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ユーロヴェロの資料から読み解く日本のインバウンドサイクリストの動向2:

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欧米サイクリストを惹きつける!人気目的地から学ぶ、日本のサイクリングツアーが磨くべき魅力とは?


サイクリングツーリズムが世界的に盛り上がりを見せる中、日本へのインバウンド誘致において、欧米のサイクリストを惹きつけるための戦略は喫緊の課題です。彼らはどのような目的地に魅力を感じ、何を求めているのでしょうか。「State of the Cycling Tour Operators Industry (2024)」レポートが示す人気目的地の傾向から、日本が磨くべきサイクリングツアーの魅力と、それが地域創生や風土の再生にどう繋がるかを考察します。

欧米サイクリストが選ぶ人気目的地とその理由

レポートによると、サイクリングツアーで最も人気のある目的地はイタリア(15%)であり、次いでフランス(11%)、ドイツ(8%)、オーストリア(7%)、スペイン(7%)が続きます。また、主要な顧客の出身地はアメリカ(29%)、ドイツ(16%)、イギリス(13%)となっています。これらの国々は、古くからサイクリング文化が根付いており、それぞれが独自の魅力でサイクリストを惹きつけています。

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例えば、イタリアのトスカーナ地方は、なだらかな丘陵地帯に広がるブドウ畑や中世の村々が織りなす絵画のような景観、そして質の高いワインと美食がサイクリストを魅了します。フランスのロワール渓谷では、優雅な古城を巡りながら歴史と文化に触れることができ、ドイツのドナウ川沿いでは整備されたサイクリングロードと豊かな自然が楽しめます。これらの地域に共通するのは、単なる「自転車に乗る場所」としてだけでなく、その土地の「風土」を深く体験できる環境が整備されている点です。

日本がサイクリングツアーで磨くべき「風土の魅力」

日本の多様な自然、豊かな歴史、そして地域に根ざした人々の営みは、欧米サイクリストを惹きつける大きな可能性を秘めています。レポートで示された人気目的地の傾向から、日本が特に磨くべき魅力は以下の点と考えられます。

  1. 景観と物語が融合したルート設計:欧米のサイクリストは、美しい景観の中を走るだけでなく、その土地の歴史や文化、人々の暮らしを感じられるルートを求めています。日本では、例えば古い街道や棚田が広がる農村地帯、歴史的な建造物が点在する地域などをサイクリングコースとして開発し、それぞれの場所にまつわる物語を多言語で伝えることで、より深い没入体験を提供できます。単に景色の良い場所を繋ぐだけでなく、地域の風土を構成する要素を巡るストーリー性のあるルートが重要です。
  2. 地域に息づく「風土」を体験するアクティビティの導入:サイクリングツアー中の人気アクティビティとして、「町や村の訪問」(83%)、「自然の場所の訪問」(68%)、「博物館、城、その他の史跡の訪問」(57%)などが挙げられています。これは、サイクリストが走行体験だけでなく、地域の文化や歴史、自然とのインタラクションを重視していることを示します。日本の場合、例えばサイクリングの途中で古民家での滞在体験、伝統工芸品の制作体験、地域の祭りの見学、地元住民との交流イベントなどを組み込むことで、その土地の「風土」を五感で感じてもらうことができます。地域の産業、特に農業や漁業の現場を訪れ、生産者の話を聞くことは、その土地の「食」がどのように生まれ、地域に息づいてきたかという「風土」の理解に繋がります。
  3. 地域連携による「美食」を通じた風土体験:レポートでは、「ワインセラーを訪れる、またはその他の地元の産物を試飲する」(54%)、「レストランまたはその他の美食の場所を訪れる」(52%)といった美食関連のアクティビティも人気とされています 5。日本の豊かな食文化は、インバウンドサイクリストにとって非常に魅力的な要素です。地域に点在する地元の食堂、酒蔵、農産物直売所などをサイクリングルートに組み込み、そこで提供される旬の食材や郷土料理を通じて、その土地の気候や歴史が育んだ「食の風土」を体験してもらうことができます。生産者と料理人が連携し、サイクリスト向けの特別メニューを提供するなど、地域全体で「食」をテーマにしたサイクリング体験を創出することが、地域経済の活性化にも繋がります。

地域創生と風土再生への貢献

欧米サイクリストを誘致するための上記のような取り組みは、単なる観光客誘致に留まらず、地域の活性化と風土の再生に大きく貢献します。

  • 地域経済の活性化: サイクリストは移動中に地域の飲食店、宿泊施設、土産物店などを利用します。また、E-バイクのレンタルやガイドサービスなど、新たな雇用創出にも繋がります。これにより、これまで埋もれていた地域の小さなビジネスにも光が当たり、持続可能な地域経済の基盤が築かれます。
  • 文化・伝統の継承と再評価: サイクリングツアーを通じて地域の歴史的な場所や伝統文化に触れる機会が増えることで、地元住民が自身の地域の魅力を再認識し、文化の継承や保存への意識が高まります。また、外部からの視点が入ることで、新たな価値が発見され、風土の再生に繋がる可能性も生まれます。
  • 自然環境の保全意識向上: 自然景観の中を自転車で走る体験は、参加者に環境への意識を自然と高めます。地域の美しい自然を守り、持続可能な形で活用していくという意識が、住民と観光客双方に育まれることが期待されます。
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日本のサイクリングツーリズムは、美しい景色や豊かな自然だけでなく、その土地に息づく「風土」を深く体験できる独自の魅力を持つことで、欧米サイクリストの心をつかむことができるでしょう。そのためには、地域が一体となり、サイクリストのニーズに応える質の高いツアーを開発し、戦略的に情報発信していくことが不可欠です。

寄稿者:東京山側DMC 地域創生マチヅクリ事業部

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