのカスタマーの約半数がU29世代であり、以前はK-POP、K-カルチャーや推し旅の流れから韓国への人気が高かった。コロナ禍明けは特に韓国1強の状態が続いていたが、この夏においては、ハワイやシンガポール、ベトナムといった中長距離にも関心が広がっている。
全体の構成比を見ると、韓国の割合は36.8%から27.3%へと減少している。一方で、新たなデスティネーションとしては、もともと人気のあった台湾がさらに伸びており、韓国を訪れた旅行者が次に台湾を訪れるという流れが広がっている。さらに、為替やインフレの影響もあり、円安の影響が比較的少ないベトナムやタイなど東南アジアへの関心も高まっている。「海外旅行=高い」というイメージがある中で、今行ける場所を選んでいるといえる。

——「旅先の多様化」が進んでいるとのことだが、何か例があれば
最近の旅行トレンドとして、「コピペ旅行」という言葉が注目されている。これは、インフルエンサーなど影響力のある人物が訪れた旅先や体験を、そのままなぞるように追体験する旅行スタイルを指す。例えば、韓国の特定の店で特定の商品を購入するなど、買い物においてSNSを参考にする動きは以前から見られるが、近年では旅先の選定や訪問スポットにおいても、SNS上の投稿を「コピペ」するように真似る傾向が広がっている。
われわれのSNSでも、「3Days台湾」などのモデルプランの投稿は、保存数がとても多い。これまでは紙のガイドブックを参考に旅をしていた人が多かったが、今ではInstagramの投稿を保存して、それをデジタルガイドブックのように活用するのが一般的になっている。投稿の中には、おすすめの店やコース、実際の旅行プランがすべて含まれており、それらを自分たちの旅のコピペ元として保存しておくスタイルが、今の旅のスタンダードになってきている。実際に私自身も、韓国を訪れた際にこの方法を使ったが、とても便利だった。
例えば、韓国の人気ドラッグストア「オリーブヤング」に行ったとき、「何を買えばいいんだっけ?」と迷っても、あらかじめInstagramに保存しておいた気になる商品が写真付きで一覧になっており、現地では「これだ、これだ!」とすぐに買い物ができる。レストランやホテルも、実際に誰かが訪れた情報をSNSで参考にするのが当たり前となり、旅のスタイルは明らかにコロナ前と比べて変化するなど「旅のデジタル化」が進んでいるといえる。こうした流れの中で、スマホ一つで完結する「NEWT」のようなサービスが選ばれているのも自然なことだ。
――韓国の人気が高い中で、ハワイが台頭してきた要因は
ハワイは、インフルエンサーの影響もあり注目されているが、日本からの観光客はまだコロナ前の半数程度にとどまっている。一方で、アメリカ本土からの国内旅行需要をうまく取り込んでおり、ハワイ全体としてはほぼコロナ前の水準まで回復している。
ハワイの魅力の一つは、新しいお店やホテルが次々と登場し、街全体が常にアップデートされていること。ハイゲートのような企業が古いホテルを買収や運営を行い、リブランディングしてスタイリッシュで清潔感のある中規模ホテルへと再生させる動きが活発化している。こうしたホテルは、ビーチフロントから少し離れた立地でも、清潔感があるほか、おしゃれであったり、写真映えしたりするなど、若い世代に映える場所として人気を集めており、U29世代にしっかり刺さっている。
SNSを通じてその魅力が広がっているが、ハワイ自体が元気であることも今の注目を支えている一つの大きな要因だと感じている。

――どのような若者が海外旅行に行っているのか
SNSとの親和性と海外旅行への親和性には、相関関係があることを示すデータがある。特に若者層においては、二極化が1つの傾向として見えてきている。一方の層は、SNSを活用して旅の情報を収集し、自らデジタルガイドブックのように保存・活用しながら海外旅行を楽しむタイプで、SNSを積極的に使いこなすことに抵抗がなく、海外にも行きたいという意欲がある層。もう一方の層は、SNSはなんとなく見るが、深く関わるわけでもなく、旅行についても「そこまで行きたいとは思わない」と感じており、むしろSNSを一周まわって冷めた目で見るなど、海外旅行への興味も薄くなっている。
二極化の背景には、経済的な要因が大きく絡んでいる。われわれのデータでは、自由に使えるお金(可処分所得)がある程度ある若者の多くが、都市部に実家暮らしであるなど、生活コストが抑えられているケースが目立つ。一方で、地方から上京し、自活している若者層は経済的に余裕がなく、SNSや海外旅行に対して距離を置く傾向がある。お金があっても興味がないというマインドになってしまっている層も見られる。
若者の間でSNSや旅行への関心に関して明確な二極化が進んでいるという実感を、調査結果からも得ている。
――旅行先選びで、「近さ・安さ・手軽さ」以外の新しい価値観の変化はあるか
最近の旅行では、目的が以前よりも明確になってきている。私自身が若い頃は、行ったことがないから行ってみたいというような、純粋な好奇心がきっかけで海外旅行に出かけることが多かったが、今はSNSでどこでも簡単に情報が獲得でき、旅先に対するイメージが事前に具体化されている。
例えば、韓国では「推し旅」のように、特定のアイドルや俳優を訪ねる旅が人気であるし、タイでも同様の推し旅が広がっている。また、東南アジアではスパや美容などが手ごろな価格で楽しめることから、「ご自愛旅」と呼ばれる、自分へのご褒美をテーマにした旅行スタイルも注目されている。
さらに、Instagramで見た美しい風景を実際に自分の目で見たいことから、目的地を目指す旅も増えている。このような旅のスタイルは、以前のなんとなく行きたいといった漠然とした動機から大きく変化し、旅の在り方に明確な違いが出てきているといえる。

――バリの旅行費用が下がっているというが、なぜか
為替の影響は大きく、特に2025年はインドネシアルピーの安さが顕著。われわれの予約データでも、前年比で旅行費用(予約支払い総額)が約5万円ほど下がっており、実際に数値として確認できている。しかも今はインドネシアが乾季のベストシーズンということもあり、まさに狙い目の時期と言える。
今年4月には一時的に円高が進み、為替が130円台に触れた瞬間があったが、その際には反応があった。令和トラベルはデジタル特化型の旅行代理店で、為替の動きを毎日反映しながら価格を微調整している。為替が円高方向に大きく動いたときには、旅行商品を購入することでオトク感を得られる、ある種の投資のようなタイミングが生まれる。ルピー安のような為替状況をいち早く価格に反映できるのは、デジタルに特化した旅行代理店ならではの強みだ。
――ほかにも為替で好影響となっている国はあるか
ベトナムとタイには好影響が生まれている。両国は現地での過ごし方にも特徴があり、実際に行ってみて感じた最大の魅力として移動のしやすさがある。「Grab」など配車アプリが当たり前に使われており、特にベトナムではタクシーの料金が日本の約7分の1程度と安価。時間帯により多少料金は変動するが、それでもプチぜいたくさを感じる移動も気軽にできる。
また、マッサージも非常にリーズナブルで、30分〜1時間の施術がワンコイン程度で受けられる。こうした気軽な癒やしやぜいたくが、心のリフレッシュにつながり、旅行から帰ってきたときの満足度の高さにつながっている。

——調査結果には、NEWTの強みがどう反映されているか
今、全社をあげてAIの活用に力を入れている。社内では業務効率化が当然のように進んでおり、例えば以前は1時間かかっていたものが、今ではAIの力を使うことにより3分で完成するようになった。これはすべて、データとAIの活用によるものだ。
社内業務にとどまらず、社外に対してもデジタル化のトップランナーでありたい思いは強い。特に若い世代、いわゆるデジタルネイティブ層にとっては、AIやデジタルを使ったUI/UX、旅程の自動生成などが自然に受け入れられており、実際に新しい旅のかたちとしてスムーズに浸透している。
われわれは今、AI活用を本気で推進している。
——近頃で、U29から支持されている機能やサービスは
反響が高いのはパスポートスキャナー機能。飛行機はパスポート情報が1文字でも違うと搭乗できないため、正確な情報入力が不可欠だが、令和トラベルでは早い段階からスマホでパスポートを読み取れる機能を導入し、好評を得ている。
さらに最近では、AIによる旅行プラン提案機能「トラベルプランナー」もリリースした。ユーザーの希望に応じてAIが最適な旅程を自動生成するもので、特に若い世代からは使いやすい機能だという声が多い。
一方で、私個人としては親の目線でも考えることがある。例えば、大学生が初めて親なしで友達同士で海外に行くような場合だが、OTAで全てを手配することも珍しくなくなっている。ある親は「日本からタコ糸が切れたような状態で、子どもが海外で浮遊しているような感覚」に陥っていると言い、初めての海外旅行こそ、旅行代理店を通じた安全・安心なパッケージツアーを選んでいただきたい。実際、弊社では台風などの現地トラブルが発生した際、現地に滞在しているお客様のリストをもとに、必要に応じて連絡やサポートを行っている。
——「NEWT FES」の狙いと反響について
海外旅行をする際、一番のハードルはやはり価格。安心感や便利さがあっても、価格が高ければなかなか背中を押す決め手にはならない。だからこそ、手が届く価格設定が重要になる。今回は、燃油サーチャージ込みで1万9700円からというプランを提供しているが、さらに現地で自由に使えるクーポンも付けて展開している。この価格設定は非常に好評で、「この値段なら行こうと思えた」と、お客様からも多くの反響をいただいている。価格で背中を押せる点は、われわれの大きな強みだと感じている。
「NEWT FES メガサマーセール」8/7まで開催中
この実現の背景には、人件費や店舗費の大幅削減がある。われわれは実店舗を持たず、裏側のオペレーションも徹底してデジタル化しており、運営にかかるコストを極限まで抑えている。ある程度の販売ボリュームがないと仕入れ価格の改善は難しいが、若い世代の支持を得て予約数が増えてきたことで、航空会社やホテルからも好条件での仕入れができるようになってきている。

――海外旅行市場の見通しについて
現在の旅行市場の状況は、回復の最終段階と言える。コロナ禍後は回復局面に移り、市場全体が右肩上がりで拡大してきた。しかし今は、回復が落ち着き、市場規模そのものが一定の水準に落ち着いた。これからは市場全体の成長ではなく、どれだけ私たちが選ばれるかというシェアの争いに入っていく。
その中で重要となるのは、やはりターゲットとなる顧客層のインサイトをしっかり理解すること。若年層には海外旅行に行きたい層とそうでない層が明確に分かれている中、それぞれがどのくらいの価格帯を望み、どんな旅であれば関心を持つのかを的確に捉えなければならない。
また、情報があふれる時代の中で、自分にとって本当に必要な情報だけがすっと届くような、的確で信頼できる提案が求められている。顧客心理を踏まえながら、価格や内容、情報の届け方を含めて、迷いなく背中を押せる存在でありたい。
――国内に関する取り組みも始めているが、現況を
国内のホテル様との直契約の獲得を速いスピードで進めており、営業チームが全力で取り組んでいる。もともと令和トラベルはホテル・旅館の宿泊予約サービス「Relux」を創業した篠塚孝哉が立ち上げたこともあり、業界内のノウハウや人脈がしっかりと根付いており、ゼロからの立ち上げにもかかわらず、驚くほどのスピードで契約を進められている。
——インバウンド展開についてはどうか
6月には、令和トラベルの韓国現地法人「Reiwa Travel Korea, Inc.」を設立した。韓国のホテルや観光事業者とダイレクトな連携体制を構築し、魅力ある旅行商品の企画・販売をよりスピーディーかつ柔軟に実現できるようになった。インバウンド、グローバル対応は早期に進めていく。
――最後に、今後の方針について
やはり、SNSの影響力は非常に大きいと感じている。自社からの発信はもちろん、インフルエンサーや、実際にサービスを利用しているお客様からの発信も含め、多くの方がSNSを通じて「NEWT」を知っているというデータも出ている。今後も、こうしたSNSを活用した情報発信を一層強化しながら、より多くの方に「NEWT」の魅力を届けていきたい。そして、旅をもっと身近に、もっと自由に感じてもらえるようなサービスづくりを、これからも進めていく。
※大木優紀(おおき・ゆうき)=㈱令和トラベル 執行役員(Communication本部担当)。慶應義塾大学経済学部卒業後、2003年にテレビ朝日に入社。アナウンサーとして『GET SPORTS』『やじうまテレビ!』『くりぃむナントカ』などを担当。2度の産休・育休を経て、復帰、19年から『スーパーJチャンネル』を担当。21年末に同社を退社。令和トラベルに転職し、主に旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRを担当。23年から執行役員。
聞き手 ツーリズムメディアサービス代表 長木利通