錦小路は、京の町の台所と言われる東西に走る通りだ。また、町の中心部に位置し、昔から近隣の旅館などが食材を仕入れ、宿泊客に提供する市場であった。しかし、最近は、お店の形態も変わり、食べ歩きをする観光客が増えた。そして、訪日外国人の姿も一気に増えた気がする。
京都駅前や中京のデパートには、京都の有名土産が並ぶ。多くの観光客は、その金太郎飴のような土産を購入し、満足げに帰路につく。しかし、ここには、錦小路にしか店を出していない漬物屋や京料理の仕出し屋が少なくない。昔のままの商売を守っている店舗も残っている。そのほとんどが、個人商店であるためオーナーの老齢化などによって今風のお店に変換しつつある。そのため、ファストフード化された店舗が、オーバーツーリズムを生んでいるとも言える。
自分だけの京都探しの原点に…
さて、京都の町の本屋に入ると、必ず「京都本」コーナーが設置されている。全国誌ではない地域情報には、錦小路のお店も掲載されている。本来、自分だけの土産物探しは、自ら歩いた結果であった。それが旅を演出する愉しみであり、そこでしか買うことができない京菓子や薬味を生み出していた。
SNS全盛の時代、全国各地で、このような事象を目にする。しかし、守るべきモノ・コトはたくさん存在する。それがまさしく伝統と言うのであろう。未来につながる大切な市場として、錦小路には、原点回帰して欲しいと感じる。

(2022.04.27.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長