唐戸は、かつてからの下関の中心エリアだ。1909年に野菜や果物の路上販売に始まる。そして、1924年に魚市場が移転し、市場機能が拡大する。しかし、1942年に関門鉄道トンネルが開削されると、終着駅であった下関駅は、九州島内への通過駅となり、その繁栄が薄れていく。
2001年4月にしものせき水族館(海響館)の整備とあわせて、ウォーターフロントの再開発事業が始まった。カモンワーフと命名された複合商業施設は、唐戸市場周辺の観光コンテンツ化を促した。また、門司港との関門汽船の桟橋も整備され、唐戸の復権につながっている。
さて、唐戸市場と海響館のちょうど真ん中に位置するシーサイドモールは、海の幸を中心としたレストランや土産物店が立ち並ぶ。そして、夕暮れ時となると、ボードデッキが黄金色に輝く。また、防波堤には、白と赤の灯台も配置され、恋人灯台と呼ばれている。そのため、源平時代を彷彿させるロマンティックな伝説を語る場所に変貌している。朝な夕なに激しい潮流を目の当りにする関門海峡、下関を代表する場所である。
関門汽船に乗船すれば、門司港まで10分だ。県境を挟むが、「ノスタルジック海峡」と銘打った一体化した観光誘客の取り組みも進められている。「河豚(ふく)」だけでなく、交通の要衝として栄えてきた歴史をもっともっと語ってもらいたい場所である。
(2022.01.18.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長