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【体験レポート】高尾山リバクリが示す未来:清掃活動から学ぶ観光地の持続可能性

1コメント

2025年9月15日、多くの観光客で賑わう高尾山の玄関口、高尾山口駅周辺で、清掃イベント「桑都リバークリーン」が開催された。東京山側DMCと桑都リバークリーンナップが主催したこの活動は、単なるゴミ拾いにとどまらず、参加者間の交流を促すユニークな仕組みと、観光地の環境課題に対する深い洞察に満ちていた。当日の熱気あふれる現場から、これからの観光地経営と地域連携のあり方を探る。

イベントの幕開け:当日の空気感と期待

秋の行楽シーズンの連休中日、高尾山口駅前にはハイカーや観光客に交じり、軍手とトングを手にした参加者たちが集結した。親子連れや学生、地域住民と思われる人々など、その顔ぶれは多彩だ。開始前のブリーフィングでは、主催者から「川のゴミの8割は街からやってきて、やがて海に流れ着く。この高尾山での活動が、海の豊かさに繋がっている」という力強いメッセージが語られ、参加者の間に心地よい連帯感と使命感が広がっていくのが感じられた。

白熱のプログラム:具体的な内容とハイライト

活動の舞台は、駅周辺からケーブルカー乗り場へ続く川沿いの道だ。参加者はグループに分かれ、早速清掃を開始する。植え込みの中や自動販売機の脇など、見過ごされがちな場所に隠されたタバコの吸い殻やペットボトルが次々と見つかる。

このイベントを特徴づけるのが、「ナイスピック!」というユニークな掛け声だ。誰かがゴミを拾うたびに、周囲から自然と「ナイスピック!」と称賛の声が飛ぶ。最初は少し照れていた参加者も、ポジティブな言葉が飛び交ううちに笑顔になり、ゲーム感覚で活動に没頭していく。この小さな工夫が、単調になりがちな清掃活動を、参加者全員で盛り上げるエンターテインメントへと昇華させていた。

これは、「来た時よりも美しく」を原則とするLNT(Leave No Trace)の考え方を、楽しみながら体感できる優れたアプローチである。単にゴミ箱を増やすといった物理的な対策だけでなく、人々の行動心理に働きかけ、自発的な環境配慮行動を促す。そのヒントがこの「ナイスピック!」という言葉に凝縮されている。

参加者の声と広がる交流

活動中、参加者からは様々な声が聞かれた。

「『ナイスピック』の声かけで、知らない人とも自然に仲良くなれた。ただのボランティアじゃない、新しい形の地域活動だと感じた」

「川のゴミが海に繋がっていると知り、意識が変わった。これからは地元の川も気にかけるようになる」

「普段何気なく歩いている道でも、ゴミを探しながら歩くと、今まで気づかなかった風景が見えてくるのが面白い」

これらの声が示すように、このイベントは環境美化という直接的な目的を超え、参加者同士の新たな繋がりを生み出すコミュニティの場として機能していた。共通の目的を持って汗を流す体験が、年齢や所属の壁を越えたコミュニケーションを育んでいた。

イベントが示す未来:地域創生への貢献と今後の展望

約1時間の活動で集まったゴミは、地域の観光案内を担う八王子観光コンベンション協会と連携し、適切に処理されるという。この一連の流れは、清掃活動から処理に至るまで、地域内の多様な主体が連携する重要性を示している。

今回の取り組みは、観光地が抱える環境問題に対し、地域住民や観光客を巻き込みながら解決策を探る「課題解決型ツーリズム」の一つのモデルケースといえるだろう。参加者は、単なる消費者ではなく、地域の価値を高める当事者となる。こうした活動を通じて生まれた地域への愛着は、再訪意欲の向上や関係人口の創出に繋がり、ひいては観光地の持続可能な発展の礎となるに違いない。高尾山の麓で行われた小さな活動は、全国の観光地が応用できる、大きな可能性を秘めている。

寄稿者:東京山側DMC ウエルネス事業部

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  1. 神崎 公一
    いいね!:1

    編集長のひと言 ご寄稿ありがとうございます。主催者から「川のゴミの8割は街からやってきて、やがて海に流れ着く。この高尾山での活動が、海の豊かさに繋がっている」との挨拶があったとありました。言われてみれば、言いえて妙な指摘です。高尾山と海の豊かさ、目から鱗でした。

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