『東風吹かば にほひをこせよ 梅の花 主なしとて 春なわすれそ』
と、この詩は、菅原道真が太宰府に流される前に詠んだ句だ。ここ北野天満宮は、道真の没後にその祟りを収めるために建てられたと言われている。
巷では春の花は、桜がその代表と言われる。しかし、梅の花は、その前にひっそりと咲く。京都では、洛南・城南宮と北野天満宮が双璧である。そして、この天神さんの梅苑は、菅公ゆかりの50種1,500本の梅が約2万坪の境内一円に紅白の彩りを見せる。2月上旬から3月下旬にかけては、梅苑「花の庭」が公開され、2月25日には梅花祭と野点大茶湯が行われる。
この茶会は、毎年上七軒の芸妓・舞妓さんの接待によって行われる。秀吉の北野大茶湯にちなんだもので、京都の春を告げる催し物の一つだ。
春夏秋冬にさまざまな花を愛でる豊かな日本の国。観光コンテンツとしても花々は人気が高い。しかし、梅の花は、まだ寒さの残る時季ゆえに、気が付くと満開をとうに過ぎていることが少なくない。昨今では、インターネット上に開花情報を掲載する観光地も増えてきた。自然が織りなす素晴らしい時間をしっかりと共有する仕組みづくり、これからの観光振興にも必要なモノ・コトだと感じる。
(2022.02.25.撮影)

(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8
取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長